「老後2,000万円問題」で投資意識が高まる?でも初心者向けの注意あり!
「老後2,000万円問題」の影響はいろんなところに出ています。好意的に捉えられている影響では、「投資に対する若年層の興味関心が高まったようだ」という報道などがあります。
私も「誰も教えてくれなかったお金の常識」を若年層にも意識させたものと考えています。
現在、米国の高齢者の資産が20年前と比べて大きく増えています。
この理由は、老後資金の自助に対応させるべく、401(k)(米国の確定拠出型個人年金制度の一つ)プランやIRA(Individual Retirement Account=米国の個人年金制度の一つ)などの「器」を整えたことです。
日本でも今後、現役世代の多くが「老後に向けて資産を積み立て始める」という行動につながれば、数十年後には老後の不安は大きく減少していることになるはずです。
今回の問題から、老後の不安を覚えて資産形成をスタートしようとする若年層のために、4つのアドバイスをまとめてみたいと思います。
アドバイス1:少額から始めればいい
まず第1に考えるべきは「投資を少額からスタートしよう」ということです。
投資の経験もなく、知識もまだ十分ではない人でも、中長期的な経済の成長を資産形成のエンジンとして組み入れることを決断したことは、とても素晴らしいことです。
ただし、投資スタートで無理をして、定期預金からいきなり大金を投じる必要はありません。定期預金のお金は定期預金のままでいいのです。始めからから大きなお金にせず、ぜひ「少額からスタート」してください。
万が一、投資した資産の時価が大きく値動きしたとしても、すでに保有している預貯金を残しておくことで、「資産全体」でリスクを抑えることができます。
しかし、いきなり「100万円で投資」をスタートした場合、あなたの財産の大半が投資リスクにさらされることになります。例えば、投資スタートした時点で、世界的な経済ショックなどで市場に値下がりが起きてしまったら、いきなり含み損が30万円になるかもしれません。
でも、「100万円は定期預金」に加えて、「月1万円の積立少額投資」であれば、スタート時点で市場が急落しても、投資額が少ないことで、精神的にもゆとりを持つこともできます。
そして、この経験は後に投資額が増えたとき、値動きに一喜一憂せず、あなたを落ち着かせてくれる力となるはずです。スタートは少額からでOKです。
アドバイス2:少額で積み立てをするといい
若年層の老後資産形成については、毎月一定額を投資に投じる積み立て投資のスタイルを強くオススメします。
投資のイメージというと、「まとまったお金をドカンと入れて、売買だけで増やす」ものと考える人がいるかもしれませんが、老後資産形成を長期で行うなら、これはあまり得策ではありません。
むしろ投資商品を購入するタイミングを考えることを意識せず、自動で指定日に引き落としされ、投資信託が買い付けられるような仕組みにしておくことをオススメします。積み立ての定期預金をするような感覚で行えば十分です。
一方で投資なのに、「ちょっとずつしか増えないじゃないか」と感じるかもしれませんが、むしろ、ちょっとずつ、基本的には取り崩さないお金を積み上げていくほうが、最終的に資産は増えます。運用益よりも元本をコツコツ上積みすることを意識するのです。
あなたが50歳より前なら、資産形成を行う時間はまだまだたっぷりあります。特に20~30代であれば、毎月1万円程度であっても十分に資産をつくることができるのです。家計を見直しするなどして、無理なく積立投資を続けられる金額に設定することのほうが重要です。「家計簿をつけて家計を総点検することが運用のスタートライン」と考えていいでしょう。
アドバイス3:投資が分からなければ、分散投資された投資信託を一つ買えばいい
投資デビューで悩む人ほど、投資に多くのものを期待しているように思います。それは高すぎる利回りだったりしますが、投資に過度な期待リターンを求めないほうがいいのです。インフレに数%勝てる(しかしそれは大事なことです)くらいでいいのです。
そして、現在の一番買い時の投資対象は何か考えたり、売買タイミングを始終悩んだり、相場の急落時に資産が全損する可能性を抱えて、常にウォッチし続けなければならないような投資をする必要はありません。
こういった投資はあなたの人生でもっとも「稼ぐ」チャネルである仕事に集中できなくなり、プライベートの時間を侵食することになります。投資が、家庭内不和や睡眠不足につがなるようなら、やり方が間違っています。
ところで、何から投資をスタートすればいいか、決めかねているなら、「つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で購入できる商品」の中から「国内外に分散投資した投資信託」を選ぶといいでしょう。
つみたてNISAで販売されている商品は、つみたてNISA口座で買えるのはもちろんですが、つみたてNISAでなくても購入することができます。とにかく手数料が低いものが多く、商品選びの一次選考をパスしているようなイメージなので、これを活用してみましょう。
また、特定の投資対象を選ぶこと自体が難しいことですから、長い目で見て世界の経済は成長すると思えるのなら、一つ持つだけで分散投資がはかられるバランス型の投資信託を保有すればいいと思います(思えないなら投資はしないほうがよいのです)。
もし今後、投資信託で「これは」というイメージをつかめるようになったら、銘柄の見直しも可能です。だから、まずはシンプルで楽ちんな投資が行える選択肢、つみたてNISAから始めてみてはどうでしょうか。
アドバイス4:株価が下がっても、あせらず長く続ければいい
今回の「老後2,000万円必要」騒動を評して、「インデックスファンド投資をすれば必ずもうかると思わせたがっているのではないか」と、いぶかるコメントを時々見かけますが、疑ってみる視点や発想は悪いものではありません。
投資は、短期的には値下がりも値上がりもありえます。これは事実です。
私のiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)口座も、リーマン・ショック直後は、かなりのダメージを受けました。
しかし、短期的な値下がりにあせって売ることだけは避けてください。むしろ短期的な値下がりであせらずに済むように、これまでのアドバイス「少額からスタート」「少額積み立て投資」「分散投資」をオススメしています。これにより、金額ベースでもメンタル面でも、下げ局面のダメージは軽減されるからです。
そして、経済成長を信じられるのであれば、むしろ一時的な下落時期は「保有資産は元本割れ」するけれど、「新規の購入資金は安く買い付けることができる」ことに意義があります。保有資産の含み損は手放すことなく中長期保有できるのなら、回復局面で自然に消えていくので心配ありません。
私自身のiDeCo口座は、リーマン・ショック直後は30%くらいの含み損を抱えたこともありましたが、一度も売買をしたことはありません。ただ、毎月の追加購入だけを自動的にしていたら、経済が回復してくれたので、勝手に含み損はゼロになり、気がつけば元本の50%以上に増えていました。
若年層ほどぜひ、「下がっても売らない」「下がっても積立投資は続ける」を意識してみてください。あなたの資産は「しばらく下がって、そのあと回復」したときに大きく増えることになるはずです。
悩んだら、基本iDeCoファースト、つみたてNISAセカンドで
さて、ここまでの4つのアドバイスを、あなたが聞いていただけるのであれば、最後に4つのアドバイスを実行する「器」を二つ紹介しておきましょう。
一つはiDeCo、もう一つはつみたてNISAです。
iDeCoは年27.6万円(企業年金のない会社員の場合。公務員と企業年金のある会社員は年14.4万円)、つみたてNISAは年40万円を投資枠上限としています。そして、最初にまとめて100万円入金するようなスタートはできません。どちらも定期的な積み立てを行うことを原則としています。iDeCoは原則として毎月一度、つみたてNISAは自分で決めたスケジュールに従います(月イチ購入にしておくと管理は楽だと思います)。
そしてつみたてNISAとiDeCoの対象商品には投資信託が含まれており、低コストで運用されるバランス型の投資信託を選ぶことができるはずです。
これはつまり「少額からスタート」「少額積み立て」「バランス型の投資信託で運用」というアドバイスを実行することのできる器ということです。
さらに実行することは「下がっても売らずに続ける」ことですが、これは何も手を出さず、自動引き落としを続けるだけで実現できます。
この二つの器を使うことができれば、4つのアドバイスはすべてを満たすことができます。国もこれをねらってiDeCoとつみたてNISAという「器」を用意していると言えます。
そして、この二つの「器」は税制優遇というメリットを受け取ることができます。国が税収減の可能性を踏まえてもなお、国民に老後資産形成を促すというのですから、乗らない手はありません。そして税収減は、そのままあなたの運用益として上乗せされるわけです。
うまい話にだまされないようにご注意を
ところで、「老後2,000万円必要」のキーワードがあまりにも普及してしまったことで懸念するのは、年金不安をあおりつつ「安全・確実・高利回り」と言葉巧みな、うまい話が増える可能性があることです。
投資においては、このようなうまい話は無いということを念頭において、その裏側にはリスクがあるという点を理解しておくことが必要です。
「まとまった額を最初に入金したほうが有利」とか「特定の投資対象が今は有利」とか「あなただけに投資売買スキルを教える」などと言う人にあったら、すぐに距離を置いてください。
あなたの未来を守るためのお金が、無知によって消えてしまうのは悲しいことです。絶対にだまされないようにしてください。
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