米雇用統計で利下げ期待はほぼ消滅
G20(主要20カ国・地域)首脳会議、米中首脳会談、米朝電撃首脳会談とビッグイベントが終わったことから、マーケットの焦点は、米国金融政策に移りました。
先週5日(金)に発表された米雇用統計。平均賃金は伸び悩みましたが、NFP(非農業者部門雇用者数)が予想を大きく上回ったため、結果的には金利高、ドル高の反応となり、ドル/円は108円半ばで先週を終えました。
この雇用統計を受けて、米国経済はしっかりしているのではないかとの見方からFRB(米連邦準備制度理事会)の7月の利下げ幅0.50%の期待はほぼ消滅しました。しかし、雇用は堅調ですが、他の経済指標は弱い数字もあり、物価も低水準のため0.25%の利下げ期待は根強く残っているようです。
今週のドル/円の動き、思惑は?
ドル/円は今週に入っても円安に進んでいます。
先週末から今週にかけて円安に動いているのは、大幅利下げがなくなった失望感によって、一時1ドル=107円割れとなった水準から戻しているとみれば分かりやすいかもしれません。しかし、大きく円安に戻らないのは、大幅利下げはなくとも利下げはあるだろうとの期待が残っているためであり、110円台を中心とした値動きから108円台を中心とした値動きへと水準が下がった状態が続いているのは、このような背景があると考えられます。
パウエルFRB議長の議会証言に注目
今月30~31日に開催されるFOMCでは利下げが決定されるのでしょうか。そのヒントとなるのが10~11日のパウエルFRB議長の議会証言(※)です。
(※)議会証言とは、FRB議長が年2回、2月と7月に上院の銀行委員会と下院の金融委員会にて金融政策と経済状況について証言すること。議会証言はハンフリー・ホーキンス法(インフレ抑制などを目的とした法律。2000年に失効)によって定められていたが、法律失効後も慣例により継続されている。今年7月の議会証言では、10日に下院の金融委員会で、11日に上院の銀行委員会で証言。議会証言でFRBの経済見通しや今後の政策方針が明らかになるため、市場でも注目されている。2日間の議会証言はほぼ同じ内容であることが多いため、初日の議会証言の注目度が高い。
実はハンフリー・ホーキンス法では、議会証言と同時に議会へ報告書の提出も義務付けられています。従って議会証言では、大筋で金融政策報告書から外れることは証言しないだろうと言われています。
そしてこの金融政策報告書は先週5日に公表されました。この金融政策報告書では、6月のFOMCの声明文の文言が繰り返されており、「景気見通しを巡る不確実性が増大しており、経済成長への持続へ適切な行動をとる」と明記されています。従って、議会証言でも「適切な行動をとる」との姿勢を強調することが予想されます。
利下げ時期は?利下げ幅は?
金融市場では、「適切な行動をとる」との姿勢が利下げを示唆していると捉えていますが、6月のFOMCの声明文でも、5日の金融政策報告書でも時期は明示されていません。マーケットで7月利下げ期待が高まっているのは、6月のFOMC後の記者会見でパウエル議長が「金融緩和の必要性が高まっている」と主張したことが背景にあります。
10日の議会証言で金融政策報告書の大筋の域を出ないと思われますが、パウエル議長は果たして、7月の利下げを示唆する証言をするのでしょうか。利下げ示唆の場合でも大幅利下げではなく、マーケットの期待通り、段階的な利下げを示唆するのかどうかが注目です。
7月利下げなしならマーケットを警戒
議会証言で利下げを示唆しても、7月利下げのニュアンスが出ない場合は、マーケットは失望し大きく反応することが予想されるため、警戒しておく必要があります。しかし、株安、金利高、ドル高の反応は一時的な動きと予想されます。なぜならマーケットは、30~31日のFOMCでの結果を見極めるまでは利下げ期待を後退させることはないと考えられるからです。
30~31日のFOMCで、もし、利下げがない場合、ドル/円は110円台を中心とした値動きに戻すシナリオが想定されます。しかし、米中貿易協議が進展していない環境下では「経済成長への持続へ適切な行動をとる」との方針は変わらないことが予想されるため、8月以降の利下げ期待がすぐに浮上し、110円台まで戻す勢いが削がれることも予想されます。
また、8月以降の利下げ期待は、7月利下げがあっても浮上することが予想され、利下げという材料出尽くしから円安に戻しても、一時的な反応と予想されます。
5日の金融政策報告書の公表、10~11日の議会証言、30~31日のFOMCと金融政策に関わるイベントが続き、マーケットは一喜一憂しながら上下に振れることが予想されます。
ここに紹介したのは一つのシナリオです。皆さんも注目ポイントに留意しながら、シナリオを想定してみてください。
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