日経平均は堅調に推移。市場のムードも改善

 先週末7月26日(金)の日経平均株価は2万1,658円で取引を終えました。前週末終値(2万1,466円)からは192円高、週足ベースでは3週ぶりの反発です。先週より国内外企業の決算発表が本格化してきましたが、注目企業の業績や見通しに対する株式市場の反応はまちまちながらも、全体で見れば堅調に推移したと言えます。

 7月から8月の「月またぎ」になる今週も、引き続き国内外で決算発表が相次ぐ他、日銀会合やFOMC(米連邦公開市場委員会)などの金融政策イベント、米中通商協議が再開されることに加え、週末には米雇用統計が控えるなど材料がめじろ押しとなっていますが、日本株はさらに上値を追っていくことができるのでしょうか?

 まずはいつもの通り、下の図1で足元の状況から確認です。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年7月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きをローソク足で振り返ってみますと、やはり、7月23日(火)の大きな陽線が目立っています。

 実際に、この陽線は節目の2万1,500円台乗せをクリアしたほか、25日と75日の移動平均線も上抜けています。さらに、この2本の移動平均線によるゴールデン・クロスが実現しているなど、チャートの形や市場のムードをかなり改善させている印象です。

 日経平均はその後も値を伸ばし、7月25日の取引時間中には直近高値(7月2日の2万1,784円)を更新する場面も見られました。次は5月7日の安値である2万1,875円がターゲットになります。ここまで値を伸ばすことができれば、5月7日~8日にかけて空けた大きな「窓」を埋めることができ、2万2,000円台乗せへの意識が強まりそうです。週末の26日(金)は失速する展開になったものの、値動きとしては悪くなかったと言えます。

 また、前回のレポートでは、相場の地合いが上方向の意識と下方向の意識が綱引きをしている状況であることに注目し、チャート上に高値同士と安値同士を結ぶトレンドラインを描いて、今後の値動きを想定しましたが、次の図2を見ても分かる通り、前回想定していた範囲内の上半分での値動きとなっています。

■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2019年7月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 今週も、前回と同様の見方ができそうです。具体的には赤いトレンドライン(4)と、青いトレンドライン(3)の範囲内がメインの想定レンジになりそうです。

日経VI指数で株価変動の大きさをチェック

 ただし、冒頭でも触れた通り、今週は注目の材料が多く、株価の上振れや下振れが激しくなる展開には注意しておく必要があります。最近の東証1部の売買代金の推移を追ってみると、取引が活況とされる目安の2兆円に届かない日が増えており、先週は一度も2兆円を超える日がありませんでした。つまり、「閑散に売りなし」状態で株価が上昇していただけに、ふとしたことがスイッチとなって、思った以上に株価変動が大きくなってしまう可能性があるわけです。

 そのため、株価変動の大きさを見ていくために、日経VI指数のチャートを組み合わせていきます(下の図3)。

■(図3)日経平均(週足)と日経VI指数の動き (2019年7月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 日経VI指数のVIとは、「ボラティリティ・インデックス」を指し、投資家が将来の値動きをどう想定しているかを表しています。VIの数値が高くなるほど株価の値動きが荒っぽくなりそうと判断し、その反対であれば値動きが安定しているとみることができます。上の図3を見ても分かる通り、日経平均が上昇基調の時は日経VI指数が低下傾向にあり、日経平均が急落した際には、日経VI指数が急騰している場面が多くなっています。

 また、日経VI指数のチャートには100週移動平均線が描かれていますが、日経平均が下落した際に日経VI指数もこの100週移動平均線を上抜けてしまうと、下げ幅が大きくなる傾向が目立っています。そのため、仮に今週株価が下落した場合、日経VI指数の動きもチェックしておいた方が良さそうです。

米国株はFOMC後どうなる?要注意のサインも

 もちろん、今週は注目のFOMCが控える米国株市場の動きがカギになっていきます。FOMCは7月30日~31日に行われますが、日本株市場がその結果を受けるのは8月1日(木)の取引からです。0.25%の利下げが大方の予想となっていますが、今後の利下げ方針など、これまでの米国株市場は利下げ期待によって上昇してきた面が強い分だけに、「アフターFOMC」の市場の反応が警戒されます。

 下の図4はNYダウ(日足)の平均足とMACDの動きを示したものですが、平均足の陰転と陽転の繰り返される場面が増え、MACDとシグナルとのクロスも出現しており、上昇基調が崩れたとはまだ言い切れないものの、微妙な感じになっています。

■(図4)NYダウ(日足)の平均足とMACD (2019年7月26日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 FOMC後もこの上昇基調を維持できるかが今週の米国株市場の焦点になりますが、この他にも少し気になる点もあります。先週の7月23日(火)に米国株市場で「ヒンデンブルグ・オーメン」が点灯したという話題が出てきていることです。

 ヒンデンブルグ・オーメンとは、1937年5月に米国で爆発事故を起こした独の飛行船から名付けられ、52週高値・安値更新の銘柄数の関係や、マクレラン・オシレーターなどのいくつかの条件を満たすことで点灯する売買サインです。

 細かい条件についてはここでは触れませんが、このサインが出現すると、40日前後のあいだに大きな下落局面が訪れることが多いとされていて、直近では5月10日に点灯してその後に株価が下落したことが記憶に新しいほか、昨年2月や10月の相場急落時にも、事前にこのヒンデンブルグ・オーメンが点灯していました。

 現時点では、過度に警戒しなくても良いかもしれませんが、少なくとも「いったん崩れると、相場の下げ足が早くなりそう」であることは常に頭の片隅に置いておいた方が良さそうです。

※次回の「テクニカル風林火山」は、8月6日(火)掲載予定です。