ネット通販セクターを楽観、デジタル広告部門は苦戦か

 BOCIは中国のネット通販銘柄の19年4-6月期決算が堅調と予想。中小都市部を中心とした競争激化で収益性がやや鈍ったものの、マス消費の底堅い伸びやオフラインから消費を奪い取り続けていること、広告収入の力強い伸びなどを楽観見通しの理由に挙げた。ただ、中国のデジタル広告市場の先行きに対しては引き続き慎重。マクロ経済の減速を背景とするオンライン広告需要の伸び悩みやショート動画アプリの普及に伴う広告在庫の増大が理由で、ソーシャルメディアやニュースポータル、動画プラットフォームを含む各種チャネルにおいて、ブランド/フィード広告の値下げ圧力が続くとの見方。ネット通販セクターに対して強気見通しを付与する半面、デジタル広告セクターに対しては先行き見通しを中立的とした。個別では、米NY上場のアリババ・グループ(BABA)、ナスダック上場のJDドットコム(JD)、シートリップ(CTRP)を選好している。

 国家統計局によれば、ネット通販のモノの流通総額(総売上高:GMV)は1-6月に前年同期比21.6%増と、1-3月の同21.0%増から加速した。BOCIはB2Cの主要カテゴリー(日用品や家電など)の売れ行きが5月から加速傾向に転じ、米中摩擦の緩和を受けたマス消費は底堅いとみている。19年下期については、小都市でのオフラインからの消費取り込み(アパレルや電子製品、家電など)や主要都市部での購入対象品目の拡大(日用品や生鮮食品など)を背景に、ネット通販のGMVの伸びが続くとの見方だ。ただ、中小都市では過去2年間に獲得した新規顧客の流出防止に向けたインターフェースの見直しや値下げといった各社の試行錯誤が続くとみる。また、中国のネット通販普及率はすでに高く(利用者数は19年末に7億8,000万人、ネットユーザー全体の約90%)、今後はフィード広告のアップグレードやソーシャルメディアとの連携、レコメンドのカスタマイズ化などを通じた購買頻度の引き上げが焦点になるとしている。

 BOCIは自動車やネットサービスといった主要分野のネット広告需要の減退や、ブランド/フィード広告の競争激化などを理由に、デジタル広告市場の先行きに対して慎重。19年1-3月にブランド/動画広告の料金が前年同期比20-30%、ソーシャル/フィード広告が同10-20%下落したと推定している。一方、ネット通販広告については、デジタル広告全体をアウトパフォームすると予想。その理由として、消費財などの広告需要の堅調や、効果測定が可能なネット広告向けの企業の予算増額を挙げている。

 BOCIはアリババ、JDドットコム、シートリップを中国ネットセクターのトップピックとした。アリババに関しては国内小売プラットフォームにおける売り上げ増や新規事業の赤字が前期並みにとどまる見通しなどから、20年度第1四半期(4-6月)のコアEBITDAが前年同期比23%の伸びを示すと予想。さらに、香港証取へのセカンダリー上場観測が、バリュエーションの押し上げにつながる可能性を指摘している。