NYダウの1998年と2019年のアナログチャートモデルの不気味な動き

 1998年と2019年のNYダウの『アナログチャートモデル』が示唆するのは、ここから相場が大きな下落に見舞われる可能性があることだ。1998年はプーチンが米国の金融破綻を狙って画策したロシアの計画的デフォルト(債務不履行)があり、ロシア危機が起こった年だ。ドル/円は135円から108円まで一気に急落し、筆者もえらい目にあった記憶がいまだ生々しく残っている。1998年はロシア債に投資していたヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が、オーバーポジション(レバレッジの掛け過ぎ)で破綻し、また日本では1997年から1998年にかけて北海道拓殖銀行・山一證券などの金融機関がドミノ倒し的に倒産した厳しい経済環境だった。

NYダウ(日足) 1998年と2019年のアナログチャートモデル

出所:石原順

 1998年の相場と2019年の相場は非常に動きが似ているが、アナログチャートモデルで先行している1998年相場を見ると、今週の8月30日の金曜日に大きく下げるパターンとなっている。このチャートをシカゴの先物投機筋が見ていないわけがない。

 また、8月30日は「新月」である。今年の相場は新月を起点に動くことが多く、統計的にはかなりの確率で相場の転換が起こっている。

NYダウ(日足)と新月

出所:石原順

日経平均(日足)と新月

出所:石原順

ドル/円(日足)と新月

出所:石原順

 アノマリーという意味では、8月30日はジブリの呪いの日である。ジブリの呪いとは、金融業界や投資家などの間で語られているアノマリー、ジンクスおよび都市伝説の一つである。ジブリ映画が放送されるたびに、東京市場では株式市場や外国為替相場が大荒れになるという噂が、2008年頃から株や市況を生業にしている人たちの間の一部で語り継がれている。

 8月28日(水)のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』では、楽天証券テクニカルアナリストの土信田雅之氏をゲストに、このあたりの話を取り上げてみた。ぜひご覧ください。

8月28日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所:YouTube

 8月に下げて9月は戻すが10月にもう一度下げてダブルボトム(底)をつけるというのが1998年相場のパターンである。

『アナログチャートモデル』はチャーダーファンドの副社長だったピーター・ボリッシュが考案し、「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」を当てたことで脚光を浴びたパターン分析である。この分析手法は、相場は一定のパターンを繰り返すという相場のフラクタル構造や相似性に着目したものだが、米国では非常に人気が高い分析手法だ。

Paul Tudor Jones - Trader Documentary 1987
ポール・チューダーやピーター・ボリッシュが登場するブラックマンデーのドキュメンタリー

出所:YouTube

 相場はニュースによって作られるのではない。長くマーケットと格闘した人なら分かるだろうが、ニュースは相場が作るのである。そして、相場は行きたいところに行く。

ブラックマンデーの回顧

 以下の記事は、マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート「The Gloom, Boom & Doom」2017年11月号『1987年から30年で何が変わったのか!』の中のブラックマンデーの回顧である。パンローリングから許可をもらって掲載している。

【1987年夏まで、米国だけでなく世界中に浮かれたムードが漂っていた。ところが、1987年夏までに、米国株が買われ過ぎている状況を懸念する予測者が出てきた。同年に株価が40%を超える上昇を見せたことを思い出してほしい。

 ロバート・プレクターもそのひとりである。彼は1978年に『エリオット波動入門』を執筆したときには、ダウ平均が3000近くにまで上昇するだろうと強気を唱えていた(そして、誰にも信じてもらえなかった)。その彼が1987年9月初旬には弱気に転じたのだ。しかし、これは過半数の見解ではなかった。

 10月19日ブラックマンデー直前直後の日々は、私をひどく揺さぶった。極めて混沌としていたからだ。自分の顧客も個人的にも稼ぐことはできた。しかし、ソロスのような賢明な人物でさえ2週間で資産の32%を失ったのだ。とすれば、私にも起こる可能性があると考えた。そこで、私は売り玉を減らし、しばらくの間、相場から離れると誓った。

NYダウ(日足)1986~1987年のチューダーのエリオット波動カウントとブラックマンデー

出所:石原順

 先ほどロバート・プレクターが1987年9月に弱気に転じたと述べた。しかし、暴落直前に大量の売りを仕掛けて富を築いたファンドマネジャーは、友人のポール・チューダー・ジョーンズだった。彼が80年代に叩き出した運用成績はソロスよりもはるかに優れている。彼は1987年を約100%のリターンで終えたのだ!

 ポールは私が今まで会った中で最も偉大で、最も誠実なトレーダーである。彼には持って生まれたトレードの本能があるにちがいない】

(マーク・ファーバー)

出所:The Gloom, Boom & Doomマーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート2017年11月号『1987年から30年で何が変わったのか!』・国内代理店パンローリングの掲載許可をとって掲載

三角もちあい崩れでドル/円は年内100円割れの可能性が高まった

 ラジオやセミナー等でずっと取り上げてきたドル/円の三角もちあいだが、8月26日の105円割れでもちあいが崩れた。ここから年内に100円~98円どころの円高を目指すことになると思われる。ドル/円は今後戻り局面があっても、すべて叩かれることになるだろう。

ドル/円(週足)と三角もちあい

出所:石原順