7月22日~26日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は小反発。週前半は地政学的リスクを背景に買いが先行し、WTI期近9月限は一時57.64ドルまで上昇した。しかし、週後半は直近の上昇に対する反動から利益確定の売りに押され、上げ幅を縮小する動きとなった。米国の原油在庫が予想を大幅に上回る減少となったが、買い反応が限られたことからも、センチメントはさほど強気ではないことが窺える。

 イランを巡る中東不安が高まった。欧州連合(EU)制裁に違反しシリアへ原油を輸送していた疑いがあるとして、今月4日に英領ジブラルタル沖でイランのタンカーが拿捕された。これに対してイラン側は、拿捕は米国の指示による行為だと非難、10日には英国のタンカーがホルムズ海峡でイラン船舶に進路を妨害された。

 両国間の緊張が高まるなか、イラン革命防衛隊(IRGC)が19日に英国のタンカーを拿捕、これに対して英政府がイランへの経済制裁を検討していると伝わった。 また、イラン治安当局はこの日、自国を敵国に売ったとして米中央情報局(CIA)のスパイネットワークに関わっていた容疑者17人を逮捕、米国を敵視する動きが強まった。

 イランと米英との関係悪化、延いては原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖の可能性が懸念された。さらに米政府は、イラン産原油を輸入したとして中国の石油商社を制裁対象に指定することを決めた。イランと米国だけでなく、中国も絡んだことで、不安感が高まった。

 しかし、中東の緊張を手掛かりとした買いは限られ、大きく上値を伸ばすには至らなかった。中東不安のほか、休戦後に初となる米中貿易協議が開催されるとの報や米国の原油在庫が大幅な取り崩しとなったことが判明するも、買い反応は薄かった。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は上海を訪れ、今週30日から貿易協議を開く。一時休戦で合意した6月以来の協議となる。

 この報を受けて一時買いが優勢となる場面もあったが、両国の主張を踏まえると妥協点を見出すのは難しいのはという見方が広がった。関係改善への楽観よりも、国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通しが従来見通しから下方修正された点を市場はクローズアップしている感がある。

 また、米国の原油在庫の動向についても同様。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は1000万バレルを超える取り崩しとなった。事前予想は400万バレルの減少で、それをはるかに上回る減少となったにもかかわらず、市場の買い反応は一時的なものにとどまった。在庫は減少しているが水準は依然として高い。

 また、在庫減の主たる要因が原油生産量の大幅減少にあり、これはハリケーン「バリー」襲来に備え、メキシコ湾沖合のプラットフォームから従業員が避難するなど操業停止によるもので、すでに操業が再開していることからも、再び高い生産量へと回復するとの見方が強まった。

 これらのことからも、市場は冷静に捉えていることが窺え、強材料に対する反応が限定的なことから、市場のセンチメントは幾分弱気にシフトしている可能性も窺える。6月前半の50ドル水準から戻り歩調にあったが、60ドル超えからの買いに弾みが付かないことから、買い飽き感も出ている可能性がある。弱気な要因が出てくると、失望売りが誘われる可能性もあるため注意したい。

今週の予想

・WTI 中立 54.00-57.50ドル
・BRENT 中立 61.50-64.50ドル

※「原油マーケットの行方」は、今回が最終回となります。ご愛読ありがとうございました。