日経平均は突然上昇、2万1,000円台乗せ

 先週末9月6日(金)の日経平均は2万1,199円で取引を終えました。週末時点の日経平均が2万1,000円台に乗せるのは8月2日以来になります。また、前週末終値(2万704円)からは495円の上げ幅でした。

 先週の値動きを振り返ると、週前半の小動きから後半に突如として株価がグンと上昇していく展開でした。デモ活動に揺らぐ香港で「逃亡犯条例」の改正案が完全撤回されたことに加え、英国議会(下院)がEU(欧州連合)からの離脱延期を政府に義務付ける法案を可決したことでブレグジット不安が後退したこと、さらに、米中の閣僚級協議が10月上旬に再開すると発表されたことなどが重なり、これらが株価を大きく上昇させるきっかけになりました。

 これによって、昨年安値(12月26日の1万8,948円)から、今年4月26日の高値(2万2,362円)までの上昇幅に対するフィボナッチ・リトレースメントの押し目ラインにおける、「61.8%押し(2万252円)」と「50%押し(2万655円)」のレンジを一気に上抜けた形になっています(下の図1)。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年9月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

次の目安は2万1,500円?上昇は続く?

 セオリー通りならば、これまでのレンジをブレイクしたため、さらなる上値追いも期待できます。実際に、先週末時点では38.2%押し(2万1,058円)のラインも突破しています。次の目安としては23.6%押し(2万1,557円)が意識されてもおかしくはありません。

 また、再び8月のレンジに注目すると、レンジの上限が8月9日高値の2万782円、下限が8月6日安値の2万110円ですので、その値幅は672円です。「レンジがブレイクしたときはレンジの幅だけ動く」とも言われていますので、単純に計算すれば、2万782円から672円を上乗せした2万1,454円となり、ほぼ2万1,500円水準となります。

 今週末はメジャーSQが控えている他、米中摩擦も「10月までは一時休戦」という見方が支配的となれば、2万1,500円トライは十分あり得ると考えて良いと思います。

 ただし、これが「本格的な株価の戻り基調の回復なのか?」と問われると、懐疑的な見方があるのも事実です。先週の株高材料についても、香港のデモがこのまま収束されるのか、そしてブレグジットを巡る情勢も依然として先行きは不透明ですし、米中協議についても再開されたところで具体的な進展があるとは言い切れません。米中関係はこれまでも「事態の悪化と協議の再開」というサイクルを繰り返してきました。

 そのため、先週の株価上昇はあくまでも8月のレンジ相場で溜まったうっぷんを晴らすガス抜き的な動きによる「一時的なボラティリティの高まり」と捉えれば、足元の株価上昇は長くは続かないと考えることもできるわけです。

200日移動平均線が上値の抵抗に

■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2019年9月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は日経平均の日足チャートです。先週のローソク足の並びに注目すると、9月2日(月)~4日(水)は25日移動平均線に上値を抑えられる格好だったのが、5日(木)に「窓」空けで75日移動平均線に乗せる大陽線となり、6日(金)は迷いを示す十字線となっています。

 また、6日(金)の十字線は200日移動平均線のところに位置しています。

■(図3)日経平均(日足)の動き その3(2019年9月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3を見ても分かるように、昨年10月高値以降の日経平均はこの200日移動平均線が上値の抵抗となっていることが多く、上抜ける場面もありますがその期間は比較的短期間です。

中長期的な見通しに変化なし

 また、前回紹介した週足の平均足とMACDを見ると、平均足の色は陽転(黒色から白色)していますが、MACDとシグナルはクロスしておらず、まだトレンド転換には至っていません(下の図4)。

■(図4)日経平均の平均足(週足)とMACD(2019年9月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 確かに先週の日経平均は大きく値を伸ばす場面があったものの、実はその派手さの割に、中長期的な相場の見通し自体にあまり変化がなかったとも言えます。前回のレポートのタイトルで示した「株高への視界が晴れるのはまだ先」という見方は継続で、堅調な値動きによる日柄調整がもう少し必要ということになります。

■(図5)日経平均(日足)の動き その4(2019年9月6日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 そのため、予想レンジも引き続き、昨年の高値と安値を基準として、戻り高値と押し安値を結んだトレンドラインとその空間が想定されます。