注目を浴びるゴールド
世界の投資家の注目がゴールドに集まっています。その理由として、世界的に景気に陰りが見え始めていることが挙げられるでしょう。
景気が後退する局面で、投資家は安全な債券に資金をシフトします。それは債券が買われることを意味し、債券価格の上昇とともに債券利回りは低下するというわけです。
下の図1は米国10年債のチャートです。
図1:米国10年債利回り
ゴールドには利子がつきません。だから金利が高いとき、投資家はゴールドを敬遠します。いまは逆に金利が低くなっているため、ゴールドの魅力はUPしているのです。
金価格は6年ぶりに1,400ドルの水準を超え、高値を追いかけています。
図2:ゴールド価格
誰がゴールドを買っている?
需給関係の面でとりわけ注目されているのは中央銀行によるゴールド買いです。第2四半期中、世界の中央銀行が224トンもの金の延べ棒を準備金の目的で購入しました。2019年上半期の中央銀行によるゴールド購入は374トンで、過去19年で最高でした。
図3:中央銀行によるゴールドの購入
ゴールドETF(上場投資信託)にも資金が流入し始めています。
とりわけ欧州の機関投資家が積極的にゴールドETFを購入しています。第2四半期のゴールドETFからの需要は67.2トンで、これによりゴールドETFは現在、2,548トンのゴールドを保有、過去6年で最高となっています。
これはドイツを中心とした欧州各国の景況感が悪化しており、ECB(欧州中央銀行)が金融緩和に動くのではないか? という観測が出ていること、そして英国の首相にボリス・ジョンソン氏が選ばれ、英国による合意なきEU(欧州連合)離脱、すなわち「ハード・ブレグジット」の公算が高くなったことを反映していると思います。つまり、イベントリスクに備える動きです。
個人投資家によるゴールドコインや金の延べ棒の購入は前年比▲12%の218.6トンと低調でした。
ジュエリー向けの需要は第2四半期に前年比+12%の168.8トンでした。インドの婚礼向けジュエリーが好調でした。
全体として第2四半期のゴールドの需要は前年比+8%の1,123トンでした。
投資機会は?
ゴールドの値動きをそのままトレードしたい場合、最も適した投資対象はゴールドのETFになります。SPDRゴールドシェア(GLD)というETFがあります。このETFはニューヨーク証券取引所に上場されており、ちょうど米国株に買い注文を出すのと同じやり方で購入することができます。
金価格上昇局面では金鉱株を買うという手もあります。金鉱株は産金会社と呼ばれることもありますが、要するにゴールドを発見し生産することを目的にした鉱山会社です。
一般に産金会社は地中にたくさんのゴールドのリザーブ(埋蔵量)を保有しています。そのうちのほんのわずかを毎年掘り出し、利益を上げているのです。だから含み価値が大きいと考えることができます。
その半面、金を地中から掘り出すにはコストがかかります。金価格が低迷している局面ではせっかく掘り出してもコストの方が多くかかってしまい、採算に合わないこともあります。その上、企業によっては沢山の借金を抱えているところもあり、そんな、こんなでゴールドETFを購入するより金鉱株を購入するのはリスクが高いのです。
その半面、金価格上昇局面では当期利益や含み価値はみるみる上昇するので、しばしば金価格そのものの動きより金鉱株の値動きのほうが荒っぽくなるのです。
米国を代表する産金会社にニューモント・ゴールドコープ(NEM)があります。この企業は老舗ニューモント・マイニングがゴールドコープと最近合併してできた会社です。
バリック・ゴールド(GOLD)は最近、ティッカーシンボルが「GOLD」になったばかりですが、カナダに本社を置く大手産金会社です。その株式はニューヨーク証券取引所で取引されています。ニューモント・ゴールドコープと並んで最も有名な産金会社と言えます。
アングロゴールド・アシャンティ(AU)は南アフリカに本社がある大手産金会社です。アフリカ大陸に有力金山を沢山持っています。
ヤマナ・ゴールド(AUY)はブラジル、チリ、アルゼンチンなど南米の金山のポートフォリオで有名な企業です。
ゴールドフィールズ(GFI)は南アフリカ、ガーナ、オーストラリア、ペルーなどに金山を持っています。
ハーモニー・ゴールド・マイニング(HMY)は南アフリカとパプアニューギニアに金山を持っています。
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