<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、8月下旬、上海に1号店を出店した米卸売り大手『コストコ』に中国人顧客が殺到したことについてです。
【ポイント1】『コストコ』上海1号店に顧客が殺到
8月27日に米国の会員制卸売り大手の『コストコ』が上海1号店を出店しました。『コストコ』は、数年前から中国のネット通販に出店していましたが、実店舗の出店は今回が初めてです。
開店初日は、平日にもかかわらず午前8時30分の開店と同時に顧客が殺到しました。現地メディアによれば、駐車場はすぐに満車となり、店舗周辺の道路は大渋滞となりました。結局、あまりの混雑で顧客の安全を確保できないと判断した店側は、午後1時過ぎにこの日の営業停止を決定しました。そして、翌日の28日は、店内に入場できる人数を2,000人に制限して営業することになりました。
【ポイント2】米中対立でも不買運動は見られず
『コストコ』上海1号店の開店初日に見られた光景は、米中の通商摩擦が激化し、テクノロジー産業や軍事的な覇権を巡って両国の緊張が高まりつつある現実を忘れさせてくれるものでした。
尖閣諸島の国有化を巡って日本と対立した時、あるいは韓国で米軍のミサイル配備問題が持ち上がった時、日本や韓国製品の不買運動が起き、中国政府はそれを黙認しました。ところが今回は、大々的な米国製品の不買運動にはつながっていません。一般市民にとって政治的な対立と生活上の実利は別物だから、と言ってしまえば簡単ですが、通商面で米中対立が制御不能にならないよう、当局が慎重にコントロールしているようにも思えます。
【今後の展開】中国市場での『コストコ』の成長機会の大きさを期待
さて、入場制限をかけた8月28日以降ですが、引き続き多くの顧客が『コストコ』に殺到しているようです。中国での『コストコ』ブームは、しばらく続くとみておいた方が良さそうです。このため米株式市場での『コストコ』の評価はかなり好意的です。上海1号店初日の盛況が確認されてから取引開始となった8月27日以降、米ナスダック市場で『コストコ』株は上昇し、上場来高値を更新しました。あの光景を見せられたら、投資家が、14億人の中国市場での成長機会の大きさに確信を強めるのも無理はない話です。
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