前回のコラムでお話しした資金管理の重要性。今回は、筆者が実際にどのような形で資金管理を行っているか、その実態を公開したいと思います。
筆者の資金管理の根本的考え方
筆者の資金管理に対しての根本的な考え方は、「攻めるべき時は攻め、守るべき時は守る」。メリハリのある投資で、守りをある程度重視しつつもより高い投資成果を目指す、というものです。
日本において、長期的にみて株価が右肩上がりの上昇を続ける、という相場はバブル崩壊をもって終了しました。そのため、買った銘柄が値下がりしようが保有を続ければ報われる、という考え方は今や通用しません。しかし、後から振り返ってみれば株価が右肩上がりの上昇をした、というものも数多く現れるはずです。
そこで、株価が上昇トレンドの銘柄を保有し、それが上昇トレンドである限り原則として保有、下降トレンドになったら売却する、という手法により、攻めと守りの期間を明確にしているのです。
具体的にどうやって資金管理をしているのか?
でも、上記の話は単に株価のトレンドに応じて売買をする、と言っているだけではないか、とご指摘される方もいらっしゃるかもしれません。確かにその通りなのですが、私はこの株価のトレンドに応じた売買を行うことで、自動的に資金管理ができる仕組みを作っているのです。
私は400銘柄の株価チャートを毎日ウォッチしていますが、この中には日本株の動向を見るためにのみウォッチしている銘柄も含まれているので、実際に投資対象とするのは200銘柄ほどです。
この200銘柄のうち、上昇トレンドにある銘柄のみに投資することで、自動的に資金管理が可能となります。
筆者が1銘柄当たりに投下する資金は、銘柄によって投資可能金額の0.3%~1%程度ですが、平均すると概ね0.5%程度になります。
したがって、200銘柄のうち、100銘柄が上昇トレンドの場合、100÷200=50%を株式に投資することになります。
200銘柄のうち160銘柄が上昇トレンドになれば80%に増加しますし、上昇トレンドの銘柄が200銘柄中20銘柄になれば、10%に減少することになります。
実際は相場環境に応じて多少アレンジしていますが、基本的にはこの考え方で実行しています。
ウォッチ銘柄選択の際のポイントは?
なお、上記の方法の場合、最大で保有銘柄数が200銘柄になりますが、個人投資家の方で200銘柄も保有するのは明らかに多すぎますので決して真似しないでください。保有する銘柄は最大でも40銘柄、できれば20銘柄ほどがマックスになるように調整するのが望ましいです。
また、ウォッチ銘柄は、私は東証1部の大型株から、マザーズ・ジャスダックの小型株まで、まんべんなくバランスよく配分しています。これは、できるだけ損益が平準化するように、という意図があります。
もし、東証1部大型株のみをウォッチ銘柄としていた場合、新興市場銘柄のみが軒並み上昇する相場となれば、それに全くといっていいほど乗ることができず、利益をあげることができなくなってしまうでしょう。その逆もしかりです。
ですから、「ほぼ全ての銘柄が上昇する相場」「東証1部大型株が中心の相場」「新興市場銘柄が中心の相場」のいずれも対応できるようにするため、ウォッチ銘柄は偏りのないようにしているつもりです。
「大型株のみ」「中小型株のみ」「成長株のみ」「割安株のみ」といった偏った銘柄選択にはならない方が良いと思います。
「ADA指数」で筆者のポジションの大きさや日々のポジション構築の変遷が分かる
本コラムの末尾にもURLを載せていますが、「公認会計士足立武志ブログ」では、筆者が日々投資可能資金のうちどの程度を実際に株式投資にあてているかを表す「ADA指数」を公表しています。
これを見れば、筆者がどのくらい日本株に強気かどうかを知ることができます。今年に入ってからは、概ね60%を超える水準で推移しています。筆者は投資可能資金がそれなりに膨らんでいるため、これを大きく減らさないよう、最大の強気でも80%前後としています。そこから考えると、60%超の水準というのは、結構強気である、といってよいと思います。
また、トランプ大統領当選の直前は、株価のダウンサイドリスクも大いに考えられたため、プラスマイナスゼロ前後までADA指数は低下していました。しかし、トランプ大統領当選により株価が上昇したため上昇トレンドになる個別銘柄も日々増加し、そうした銘柄を新規買いしていきました。その結果、トランプ大統領当選から10日ほどで、ADA指数はゼロから60%まで増加しました。筆者のような方法を取っていなかったら、完全に守りのポジションから、10日で強気のポジションを構築することはなかなか難しいと思います。
資金管理は個人投資家にのみ与えられた非常に大きな特権
機関投資家や、投資信託のファンドマネージャーの多くは、この資金管理が機動的にできません。原則として運用資金のほぼ全額を何らかに投資しなければいけませんし、どの金融資産(日本株、外国株、国内債券、外国債券など)にどのくらいのパーセンテージで資金を配分するかもあらかじめ決まっているからです。それらを変更するにしてもすぐにはできませんし、頻繁に変更することもできません。
それに対して、個人投資家であれば、「機動的な売買」が可能です。「今が買い時」と思えば、投資資金を一気に投下することもできますし、「ちょっと危なそう」と思ったら、すぐに保有株を売却して資金を回収し、キャッシュで温存することもできます。
そして、「買い時」とか「危なそう」という考えがどうも誤っていた、と思えば、買った株を売却したり、売却した株を買い直せばよいのです。
買った株を長期間保有し続けるという「バイ・アンド・ホールド戦略」は、個人投資家の特権である「機動的な売買」を自ら放棄しているようなものです。
個人投資家がリスクをコントロールするためには、株式への投資割合(裏を返せばキャッシュの割合)を高めたり低めたりすることが最も効果的です。でも、バイ・アンド・ホールド戦略は、株式への投資割合を変動させるようなことはしないため、リスクを全て抱え込むことになってしまいます。
筆者は、将来株価の上昇が期待できる銘柄を事前にしっかりと予測できる一握りの投資家の方であれば、バイ・アンド・ホールド戦略は有効だと思います。でも、それ以外の個人投資家の方にとっては、あまりお勧めすることはできません。
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