東京証券取引所は、2019年7月31日(水)に講師として、セゾン投信株式会社代表取締役社長・中野晴啓氏、楽天証券経済研究所ファンドアナリスト・篠田尚子氏を迎えて、「+YOU特別企画『激論!アクティブ投信の最新事情』」を開催いたしました。

 多岐にわたる分析や評価を通じ、世間に広まる投資信託の「常識」にメスを入れ、新たな視点で提言されている専門家2人による本セミナーでは、初めて資産運用を検討しようとする方にとっての「よい投資信託」について、両氏が激論。また、投資信託の「新常識」も解説していただきました。

 第1部では、篠田、中野、両氏から投資信託の中でも、アクティブ運用の投信について、どのような点に留意して選択すべきか、その心構えなどについて、解説していただきました。

「常識」からの脱却

 まず篠田氏は、ファンドアナリストからの着眼点を挙げつつ、「その投資信託の『常識』、間違っていませんか?」という問いかけからスタート。

 近著『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ発行)にも取り上げているアクティブファンドについて、いくつかの実例を解説しながら、「投資信託を選ぶにあたってダイヤの原石を探そうとしない」「ファンドマネージャーは5年先を見ており、5年がひとつの目安」「積立投資での購入頻度を増やしてもリターンに大きな差は生じない」「積立に必要不可欠なのは資産分散と時間分散の組み合わせ」「ポートフォリオは少ない本数でも完成できる」など、投資信託の選び方や運用の考え方について、歯切れの良い説明がされました。

「ポートフォリオはシンプルにして良い」と語る篠田氏

誤解されている「アクティブファンド」

 2019年春に『いま選ぶべきアクティブ投信この8本!』(日本実業出版社発行)を上梓した中野氏からは、「アクティブファンド(投信)の迷信から目覚めよ」と題し、セゾン投信の理念を訴えつつ、市場で広まるアクティブファンドに対する迷信の裏側を解き明かしました。

 そして、これまでのアクティブファンドの問題点を指摘するとともに、問題があるアクティブファンドを見抜くための視点を伝えました。

 さらに、ホワイトボードを用いながら、「リスクの数字を低く抑えられるアクティブであれば、ローリスク・ハイリターンのポートフォリオを作ることができる」「インデックスファンドに劣らないアクティブファンドは数多くある」「成熟した経済の投信が必要になっている」「世界経済の成長を取り込めれば合理的なリターンが見込める」「テーマ型投資信託がなぜ長期投資に不向きなのか」など、アクティブファンド選びの要点を挙げて解説。

 アクティブファンドを取り巻く状況や、「生活者であり投資家である私たち」が考えるべきポイントについて、力強い説明がなされました。

「生活者兼投資家として責任を持って資金を動かす必要がある」と語る中野氏

 2人の専門家による、アクティブファンドについての深い解説を聞きながら真剣にメモを取っている参加者も多く、会場が大きな熱量に包まれていく様子がうかがえました。

価値観共有の必要性

 第2部では、中野氏、篠田氏のパネルディスカッションが行われました。

 ここでは「アクティブ投信では運用者の理念と哲学や価値観を共有するとともに、個人投資家にはできないことを、代わってプロが行う点を理解することが必要」「投信は手数料が安ければよいということではなく、ファンドマネージャーの仕事の価値に見合った適正なコストを見極めることが重要」「投資信託には、未来への志といった、ロマンに対する実感を持って投資してほしい」との意見が交わされました。

投資に対する積極的な情報収集が求められている

 来場者との質疑応答コーナーでは、「AI(人工知能)投資の可能性」についての質問がありました。これに対し、「AI投資のプレゼンスは今後一気に高まっていく可能性があるが、現状は、まだまだ発展途上」「リーマン・ショックのような暴落時は人間が運用するアクティブファンドしか乗り越えられない。現状のAIは下落トレンドを察知し、売ってしまう」など、今後の課題についても言及。

 また、「どの運用会社を選べばよいか」についての質問については、「運用担当者の淘汰(とうた)も始まっており、運用会社の情報をしっかり得ることが重要」「インターネットを活用して、充実している運用会社のホームページを見てほしい」など、個人投資家自ら情報を収集する姿勢の大切さについても、解説されました。

参加者からの反応

 セミナー終了後のアンケートでは、「非常に魂のこもったお話で貴重な機会を得られた」「結論をはっきり言ってくれたので内容の濃いセミナー」「インデックスファンド全盛の時代にこういうセミナーは聞き応えがある」などの感想の他、「ファンドアナリストを主としたセミナーを増やしてほしい」など、アクティブファンドにより強い関心を示す内容の感想も寄せられました。

 東京証券取引所では、今後もさまざまなテーマでセミナーを開催し、個人投資家の皆様へ幅広い情報の発信を行ってまいります。

■セミナー開催概要
日時:2019年7月31日(水)19:00~20:30
会場:東証ホール
対象:一般

(東証マネ部!編集部)

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