8月のドル/円は大相場!5円弱も動く

 8月のドル/円は5円弱動く大相場となりました。

 7月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)後、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の発言を受けて、8月初めに109円台前半まで上昇したドル/円は、トランプ米大統領の対中追加関税の発言をきっかけに円高へ。その後も米中、互いの応酬によって、104円台半ばまで売られました。

 現在は106円台で推移していますが、今月もボラタイルな状況は続きそうです。

通貨大乱の9月。今年は何が起こるか?

 そして9月は、本コラムで何回となく触れましたが、過去の経験から「通貨大乱の月」と称し、警戒する月だと思っています。

 9月は通貨史上、次のような大事件が発生し、為替市場が大混乱に陥った月でした。その時の経験が私の体に染みついており、9月はマーケットに対して、常に緊張して臨む月となっています。

1985年 プラザ合意
1992年 欧州通貨危機
2001年 米国同時多発テロ
2008年 リーマン・ショック

 9月のこれらの大事件は、1985年のプラザ合意や、2001年の米国同時多発テロのように突然発生する事件もあれば、欧州通貨危機やリーマン・ショックのように、事件が発生する前から、兆候が表れていた事件もありました。

 今年はどうでしょうか。突発的なイベントは予測できませんが、次のイベントに注目しています。

 これらのイベントは、一部にはマーケットに織り込まれつつある出来事もあります。しかし、複合的に絡み合えば、相場を大きく動かす要因になるかもしれないため注目しています。

 それでは、それぞれの注目点について、解説していきます。

第1の注目点:米中貿易摩擦と香港リスク

 第1の注目点は、8月に相場を大きく動かした米中貿易摩擦です。やはり今月もその動向を注視していく必要がありそうです。

 9月1日にトランプ大統領は追加関税「第4弾」を発動しましたが、米中通商協議が月内に開催される可能性は残っています。

 米国が、中国からの全輸入品へ追加関税を発表したことから、この要因はかなり織り込まれてきたとはいえ、今後の協議決裂や、長期化の懸念、関税合戦がエスカレートし、世界経済減速懸念が高まるリスクは常に内在し、波乱材料になる可能性があります。ここに香港の騒動が絡めば厄介な事態になるかもしれません。

 9月11~12日には香港で「一帯一路サミット」が開催予定です。「一帯一路」政策は習近平主席の肝いり政策であるため、香港でのサミットには、習主席も出席予定です。従って、開催までに事態が収拾していなければ、サミットの日程が近づくにつれ、緊張が高まる可能性があるため、注意が必要です。事の成り行きによっては、米中の対立が激しくなり、貿易協議どころではない事態になる可能性もあります。

 このサミットが無事に終わったとしても、次のヤマ場である、10月1日の中国建国70周年が控えています。中国政府としては、この時までに事態を収拾させたい考えと言われています。

第2の注目点:日米欧の金融政策の違い鮮明

 第2の注目点は、日米欧の金融政策のスタンスの違いがより鮮明になり、相場が大きく動く可能性です。

米国の金融政策見通し

 FRBの9月利下げはかなり織り込まれていますが、9月1日の追加関税発動により、世界経済の不透明感が強まりました。このことから、利下げが「調整」ではなく、利下げサイクルに入ると判断して、今後の利下げについて、一歩踏み込んだ発言を、9月のFOMCではするかもしれません。そうなればドル安、円高材料となります。

欧州の金融政策見通し

 欧州では、ECBの利下げも、マーケットではかなり織り込まれています。しかし、ドイツ経済がマイナス成長となり、物価が低迷している状況では、9月以降の追加緩和期待が高まってきます。

 ドラギECB総裁がECB理事会後の記者会見で追加緩和について一歩踏み込むかどうかに注目です。そうなればユーロ売り圧力は継続されます。

日本の金融政策見通し

 一方、日銀は黒田東彦総裁が予防的な金融緩和に躊躇(ちゅうちょ)なく踏み切る方針を発表していますが、欧米の実際の行動を伴う緩和姿勢と比べると出遅れている感は否めません。

 従って9月に欧米が利下げすれば、織り込まれているとはいえ、円高圧力が高まる可能性があります。ただ、救いは日程的に欧米の理事会の結果を見てから判断できることです。欧米がかなりハト派寄りになったときは、日銀は何らかの対応をしなければ、円高が一層進む可能性が高まります。

 日銀決定を判断する材料の一つとして、9日に公表予定の日本の4-6月期GDP改定値が注目されます。もし、速報値のGDPが+1.8%から下方修正された場合、日銀への追加緩和期待が高まるかもしれません。この場合、日銀の決定会合までの円高圧力は緩和されるかもしれません。ただ、これも実際に行動に移さなければ、期待の反動と決定への失望から、円高圧力が増す可能性もあります。

 9月2日、財務省から4~6月期の法人企業統計が発表されました。

 その中で製造業の設備投資が▲6.9%と大きく減少。この法人企業統計はGDP改定値のデータ資料となるため、この減少を受けてGDPは速報値の+1.8%から下方修正される見通しとなっています。民間エコノミストの間では、1%弱から1%台前半との見方が多く、いずれにしろ速報値よりも大きな修正です。まずは、9日の日本のGDP改定値に注目です。