売買ランキングから見る、7月下旬の注目点
2019年7月下旬 米国株式売買ランキング
順位 | ティッカー | 銘柄名 | 関連するテーマ | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | AMZN | アマゾン・ドット・コム | eコマース、クラウド、AI | ||
2 | MSFT | マイクロソフト | クラウド、PC | ||
3 | FB | フェイスブック | SNS、仮想通貨 | ||
4 | BYND | ビヨンド・ミート | 代替肉 | ||
5 | V | ビザ | キャッシュレス、フィンテック、eコマース | ||
6 | CRWD | クラウドストライク | サイバーセキュリティ | ||
7 | JNJ | ジョンソン・エンド・ジョンソン | ヘルスケア | ||
8 | MA | マスターカード | キャッシュレス、フィンテック、eコマース | ||
9 | SPXS | Direxion デイリー S&P 500 ベア3倍 ETF | 米国株式市場全体(レバレッジ) | ||
10 | ZM | ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ | ソフトウェア | ||
注:楽天証券金額ベース。7月16~31日、国内約定日ベース |
7月下旬の売買ランキングを見ると、7月下旬に決算発表を行った大手IT企業が上位にランクイン。また、決算発表前に上場来高値を更新していたものの、決算発表を受け急落したビヨンド・ミートも4位にランクイン。今回はこれらの銘柄について、決算発表の中身などを見ていきたいと思います。
ランキング上位の銘柄について、決算発表の中身などを確認
売買ランキングのTOP5に入った銘柄について、直近の動向を見ていきたいと思います。
アマゾン・ドット・コム(AMZN)
ランキング1位に入った銘柄は、7月25日引け後に4-6月期決算を発表したアマゾン・ドット・コム(AMZN)です。決算内容を見ると、売上高は前年比約20%増の634億ドルとなり市場予想を上回ったものの、EPS(1株当たり利益)が市場予想を下回ったことで株価は下落。今月2,000ドルを超えていた株価は、7月31日の終値では1,900ドルを割っています。
利益を押し下げた主な要因としては、米国で翌日配送サービスの提供地域を広げたことに伴うコスト増が指摘されています。日本では当たり前のようにほぼ全国どこでも翌日配送、もしくは当日配送が可能となっておりますが、やはり国土の広い米国ですと、なかなか米国全土で翌日配送を実現することが難しいようです。実は米国ではアマゾンのプライム会員であったとしても、配送には2日以上かかる場合が多くありました。
そうした中、今回アマゾンはさらなる投資を行い、その米国でも「翌日配送」をさらに普及しようとしています。マーケットはこうした投資を将来の利益の圧迫要因として捉える向きが多く、それが株価の重しになっているようです。
ただ、個人的にはこれまでもアマゾンについては積極的な投資が度々非難されてきたものの、結果的にはそれが同社のさらなる成長に繋がり、株価を押し上げてきた歴史がありますので、今回の行動についても前向きな動きであると評価しています。
マイクロソフト(MSFT)
2位は7月18日引け後に4-6月期決算を発表したマイクロソフト(MSFT)です。こちらは売上高も純利益も過去最高となり、引き続き「クラウドへの大転換が大成功している」といった印象です。
同社が適用するプラットフォームとしてのクラウドサービス「Microsoft Azure(アジュール)」の成長率は前年比64%と、全四半期の73%などからはやや減速したものの非常に高い成長率が続いている他、「ワード」や「エクセル」といったソフトをクラウドベースで提供する「Office 365」なども好調だったようです。
時価総額も1兆ドルを超え、史上最高値を更新し続けているマイクロソフトですが、どうやら今回の決算を見る限り、その勢いは当面続く可能性が高いと言えそうです。
フェイスブック(FB)
3位は7月24日引け後に4-6月期決算を発表したフェイスブック(FB)です。売上高は前年比28%増の169億ドルとなり市場予想を上回った他、月間アクティブユーザー数(MAU)は同8%増の24.1億人となり、こちらも市場予想を上回りました。
純利益については個人情報の不正利用などの問題で当局と50億ドルの制裁金で和解したことに関連し前年同期比49%減となったものの、マーケットはこのことについては織り込み済みで、特に大きな反応は示していません。
今回の決算についてはこうした個人情報の問題などがあっても売上高・ユーザー数が堅調に伸びていることを示す良い決算であったと考えますが、株価はやや上値が重たい展開となっています。
ビヨンド・ミート(BYND)
4位に入ったのは、7月29日引け後に決算を発表した植物由来の代替肉を手がけるビヨンド・ミート(BYND)です。こちらは引き続き激しい値動きが続き、7月26日には240ドル近くまで上昇する場面もありましたが、決算発表後は12%を超える急落となりました。
決算発表を見ると、業績自体は売上高が前年比で約4倍となり、2019年12月期の通期売上高見通しも引き上げるなど堅調な内容ではありました。ただ、マーケットが嫌気したのは、同時に発表された株式の売り出しです。
各社報道によると、今回の売り出しは発行済み株式数の約5%に及びます。さらに、事業のための資金調達はその一部にとどまり、イーサン・ブラウンCEOら経営陣を含む、既存株主の売りが中心となるとのことです。
もちろん、株価がIPO(新規株式公開)以降10倍近くになっていることから、経営陣や初期段階の投資家が自分の持っている株式について利益を確定したくなる気持ちも分からないでもないですが、上場から約3カ月で経営陣が自社株を売りに出すというのは、投資する側からするとやはり心配になります。
また、その売り出し価格が前日終値を約18%下回る160ドルだったことも懸念材料となり、マーケットが落ち着くまではしばらく時間がかかるかもしれません。
ビザ(V)
5位は7月23日引け後に4-6月期決算を発表した米クレジットカード大手のビザ(V)です。こちらは引き続きクレジットカードの利用が拡大する中でEPSが市場予想を上回った他、純収入も前年比12%増の58.4億ドルと、こちらも市場予想を上回りました。
米中貿易問題などを背景に世界経済の減速が懸念されるものの、今のところクレジットカードの利用状況に悪影響はでていないようです。インターネットショッピングやキャッシュレスの普及という追い風が吹くなかで、株価は今後も堅調な値動きとなりそうです。
今後の動向について
4-6月期の決算発表はそろそろ一段落というところですが、改めてこうしてみると、アマゾン・ドット・コム(AMZN)にしてもフェイスブック(FB)にしても、いわゆるGAFA※と呼ばれる大手IT企業の相変わらずの堅調さが際立っていたように思えます。
いまだにこうした大手IT企業の売上高が前年比で20%伸びているような状況を見ると、まだまだ「次のGAFA」を探すよりも、「今のGAFA」などに注目していくことも必要なのではないかと感じました。
ただ、決算が一段落し、米連邦準備理事会(FRB)による利下げも概ね予想通りに行われたと思った矢先に、トランプ米大統領が対中関税の「第4弾」を発動すると発表しました。G20の米中首脳会談で一旦は停戦状態となり、一部ではそろそろ前向きな発表もあるのではないかと期待されていたなかでの突然の発表です。
関税の発動自体は9月1日ということなので、それまでになんらかの合意に達する可能性もなくはないですが、中国としては来年の米大統領選挙まで様子見スタンスを続ける可能性も高く、今後はまたしばらく、米中貿易問題の動向が焦点となってきそうです。
※Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Apple(アップル)の頭文字をとった造語。
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