※この記事は2019年3月15日に東証マネ部!サイトで公開されたものです。

 継続雇用年齢の延長や年金受給開始年齢を70歳超まで引き上げるなどの制度改革案が政府で検討されている中、老後も、現役の頃と変わらない生活水準を保つためには、年金だけでは足りない…と感じているものの、若いうちは現実的に捉えられないもの。老後に向けた資産運用をしないまま50代に突入し、急激に焦り始めるという人も少なくないだろう。

 そこで、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに、50代からでも始められる老後資金の貯め方を教えてもらった。

iDeCo&つみたてNISAでバランスファンドを運用

「大前提として、投資以外の方法での老後資金形成は、かなり難しいです。定期預金の利率は平均0.01%、個人向け国債でも0.05%なので、資産を増やすことはほぼ不可能。自営業やフリーランス、小規模な会社の役員などであれば予定利率1%程度で、かつ掛け金が全額所得控除になる小規模企業共済に加入できますが、会社員は入れません」(高山さん・以下同)

 つまり、50代からでも投資を始めることが、老後資金を確保する一つの方法といえるわけだ。しかし、個別株や投資信託を買おうにも、情報を集めたり、売買のタイミングを見計らったりと、難しそうに感じる人は多いだろう。

「投資に抵抗がある人でも、iDeCoやつみたてNISAなら始めやすいでしょう。投資未経験でも、国内外の株式や債券、不動産などで構成されたバランス型ファンドを選べば、安定的な運用が期待できます。つみたてNISAの対象商品は、金融庁がふるいにかけた信頼できる投資信託に限られているので、初心者でも選びやすいですよ」

 高山さん曰く、「ここ3年のバランス型ファンドを見ると、年5%以上のリターン(基準価額が期間中にどれだけ上昇(下落))を出しているものもある」とのこと。バランスファンドに投資をすることで、世界経済の成長の恩恵を受けることができる。金融庁が発表しているデータによると、「世界経済の成長率は4~5%で推移している」とのこと。バランスファンドの利回りの裏付けの一つといえるだろう。

 例えば、50歳から定年の65歳までの15年間、毎月3万円を貯金した場合、総額は540万円だが、年5%で運用すると800万円程度に増やすことができる。

 ちなみに、ファンド選びの指標として注目すべきは、モーニングスター社が各商品につけている星の数。4つ以上であれば、バランスの取れた運用が期待できる。5年間のリターン推移を見て、安定した運用ができているかどうかが、見極めの基準となる。

「iDeCoやつみたてNISAは、中長期的な運用を前提とした制度です。分配金を出さない再投資タイプの投資信託であれば、複利効果を発揮し、効率よく資金を増やしていける可能性があります。特にiDeCoは、60歳までしか掛金を拠出できないので、可能な限り早く始めた方がよさそうですね」

iDeCo利用で所得税&住民税が控除される

 iDeCoやつみたてNISAは、非課税で運用できるところも大きなポイントだ。増えた資産を受け取る際に税制優遇が適用になったり、税金がかからずにそのまま受け取れたりする。

「iDeCoは、所得税や住民税が控除されるメリットもあるので、55歳を超えてから加入する人もいます。一般的に年収400万円とすると、所得税率は5%なので、もしiDeCoに毎月2万円拠出したら、年間24万円の5%が所得税から控除され、1万2000円戻ってくることになります。住民税は年収にかかわらず税率は10%。24万円の10%で2万4000円なので、所得税と合計すると、年間3万6000円の税金が戻ってきます」

 拠出している金額が増えれば、その分控除額も上がり、年収500万円を超えていれば所得税率が10%になることもある。年収が高く、拠出額が多い人ほど、iDeCoの恩恵を受けやすいのだ。掛け金を変更するなどして、控除された分を、さらにiDeCoに拠出してもいいだろう。

「生活費に余裕がある人は、iDeCoとつみたてNISAを併用してもいいでしょう。年収が多い人は、iDeCoに多めに入れた方が税制優遇のメリットが大きくなります。逆に、会社員で年収が少ない人は、iDeCoよりは年間拠出の上限額が大きいつみたてNISAに寄せた方がいいかもしれません」

自助努力で資産を確保するための制度

 現状、iDeCoは60歳まで、つみたてNISAは最大20年間という運用期限が設けられているが、制度が変わる可能性は大いにあるという。

「近い将来、年金受給開始年齢を70歳超まで引き上げられる可能性もありますし、iDeCoも65歳ぐらいまでできるようになると思います。つみたてNISAも、延長されるかもしれません。イギリスにもNISA制度がありますが、運用期限が無期限なので、日本でも検討してほしいですね」

 急激に少子高齢化が進んでいる今、年金額が上がることはほぼ期待できず、医療費なども自己負担の割合は増していきそうだ。その中で国が用意したものが、iDeCoやつみたてNISAといった制度なのだ。

「iDeCoやNISAには『税制優遇の箱を作るから、自助努力で資金を確保してください』という、国からのメッセージが込められているんです。50代からでも遅くはないので、資産運用を考えてみてください」

 自己負担の割合が増していくであろう老後を見据え、ただ貯めるのではなく、資産を増やす方法を検討した方がよさそうだ。

(有竹亮介/verb)

※この記事は2019年3月15日に東証マネ部!サイトで公開されたものです。

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