入居者の関心が高い、遮音性や断熱性に優れている構造

【く】空室は 構造により 変わるもの

 マンション投資は、入居者に住んでもらうことで初めてメリットを享受できます。そのため、物件に長期間住んでもらうことが、安定した投資の第一歩に繋がるのです。入居者は、部屋探しの際にこだわって物件を探していますが、入居後に後悔してしまうこともあります。

 図表1をご覧ください。「今の部屋に住んでみて後悔・失敗したと思うのはどんなこと?」という、18~29歳を対象にしたアンケート結果です。上からトップ5は、「壁が薄い」「キッチンが狭い」「隣人や周囲の音がうるさい」「収納がない・少ない」「部屋が寒い・暑い」という順番になっています。ここで注目したいポイントは、「壁が薄い」「隣人や周囲の音がうるさい」「部屋が寒い・暑い」といった住環境に重きが置かれていることです。

 後程詳しく触れますが、今の20代はスマートフォンの普及により、買い物や友人とのコミュニケーションをインターネットやSNSで済ませることも多く、より外出しない傾向にあります。これにより、室内の快適性を強く求める傾向にあるのです。

[図表1]遮音性能に次ぎ、断熱性能の改善を求める入居者

出典:2016年5、6月賃貸検討者調査(リクルート住まいカンパニー調べ、全国)を基に作成

 そのため、図表1のように「内装のリフレッシュ」や「最新の設備」導入より、「遮音性」や「断熱性」の改善を求めています。遮音性や断熱性能は、建物の構造によって変わるものです。夏場の室温を木造とRC造(鉄筋コンクリート造)の建物で比べた場合、最大で約4℃の差があったという調査結果もあります。当然、「木造のアパート」より「RC造のマンション」の方が、構造体がしっかりしており遮音性や断熱性に優れているため、入居者から選ばれやすくなるのです。

目に見えない価値も重要視される時代に

 近年では、アパート系の空室率の上昇が顕著になっているのも見逃せません。最近の傾向では、築古マンションと新築アパートが競合した場合、立地や構造が良好なマンションの方に入居者が流れていると言われています。駅から近い商業地に多く建てられているマンションは、立地で勝ることはもちろん、木造物件より遮音性や断熱性に優れているため選ばれやすくなっているのです。加えて、東日本大震災が記憶に新しいところで、自己防衛意識の高さから地震や火災に強い構造体のしっかりしたマンションに、入居需要は流れています。

 最近の20代は、スマートフォンの普及により、室内にいる時間が長くなります。これは、今後の賃貸住宅市場に、大きな影響を与えるキーポイントとも言えるほど重要なことです。そのため、静かな環境で生活できる「遮音性」と室内において快適に過ごすことができる「断熱性」、万が一の災害にも強い「安全性」は、もはや「価値」と呼べるのかも知れません。図表2の不満点も、都心の築浅(2000年以降に建築されたもの)ワンルームマンションであれば、概ね回避できます。

[図表2]賃貸住宅の不満は、構造で回避できることが多い

出典:(SUUMO賃貸ひとり暮らし調査)より/SUUMOジャーナル調べ(2016年11月)を基に作成
・全国に居住する18歳~29歳の賃貸住宅でひとり暮らしをしている学生および社会人の学生および社会人の男女300人

 購入する側の都合も投資する際には重要なポイントですが、入居者の立場に立った物件を選ばなければ収益も得られません。建物の構造とは、それほど重視されるポイントと言えます。今後は、目に見える設備だけでなく、目に見えない価値も重要視される時代なのです。

(仲宗根 和徳/株式会社和不動産 代表取締役)

※この記事は2018年10月31日に幻冬舎ゴールドオンラインサイトで公開されたものです。

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