NYダウは最高値更新でも、日本株の上値重い

 先週(7月8~12日)の日経平均は1週間で61円下落し、2万1,685円となりました。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、10日の議会証言で、7月30-31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げを事実上予告した形となりました。それを好感して、NYダウ平均株価は、11・12日に2日連続で史上最高値を更新しました。ところが、利下げが何回も続くとドル安(円高)圧力が高まることへの警戒感があることから、日本株は上値の重いままでした。

NYダウ・日経平均・上海総合株価指数の動き比較:2017年末~2019年7月12日、上海総合のみ7月15日まで

出所:2017年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成

 企業業績への不安も、先週の日経平均の上値を抑えました。7月11日に安川電機(6560)が2020年2月期の第1四半期(2019年3-5月期)の決算を発表しましたが、純利益は前年同期比▲70%の減益でした。受注も▲17%と減少しており、業績低迷が長引くことが懸念されました。安川電機は、中国関連・設備投資関連の代表銘柄であるため、三菱電機・ファナックなど、中国関連・設備投資関連全般に、日本株が売られる要因となりました。

 日本政府が、半導体製造などに使われる韓国向けの化学品3品について、安全保障上の理由から輸出管理を強化したことも、不安材料となっています。韓国の半導体大手が一時的に生産停止に陥る可能性も出ており、短期的には、半導体産業の下押し材料となる可能性があります。

パウエルFRB議長は、7月の利下げを事実上、予告

 パウエルFRB議長は、7月10日の議会証言で「利下げの必要が高まっている」と明言しました。さらに、同日発表された6月のFOMC議事要旨には、「景気の不透明さが続けば、金融緩和が近く正当化される」と明記されていました。これで、事実上、7月30~31日のFOMCでの利下げが予告されたのと同然となりました。

 ただし、利下げの幅については、市場の見方は分かれています。0.25%との見方が大半ですが、一部に0.50%の利下げを見込む向きもあります。

 米国の金融市場を見ると、長短金利の逆転が続いており、逆転を解消するには、0.25%の幅の利下げが今後2~3回必要な状態となっています。

米長短金利(10年・2年・3カ月金利)の推移:2018年1月2日~2019年7月12日

出所:楽天証券経済研究所が作成

日本株は買い場の判断を継続

 これから本格化する4-6月決算では、中国関連・設備投資関連株を中心に、業績不振が続いていることが確認される見込みです。米中貿易戦争・ハイテク戦争の影響が続いています。

 ただし、日本株が買い場との見方は変わりません。世界景気は2019年に悪化した後、2020年に回復すると予想しているからです。今の世界景気は米中対立によって、人為的に抑圧されている状態と判断しています。何らかの形で、米中が休戦するならば、押さえつけられているAI(人口知能)・IoT(モノのインターネット化)・5G(第5世代移動体通信)・半導体などの投資が回復に向かうと判断しています。

 東証一部の平均PER(株価収益率)が約13.7倍、平均配当利回りが約2.5%と、日本株が株式指標から見て割安なことも、日本株の投資魅力を高めています。業績はやや弱含んでいますが、それでも、足元、増配や自社株買いを発表する日本企業が増えています。実質無借金の企業がふえていることからもわかりますが、日本企業の財務内容が改善していることが、株主への利益配分を増やす動きにつながっています。
 

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