7月8日~12日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反発。中東の地政学的リスクから底堅さのあるなか、米国の原油在庫が予想以上の大幅な減少となり、需給改善への期待が高まった。天候要因からの警戒感もあり、米国の供給過剰感は解消に向かうとの見方が多い。

 また、米国の利下げ観測が強まったことで、株高やドル安も原油相場上昇の追い風となった。WTI期近8月限は一時60.94ドルまで上昇し、期近ベースとしては5月下旬以来、約1ヶ月半ぶりの高値を示現した。

 イランをめぐる不安が、引き続き原油相場の下値を支えている。イランはウラン濃縮活動を再開、ウラン濃縮度は核合意で定められた上限の3.67%を上回り、西側諸国の出方次第では20%への引き上げも検討するという。上限超えは国際原子力機関(IAEA)も確認。

 これに対して米国側は軍事行動も辞さない構えを示すなど、イランをめぐる軍事的緊張が高まっており、それに伴い原油輸送障害が懸念され、原油相場の下値を支えている。

 中東の地政学的リスクが燻るなか、米国の原油在庫の取り崩しが進んだ。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は前週から950万バレルほど減少した。事前予想は310万バレルの減少で、予想を大幅に上回る減少となった。輸入量が減少したことが在庫減少の主たる要因。

 これで4週連続の減少となり、この間で2600万バレル以上と5.5%相当の取り崩し。WTIの受渡拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫も減少しており、米国内の原油供給の余剰感が緩和するとの見方が強まった。

 また、このタイミングにハリケーンリスクが浮上したことも、需給改善への期待を高める一因となった。メキシコ湾内に発生している熱帯低気圧「バリー」が、今後熱帯暴風雨へと発達し、さらに勢力を強めてハリケーンとなったルイジアナ州に上陸するとの予報が出たため。

 大手石油会社は洋上のプラットフォームから従業員を避難。石油関連施設が林立する地帯への上陸予報だけに、原油は生産減、輸入減による需給緩和感の後退が期待された。

 米国の利下げの可能性が一段と高まったことで、リスク選好ムードが強まったことも原油相場を押し上げた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長のハト派発言を受けて、利下げ観測が強まった。

 前々週末の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が予想以上に増加したことで、利下げ観測が幾分後退していたが、同議長は議会証言で、中国との貿易戦争のリスクを指摘、また好調だった雇用統計を受けても当局の見通しに変更はないとの見解を示した。

 同発言を受け、今月末の米連邦公開市場員会(FOMC)での利下げの可能性が高まり、株式市場は買いが先行、外為市場ではドルが売られる展開に。投資家心理の改善からリスクオンへの機運が高まり、この流れはリスク資産の一角とされる原油相場にも及んだ。

 これら多くの強材料を手掛かりに原油相場は値を伸ばした。週末にハリケーンリスクが後退したことでやや値を削っているが、リスク選好ムードにあり、再度切り返すようだと踏み(売り方の損失確定の買戻し)を巻き込んでの上げ幅拡大も十分あり得る。イランと米国を含む西側諸国との関係に改善の兆候は見られず、軍事的な緊張の高まりもしばし続く公算大。

 ただし、米国の原油在庫は減少傾向にあるとはいえ、前年同期比では13%以上在庫が高く、これは今年一番。在庫水準だけ取り上げると、緩和感が増している点には注意したい。

 
 

今週の予想

  • WTI    やや強め 58.00-63.00ドル
  • BRENT    やや強め 64.00-69.00ドル