ETFとは?

ETFはエクスチェンジ・トレーデッド・ファンドの略で、そのまま訳すと「取引所で取引される投信」という意味です。

米国で最初のETFはSPDR S&P500 ETF(ティッカーシンボル:SPY)で、1993年に上場されました。

それ以降、ETFの市場は急拡大を見ており、米国投資会社協会(ICI)によると2014年7月の時点で米国のETFの数は1,375、総資産は1.8兆ドルにのぼっています。

つまりETFは大ヒット商品なのです。

世界のETFの総資産の72%はアメリカにあります。

それは海外ETFに投資することで、巨大で、流動性の高いマーケットに投資できることを意味します。もちろん日本の証券市場にもETFは上場されているわけだけれど、私が海外ETFに投資した方がずっと良いと考える理由は、ここにあります。

大ヒットの背景

ETFはなぜこれほどまでに成功したのでしょうか? それは率直な言い方をすれば「既存の投資商品より、ダントツに優れモノの商品だったから」ということに尽きます。つまり成功すべくして成功したわけです。

どこが「ダントツに優れモノ」なのか?

それではETFのどこが「ダントツに優れモノ」なのかという点を説明します。ポイントは次の5点になります。

  • 購入タイミングが自由
  • フィーが安い
  • 米国の投信税制の不利益を受けない
  • 透明性が高い
  • ポートフォリオを組む際の利便性

これらについては少し言葉を足して説明する必要があるかと思います。

購入タイミングが自由

まず購入タイミングが自由なことですが、このメリットは個人投資家の方々が、わかっているようで、実はあまりわかっていない大事なポイントです。

従来の投資信託の場合、一日が終わって、株式市場が閉まった後で、基準価格というものを計算します。別の言い方をすれば、投資信託の価格は、一日に一回しかつかないのです。

仮にある日、相場を眺めていて、マーケットが急騰したとします。その場合、もし前日の投信価格で投信を購入することが出来るのであれば、これほど美味しい話はないですよね?

でもそれを許すと既にその投信を購入し、保有し続けてきた既存の投資家に不公平になります。

このため日中に投資信託の買い注文を入れた投資家は、その日の引け後に計算される、急騰後の値段で投資信託を買い付けるルールになっています。その場合、日中は自分が買い付ける際の基準価格がわからないままに注文を入れるということから、これを「ブラインド(盲目)方式」と呼びます。

ブラインド方式では、相場が急騰したからといって慌てて注文を出しても、その日、マーケットが上がった後の値段でしか買えないのです。また相場が急落している日に慌てて売り注文を出したとしても、その日、マーケットが下がった後の値段でしか逃げることは出来ません。

こう書くと皆さんは(僕はデイトレーダーじゃない。だからそんな細かいことは関係ない)と思われるかもしれません。しかしブラインド方式は自分の買付値段がわからないままに発注する方法ですからあなたが厳密に買いコストを管理することは不可能なのです。

いまマーケットが日中に1%上がったり、下がったりすることは、日常茶飯事です。するとこれだけで下手をすれば一年間の運用フィーに匹敵するようなコストを被りかねないのです!

その点、ETFは株式と同じで株式市場が開いている間、リアルタイムの値段で購入、売却が出来ます。だから自分の納得のいくピンポイントの値段(指値)ないしは時間(成り行き注文)で取引が出来るのです。本当にコストにシビアな投資家は、ちゃんと指値をして自分の納得の行く値段でETFを買っています。

フィーが安い

ETFは基本、インデックス・ファンドです。インデックス・ファンドは、別名、パッシブ運用と言われる場合もありますが、単に株価指数をなぞるように設計されています。もっと踏み込んだ言い方をすれば、ファンドマネージャーの銘柄選択の腕前は、関係ないのです。

銘柄を選定しないということは企業調査などの手間もかからないわけで、ロー・コストにファンドを運営することが出来ます。

下はファンドのタイプ別の費用比率を比較したグラフです。米国投資会社協会(ICI)の調査では2013年のアクティブ運用の平均費用比率は0.89%でした。

これに対してインデックス・ファンドの平均費用比率は0.12%、そして世界で最もポピュラーなETFで、アメリカの代表的株価指数であるS&P500指数をなぞるように設計されているSPDR S&P500 ETFに至っては、費用比率は僅か0.09%に過ぎません。

次にETFは新規顧客がニュー・マネーでファンドを購入した際、ファンドの資産が増えた分だけそれに呼応する株式を購入するコストが外部化されています。これはむずかしい概念なので、第二章で詳しく説明することにします。

米国の投信税制の不利益を受けない

ETFのもうひとつの優位性は米国の投信税制の不利益を受けない点にあります。

いまファンドがその中に組み入れられている銘柄を売却した場合、それが利益になればキャピタルゲイン課税の対象になります。これはインデックス・ファンドの場合でも例外ではありません。

(でも自分がインデックス・ファンドを解約するまでは、銘柄は売却しないだろう?)

投資家は、そう考えがちです。

しかし、この理解は正しくありません。自分とは何の関係もない他の投資家が、インデックス・ファンドを解約して現金を引き出せば、運用会社は解約に応じるためのキャッシュをこしらえるべく、ファンドで保有している株式の一部を売らなければいけないのです。

若しそのときにキャピタルゲインが発生したら、売らずにずっとファンドを持ち続けた投資家も、キャピタルゲイン税を払わないといけないのです。つまりキャピタルゲイン税を払うことは、そのファンドに投資しているメンバー全員の責任になるのです。

これに対してETFは税法上、普通株と同じ扱いを受けます。つまり自分がそのETFを売却しない限り、キャピタルゲインは発生しないのです。

透明性が高い

ETFの利点は透明性が極めて高い点にあります。ETFは、その仕組み上、毎日、そのETFを構成している銘柄ならびに個々の比重を公表しなければいけません。(これをポートフォリオ・コンポジット・ファイルといいます)

これに対して投資信託は年に2回しか開示が義務付けられていません。もちろん、多くの投信は月次レポートを公表していますが、月末直前に顧客レポートに載るときまりの悪い銘柄を処分するなどのウインドウ・ドレッシング(=ポートフォリオのお化粧)が行われることも多いです。

ETFの場合、毎日、きっちりとポートフォリオが公表されるため、運用は極めて透明です。

ポートフォリオを組む際の利便性

ETFは上で論じたように中身が透明であり、投資家が何に投資しているのかが一目瞭然です。

それに加えて取引所に上場されている関係で、必要な時、自分の考えるタイミングでポジションを立てたり処分したりすることが出来ます。

ETFには株式だけでなくコモディティや債券に投資できるものもあり、銘柄は多岐にわたっています。

これらのことはETFがポートフォリオを組む際に、極めて便利な投資対象であることを示唆しています。