米中首脳会談後のドル/円は伸び鈍く
世界中が注目していた米中首脳会談は、追加関税見送り、協議継続と、予想通りの結果となりましたが、ファーウェイに対する部品販売を認めたことや、米朝の電撃首脳会談を受けて、8日(月)早朝からドル買い、円安方向で跳ね上がる展開となりました。
しかし、午後に入ると会談への期待からドル高、円安の動きを示していたため、108円台半ばで利食いや値頃感から押し戻されている状況となりました。週明けの東京株式市場は大幅な上昇となりましたが、ドル/円はその株高の中でも伸びが鈍い動きとなりました。
米中貿易問題は協議継続という形で一時休戦となりましたが、貿易問題が解決したわけではなく、むしろ長期化することが確認されたという意味で、週明けのマーケットのご祝儀相場は一時的な動きになる可能性があります。米朝首脳会談も協議再開が確認されただけであり、サプライズ会談の消化一巡後は目新しいものがないため、材料としては消化されたようです。
一時的な動きかどうかを確認するためには、週明けに跳ね上がったドル/円やクロス円の高値水準を今週の相場の中で再び抜け切れるかどうかがポイントになります。
ドル/円は108.50円近辺、ユーロ/円は123.30円近辺、豪ドル/円では76.20円近辺がその注目ポイントです。
もし、これらの相場ポイントを抜け切れなければ、再びこう着相場となり、市場はFRB(米連邦準備制度理事会)ら中央銀行の金融政策や、米国や中国の経済指標に焦点が移ることが予想されます。
7月FOMCで利下げは米中の経済統計次第
6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では利下げが示唆されましたが、その後、前のめりになっているマーケットを冷やすかのように、大幅利下げ期待をけん制する発言が出ました。
しかし、依然マーケットの7月利下げ観測は強いものがあります。7月30~31日のFOMCで利下げがなかった場合、あるいは根強い期待のある0.5%利下げがなかった場合、失望感から株は急落するかもしれませんが、すぐに次回への利下げ期待が高まり、急落は一時的な反応になる可能性もあります。
また、年内の数回の利下げ期待が続けば、ドル/円の売り圧力が継続されることが予想されます。
FRBの利下げ姿勢は、今後の米中の経済統計によって左右されます。米国の1-3月期GDP(国内総生産)成長率は+3.1%でしたが、アトランタ連銀が公表する4-6月期GDP予想は+1.5%(7月1日時点、6月18日時点では+2.0%予想)、ニューヨーク連銀が予想する4-6月期GDPは+1.3%(6月28日時点)と、前四半期よりも減速する予想となっています。減速感がはっきりしてくればくるほど利下げ期待は高まります。
また、今回の米中首脳会談で3,000億ドルへの追加関税は見送られましたが、5月10日に発動された2,000億ドルの10%から25%への関税引き上げの悪影響を、中国のファンダメンタルズが吸収したかどうかはまだ分からない状況です。今後の経済統計に反映されてくる可能性があります。
米大統領選は実質スタート
今回の一連のトランプ大統領の動向を見ていると、いよいよ米大統領選挙が始まったという印象を強く感じました。大統領選をにらみ、今後もトランプ大統領のパフォーマンスが顕著になることが予想されます。
ドル/円は、トランプ大統領のパフォーマンスとFRBの金融政策に大きく左右されることが予想されます。今回の米中首脳会談や米朝電撃会談は円安の材料となるパフォーマンスでしたが、もし、円高の材料となるパフォーマンスと利下げのタイミングが重なった時は円高が加速することが予想されるため、警戒する必要があります。
想定されるシナリオとしては、参議院選挙(7月21日)後に始まるであろう日米通商協議で為替に圧力をかけるパフォーマンスを演じ、同じようなタイミングでFRBが利下げを行った場合(7月30~31日)、あるいは月末に向けてイランとの対立をあおるようなパフォーマンスを激しく演じ、FRBの利下げとタイミングが合った場合などが考えられます。
均衡為替レートは107円台
先月、日本経済新聞社と日本経済研究センターが算出した「均衡為替レート」を、日経新聞が紹介していました。「均衡為替レート」とは、国内外の経済実態を映すさまざまなマクロ経済指標から推計した理論値です。外国為替相場は長い目で見れば経済のファンダメンタルズで決まるという考え方から算出されています。
ドル/円相場の均衡レートは、直近の2019年1~3月時点で1ドル=107.20円とのことです。同期間の平均110円よりも約3%の円高水準となっています。そして、米国が利下げ局面に入ると105円台が妥当になるとも指摘しています。
年初に見た1ドル=1105円割れが再び視野に入ってきたかもしれません。
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