日経平均は米中摩擦の懸念で失速

「月またぎ」となった先週末8月2日(金)の日経平均株価終値は2万1,087円でした。この日は取引時間中に節目の2万1,000円台を下回る場面があった他、前日比で453円安と下げ幅が大きなものとなっています。前週末終値(2万1,658円)比では571円安となり、週足ベースも下落に転じています。

 先週末の株安のきっかけとなったのは、「米中摩擦の悪化懸念」という既視感のある材料ですが、このまま株価の軟調地合いが続いてしまうのでしょうか?まずはいつもの通り、下の図1で足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年8月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて、先週の日経平均の値動きを振り返ると、FOMC(米連邦公開市場委員会)や米中の閣僚級協議というイベントを挟み、株価は戻りをうかがう動きから失速し、下落へとかじを切る展開となりました。とりわけ、トランプ米大統領が対中制裁関税第4弾を実施するとの報道を受けた週末8月2日(金)の下落が目立っています。

 ここから読み取れるポイントはいくつかあります。冒頭でも触れた通り、節目の2万1,000円台水準が意識されていることや、戻りをうかがう場面でつけた高値(7月30日の2万1,792円)が直近高値(7月25日の2万1,823円)を上回ることができなかったこと、反対に、先週の安値(8月2日の2万960円)が直近安値(7月18日の2万993円)を下回ったことです。

2万1,000円台の攻防に注目

 先週末の先物取引市場でも終値が大阪取引所で2万900円、CME(シカゴ)で2万910円となっているため、今週は2万1,000円台の攻防が注目される格好で取引がスタートしそうですが、下の図2を見ても分かる通り、2万1,000円は単なる株価水準の節目以上に意識されていることが分かります。

■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2019年8月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 となると、2万1,000円割れが進んだ際にどこまで下がってしまうのかが気になるところです。その場合、下値サポートとして意識されそうなのは、2018年12月26日の安値と2019年6月4日の安値を結んだトレンドライン、もしくは6月4日の安値そのものになります。

 ちなみにその6月4日安値は2万289円です。今後、中国が米国に対抗策を示すなど米中摩擦の悪化懸念が高まれば、この水準まで日経平均が下落してしまう可能性はあるのですが、実はここまでの下落ならば、まだ市場は冷静と受け止めて良いと思われます。

■(図3)日経平均(日足)の動き その3(2019年8月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は昨年10月2日の高値(2万4,448円)から12月26日の安値(1万8,948円)の下げ幅に対する戻り水準のラインを描いたものですが、今年に入ってからの日経平均は半値戻しである50%と38.2%戻しの範囲内で推移している場面が多いことが分かります。

 38.2%戻しのラインは2万1,049円ですので、ほぼ2万1,000円です。この事からも2万1,000円台が意識される理由の一つになっているとも言えます。先ほどの6月4日の安値も23.6%戻しの水準とほぼ一致します。

 ですので、半値戻し(2万1,698円)から38.2%戻し(2万1,049円)がメインの想定レンジとなり、上振れたら61.4%戻し(2万2,347円)、反対に下振れたら23.6%戻し(2万246円)まで動きそうというのがサブの想定レンジになります。日経平均は昨年末に見せた下げ幅の範囲内で動いていることに変わりがなく、一定の落ち着きどころをまだ維持していることになります。ただし、23.6%戻しラインを下回ってしまった場合は要警戒です。

中長期的にも次の方向感を待っている

 中長期的に見ても、現在の日経平均は「次の展開」を探っている最中です。

■(図4)日経平均(週足)の動き(2019年8月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 中期的な日経平均は、2016年の春先に出現した「トリプルボトム崩れ」の安値同士を結んだ線に沿って上昇トレンドを描いてきましたが、昨年10月2日の高値以降に下落へと転じたことで「ダブルトップ」のような形で天井を形成し、以降は上値を切り下げる一方で下値が切り上がる「三角もちあい」を描くような格好で推移していますので、中長期的に次の方向感が出てくるのを待っている状況と言えます。

 確かに、米国の対中制裁関税第4弾の実施警戒が飛び込んできたことによって、国内外の株式市場は大きく下落する反応を見せましたが、今回の発表はFOMC直後であることや、中国の北戴河会議など、タイミングとしてはかなり政治的な意図があるほか、さらなる制裁対象の拡大は米国経済への悪影響が避けられないこともあり、現時点で9月1日の制裁発動以降の不安を先取りしていくのは少し難しいと言えます。さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)が次回のFOMCで利下げに動かざるを得なくなるという見方も浮上しているため、金融相場が継続することも考えられます。

 そのため、今週はこのまま下げ足を速めてしまう動きが濃厚ですが、ある程度のところで反発していく展開も十分にあり得ます。もちろん、前回のレポートでも指摘した通り、下方向への意識が強い状況ですので、下げ止まる株価水準が2万円台を割れてしまうと、中期的な下落トレンド形成の始まりとなる可能性があるため、「まずは下げ止まり」の株価水準を確認するのが焦点になります。

※来週(8月13日)は夏季休暇のためお休みとなります。