ロボアドバイザーは「運用手法は年金運用スタイルで長期投資(運用期間は10年、20年、あるいはそれ以上)が前提」と前回書きました。今回は、ロボアドバイザーの運用手法について詳しく書きたいと思います。
ロボアドバイザーはバランス運用
ロボアドバイザーの運用手法は、一般的には、年金運用スタイルの「バランス運用」です。例外もありますが、米国でも日本でもほとんどのロボアドバイザーは、年金運用の手法。つまり、運用期間は長期(通常10年以上)、株式等のリスク性資産と債券等の安全資産を組み合わせ、価格変動を抑制しながら、安定したリターンの獲得を目指した運用を行います。
ロボアドバイザーは、ネットを使い、徹底的にシステム化をすることで、誰でも少額から投資できる資産形成のツールとしてサービスを提供しています。その点を考えると、ロボアドバイザーによる年金運用スタイルのバランス運用は、理にかなっていると思います。
なぜ長期投資に向いているのか
ロボアドバイザーの運用手法の背景には、米国の現代投資理論というものがあります。この理論では、マーケットタイミングを計った短期売買は、一時的に上手くいっても、何度も繰り返しているうちに大失敗をして、結局通算では損をする可能性が高いとされ、さらにタイミングを計って上手く当たったとしても、それはまぐれ当たりに過ぎず、そもそもタイミングを当てることはできないものとされています。
この現代投資理論では、さまざまな資産に分散したポートフォリオで投資を行い、市場が上げ下げしても資産配分を維持し、ひたすら長期間、投資を続けるのがベストな運用手法とされています。これはまさに年金の運用スタイルです。
筆者はロボアドバイザーの運用責任者を務めていますが、ロボアドバイザーがヘッジファンドのように短期売買で常時プラスリターンを狙う運用を行っていると勘違いされることがときどきあります。日々ディーリングをして、プラスリターンを上げ、収益を上げる運用と間違われるわけですが、そもそもベースにしている投資理論がそのような短期売買は有効ではないとしています。それに、短期売買は、投資ではなく投機です。投機で長期の資産形成を図るというのは、リスクが高く、危険であり、お金に余裕がある富裕層でなければやるべきではありません。
ロボアドバイザーは、誰でも長期の資産形成のために利用できることを目指して作られたサービスですから、年金運用スタイルの長期投資でじっくり運用していくのです。
ロボアドバイザーはAIで運用しているの?
ロボアドバイザーは、AIで運用されているという説明をメディアや雑誌などで見ることがあります。AIは、日本語では人工知能と訳されますが、ロボアドバイザーは人工知能で運用されているのでしょうか。
これに対する答えは、AIとは何かという考え方により変わってきます。世間一般的には、AIで運用されているというと、人間ではなく、ロボットやシステムが自らポートフォリオを考え、投資判断を下し、運用しているというイメージだと思います。このイメージから言うと、ロボアドバイザーはAIでは運用されていないと筆者は考えます。
現在のロボアドバイザーは、システムが概ね自動で運用しているのは確かですが、あくまで人間が作ったルールに従って動いており、人間がマニュアルでやっていた作業を自動化したに過ぎません。ロボットやシステムが自律的に考えたり、学習したりしながら、運用しているわけではないのです。
直接人間が関わらず「ただ自動的に資産が運用されていること」をAIが運用しているとするのであれば話は別ですが、AIを世間のイメージどおりのものとするならば、現時点ではロボアドバイザーはAIでは運用していないことになると思います。
今回、ロボアドバイザーの運用手法は、年金運用スタイルのバランス用と書きましたが、ここで投資信託のバランスファンドと何が違うのかという疑問がわくと思います。次回は、ロボアドバイザーと投資信託の違いについて書いていきます。
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