8月には、株主優待を得る権利が確定する「優待銘柄」が103あります。9月「優待銘柄」は414あります。8~9月は合わせて517とたくさんの優待銘柄があり、優待取りが話題になります。今日は、読者から質問の多い、株主優待銘柄の買いタイミングについて、解説します。

(1)株主優待制度とは

 日本には、世界でも珍しい「株主優待」という制度があります。上場企業が株主に感謝して贈り物をする制度です。上場企業が株主に、お中元やお歳暮を贈るようなものです。
株主には本来、配当金を支払うことで利益還元するのが筋です。ところが、日本の個人株主の一部に、お金(配当金)をもらう以上に、贈り物(株主優待)を喜ぶ傾向があることから、個人株主を増やしたい上場企業は、積極的に優待を実施しています。

 小口の個人投資家を優遇し、大口の機関投資家に不利な内容となっていることが多いので、機関投資家には、株主優待制度に反対しているところがあります。ただし、小口で投資する個人投資家には、ありがたい制度ですので、積極的に活用したら良いと思います。配当金をもらった上にさらに優待がもらえると、お得感があります。

(2)8月・9月は優待銘柄が多い

 8~9月は、2~3月と同様、優待の権利が確定する銘柄が多く、優待取りが話題になる時期です。

「権利確定月」別の優待銘柄数:2019年7月2日現在

出所:楽天証券「株主優待検索」

(3)7月16日約定分から、受渡日までの日数が1営業日短縮され、2営業日後に。7~9月の権利付き最終日に注意

 7月16日(火)約定分から、受渡日までの日数が2営業日に短縮されます。7月12日(金)通常取引での約定までは、3営業日のままです。

 何を言っているか、意味がわからない方のために、簡単に言葉の説明をします。

(約定日)=株の売買をする日
(受渡日)=株の買い手が株主になる日、株の売り手が株主でなくなる日
(営業日)=証券取引所が開いている日。土曜日、日曜日、祭日は含まれない

 株を買ったら、すぐに株主になれると思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。株の売買結果に基づいて株主名簿が書き換えられるまでに、これまでは3営業日かかっていました。ただし、7月16日以降は、2営業日で済むようになります。

 その結果、7月末、8月末、9月末に優待の権利が確定する銘柄の、権利付き最終日は、以下の通りとなります。従来よりも、1営業日だけ後ろになります。

2019年7月末基準の優待取りの権利付き最終日

2019年8月末基準の優待取りの権利付き最終日

2019年9月末基準の優待取りの権利付き最終日

出所:楽天証券が作成
 2019年9月末(9月30日・月曜日)に配当金や優待の権利を得る銘柄を例に、上の表を説明します。9月30日に株主名簿に掲載されていないと、9月末基準の配当金や優待を得る権利は得られません。

 9月30日に株主名簿に掲載されるためには、その2営業日前の9月26日(木)までに株を買う必要があります。そうすると、9月末の株主に与えられる配当金や株主優待を得る権利が得られます。

 気をつけなければならないのは、9月27日(金)に買っても、9月末基準の配当金や株主優待を受け取る権利は得られないことです。9月27日を「権利落ち日」といいます。9月27日に株を買った場合、株主名簿に掲載されるのは10月1日(火)となります。9月末にはまだ株主名簿に掲載されていませんので、9月末基準の配当や株主優待は得られません。

(4)株主優待が魅力的な8~9月の優待銘柄を、権利付き最終日に買うのは、有利か?

 買ってすぐに株主優待や配当金を受け取る権利が確定するので「お得」に感じる人が多いようです。そのため、人気の優待銘柄では、権利付き最終日に向けて、権利取りの買いが増えます。

 ただし、現実には、権利付き最終日の直前に買って「お得」とは限りません。かえって、損なこともあります。権利付き最終日の買いが「お得」か「損」かは、直前の株価の動きによって決まります。

 人気の優待銘柄は、権利付き最終日に向けて、権利取りの買いで大きく上昇することがあります。その場合、権利落ち日に株価が大きく下がる可能性が高くなります。配当金や株主優待を受ける権利が得られても、その価値以上に、株価が大きく下がっては意味がありません。権利取り直前に株価が大きく上がっている銘柄の買いは見送るべきです。

(5)人気の優待銘柄では、権利落ちの1カ月以上前に買うのが良いこともある

 人気の優待銘柄や有名な好配当利回り株には、権利落ち日の1~2カ月前から、権利取りの買いが入ることもあります。人気の高い銘柄ほど、早めに権利取りの買いで株価が上昇し、権利落ち日には、株価が大きく下がります。

  人気の優待銘柄や好配当利回り株は、権利取りの買いが入って株価が上がる前に投資した方が良いといえます。では、どれくらい前に買ったら良いでしょうか?

 銘柄ごとに、もっとも良い買いタイミングは異なるので、一概には言えませんが、8月末基準の人気の優待株は7月後半~8月初旬までに買った方が良く、9月末基準の人気優待株は8月後半~9月初旬までに買った方が良いことが多いと言えます。

 ただし、タイミングの判断は、その年によって異なります。9月末にかけて日経平均が上昇する年は、結果的に早く買った方が良かったということになります。9月末にかけて日経平均が下がるならば、急いで買う必要がなかったということになります。

 日経平均がどうなるか予想せずに、一般論だけで考えるならば、人気優待株は、権利付き最終日よりも、1カ月くらい早く買った方が良いことが多いと言えます。

(6)株主優待狙いの買いで、権利取り直前に株価が大きく上がりやすい銘柄、5つの特色

 一般的に、以下5つの特色を備えた銘柄は、優待取りの買いで、権利取り直前に株価が大きく上がることがあります。

  1. 株主優待や配当金を、年1回(8月だけ、または、9月だけ)しか出さない。

  2. 小型株。流動性が低い。

  3. 優待獲得の効率が良い(小額投資で、多額の優待が得られる。10万円以下、あるいは5万円以下で投資できる銘柄が人気となりやすい)

  4. 使いやすい(誰もが必要とする日用品中心に幅広い選択肢がある。食事券や食品の贈呈は人気が高い)

  5. マネー誌などで、人気の優待注目銘柄として紹介されている

 上記の複数項目に該当する銘柄に投資する場合は、権利付き最終日ではなく、その1~2カ月前に投資した方が良いと思います。