FRBの使命は「株価の維持」というシングル・マンデートに変容した
6月20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)は「辛抱強くなれる」という文言を削除し、FRB(米連邦準備制度理事会)はトランプ米大統領と市場に忖度(そんたく)しながら、今後は利下げに動いていくことを示唆した。FRBの使命は「雇用」と「物価」の安定だが、トランプ大統領はパウエル議長率いるFRBに「株高」しか要求していないようだ。
ホワイトハウス(トランプ大統領)がパウエルFRB議長を「議長から理事に降格するぞ!」と脅している中で、パウエル議長も自己保身から辛抱強くなれなくなってきたようだ。予防的利下げを行うなら、米国債市場の指南役で時の権力者の意見を代弁しているセントルイス地区連銀のブラード総裁が0.25%の利下げを主張したように、今回利下げすべきだった。FF(フェデラルファンド)金利先物市場は既に年内3回弱の利下げを織り込んでしまっているのだから。市場は株が少しでも下がってくると、今後はFRBに利下げを催促するだろう。その過程でドルは売られていく。
米国の政策金利(FFレート)とNYダウの推移 過去2回の利下げ局面で株は結局大幅安…
ドル売り(円高)相場はまだ本番ではない。今、序章が始まったばかりだ。株が崩れないうちは大きく円高には動かない。円高の加速は実際にFRBが利下げに動いたときから始まるだろう。現在、市場は金融相場を期待してシュガーハイ(糖分を多量摂取した一時的な興奮状態)だが、7月に予定調和の利下げが行われると、8月以降は株が下がるたびに利下げの催促相場が展開される可能性が高まっている。
ファンドの企業秘密めいた話なので詳細は申し上げられないが、筆者の周辺のファンドの中には現在の相場は8~9月あたりに大きく崩れるのではないかという予測をしているところがある。
ドル/円(日足)とトレンドサイクル(ノウハウは非公開)
トレンドサイクルの転換で『ポジションをとる準備』をし、実際に売り買いするタイミングはMACDの3つの指標を総合判定したシグナルが教えてくれる。
FRBが実際に利下げするまでは株高!?
ゴールド相場が今、大きな抵抗である1,350ドルをトライしている。先週末の相場でゴールド先物相場は小幅ながら4日続伸、一時は1オンス=1,350ドルを上回り、1年2カ月ぶりの高値を付けた。
ゴールド先物(日足)
ビットコイン/円(日足)
筆者の注目する運用者ポール・チューダー・ジョーンズは、米国の『利下げ観測』の中では、
- 株買い(実際に利下げが行われるまでの期間限定買い)
- 短期の債券買い
- ドル売り
- ゴールド買い
が有効だろうと、相場観を語っている。
これから12カ月~24カ月の時間枠で見ると、もっとも良いトレードになりそうなのは『ゴールド買い』で、節目の1,400ドルを超えれば、相場は1,700ドル近辺までトライしにいくだろうと予測している。ゴールドの急伸は、これから到来するドル安相場の始まりを予感させる号砲なのかもしれない。
ゴールド先物(月足)
ドルインデックス先物(週足)と波動カウント ドルは既に天井を付けている!?
ドル/円(週足)と波動カウント ドル/円は既に天井を付けている!?
チューダーは、「注目ポイントは米中の関税問題で、対中国の関税が実施されて5,000億ドルになったら、米国は景気後退に入る可能性がある。これは、我々が75年間経験してないことだ。」と語っている。
ジョージ・オーウェルの『1984年』、ミシェル・フーコーの『監獄の誕生』…監視国家の誕生で自由を奪われ動物園化する中国社会
ペンス米副大統領は、昨年10月の講演で、「中国は国内では、他に例を見ない監視社会を築いており、ジョージ・オーウェルが小説『1984年』で描いた人間生活の支配システムを構築しようとしている」と述べた。
6月28~29日の大阪G20(20カ国・地域)首脳会議の前に、ペンス米副大統領が6月24日にワシントンの研究機関「ウッドロー・ウィルソン・センター」で米中関係について演説を行う。この演説は「中国の人権問題を厳しく非難する内容」になる見通しだ。ペンス副大統領がどんな発言をするのか要注目である。
中国だけではない。筆者は2015年10月のレポートで、『海外勢は日本がジョージ・オーウェルの「1984年」というSF小説を想起させる不気味な方向に向かっているのではないか?」という感触を持っているらしい』と書いた。今、我々は統制経済と国家の相場操縦の中で相場をやっているのである。
【では、先ほどの問題の答えを教えてやろう。つまりこうだ。我が党が権力を求めるのは、まさにそれが目的であるからだ。他人の幸福など関係ない。関係あるのは権力のみ、純然たる権力のみだ。では、純然たる権力とは何か。いまから教えてやろう。我々が過去の少数独裁と違うのは、自分たちが何をしているのか理解しているところにある。我々と似ているものもあるが、結局は臆病で偽善的だった。例えば、ナチスドイツもロシア共産党も方法論的には我々と非常に似通っている。だが、奴らには自分たちの動機を自覚するだけの勇気がなかった。自分たちが不本意かつ暫定的に権力を握ったふりをしたのだ。しかも、人々が自由かつ平等に暮らす楽園がすぐそこにあると装った。あるいは、本当にそう信じていたのかもしれない。しかし、我々は違う。権力を手放す気がある者に権力をつかめたためしはない。権力は手段ではない。目的なのだ。革命を守るために独裁を確立するのではない。独裁を確立するために革命を起こすのだ。迫害するために迫害をする。拷問するために拷問をする。権力をふるうために権力をつかむのだ。な、だんだん分かってきただろ。】(ジョージ・オーウェル『1984年』)
ミシェル・フーコーは、『監獄の誕生―監視と処罰』で、我々が社会の無意識的な構造の中で、制度やとらわれの中で生きていることを指摘した。ミシェル・フーコーについては、筆者のブログの記事を参照されたい。
【私が指摘しておきたいのは、中央銀行が操縦する世界で、投資家が相場の動きを知るのは、そして世界がここ5年、ましてや10年で、どのようになるか知るのは、ほとんど不可能であるということだ。中央銀行は経済的・金融的安定を築こうとしていると世間的にはみなされている。しかし実際には、巨大なバランスシートと市場介入によって金融市場にとてつもない不安定性と不透明性を築こうとしているのだ。】(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート[パンローリング株式会社])
債券王ガンドラックの相場見通し
債券王ジェフリー・ガンドラックが景気上昇期の終わりと景気後退を警告した。
ガンドラックは、今後半年に景気後退期に入る確率は40~45%とし、市場の催促でFRBは今年中に数回の利下げ(6月中のFRB利下げはないだろうが、7月には利下げが行われる。金利市場を見ると年内の利下げが4回に及ぶこともありうる)に追い込まれ、その結果、ドルは下げるだろうと予想している。
ドル相場については、「米国の双子の赤字が悪化すれば、さらなるドル安の予兆になる」と語った。
ラリー・ウィリアムズの円と日経平均の売買戦略
ラリーは先週同様に、今週も日経平均株価は戻り売り、ドル/円は円高狙いのドル/円の戻り売りという戦略のようだ。
以下のコメントを参照されたい。
ラリー・ウィリアムズの日経平均予測
ラリー・ウィリアムズの日本円通貨先物予測
そして、米国株については、「アメリカの株式市場はとても混乱しています。AD ラインは新高値をつけるほど上げてきていますが、価格はそこまで強く上げていません。OBV(オン・バランス・ボリューム)は直近の高値まで上げてきていません。頂点からはかなり遠く離れています。つまり、それほど買いが強く入ってきていないのです。状況はミックスではっきりしていません。おそらく、今後は方向性が乏しく、荒れた展開が続くと予測しています」と、述べている。
今後はしばらくの間、乱高下が続くのかもしれない。
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