今日のポイント

・北朝鮮は9月3日、核実験を断行。北朝鮮の核・ミサイル技術は実験を重ねるごとに進歩しており、北朝鮮の脅威は一段と高まってきた。

・今週の日経平均株価は、再び上値の重い展開となりそう。景気・企業業績は好調だが、北朝鮮の不安、および米金融政策の先行きに不透明感があることが、上値を抑える要因に。

 

北朝鮮に振り回される日経平均

 先週の日経平均株価は、1週間で239円上昇し、1万9,691円となりました。5月以降、続いてきた2万円を中心としたボックス圏に再び、戻りました。

日経平均週足:2016年1月4日―2017年9月1日

注:楽天証券マーケット・スピードより作成

 日経平均は、8月後半に売られ、5月から続いてきたボックス圏から下へ抜けました。米国と北朝鮮が互いに威嚇・挑発をエスカレートさせ、朝鮮半島有事の不安が高まったことが嫌気されました。リスクオフの円高が進み、日本株に外国人投資家の売りが増えたことが背景にあります。

 8月29日(火)の早朝、北朝鮮が北海道上空を通過するミサイルを発射したニュースが伝わると、一時1ドル108円台まで円高が進み、日経平均は1万9,288円まで売り込まれました。ただし、ミサイルが太平洋に落下したことが確認されると、為替は円安に、日経平均は反発を始めました。先週は、ドル・日経平均を買い戻す動きが続きました。

北朝鮮が核実験を断行、爆発規模はこれまでの実験を大きく上回る

 ところが、週末、9月3日(日)に、再び、不安を高める事態が起こりました。北朝鮮が6回目の核実験を断行したことです。核実験によって引き起こされた地震の規模から推定して、爆発規模は過去最大となります。北朝鮮の核・ミサイル技術は実験を重ねるうちに、進歩が見られます。このまま放置していると、いずれ核弾頭を搭載したICBM(大陸間弾道ミサイル)で、米国本土まで直撃できる技術を完成させてしまう可能性が憂慮されます。

 北朝鮮の核実験に対しては、世界各国が非難声明を出しています。特に注目されるのは、中国・ロシアも、北朝鮮を強く非難する声明を出したことです。

 これまで中国は口先で北朝鮮を非難しつつも、影では北朝鮮を経済的に支えてきました。今後、中国が実効力のある経済制裁に踏み込むのか、注目されます。ただ、今まで通り、口先だけ非難して、見せかけだけの制裁しかしない可能性もあります。

 なお、今週末の9月9日(土)に、北朝鮮は建国記念日を迎えます。そこで、さらに挑発・示威行為を重ねる懸念もあります。

 

今週の日経平均は、上値の重い展開に

 北朝鮮の脅威が増していること、日米で政治の混迷が続いていることが、嫌気されそうです。日経平均の上値を抑えるのは、地政学リスクと政治不安だけではありません。米国の金融政策の先行きに不透明感があることも、日経平均の上値を抑える要因となっています。

 9月19-20日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、金融引き締めに打ち止め感が出るのか、あるいは、引き締め堅持のスタンスを示すのかが、注目されます。

 9月に利上げがないことはほぼ確実ですが、12月に利上げを実施する可能性を示唆するか否か注目されます。また、FRB(連邦準備制度理事会)の保有資産(米国債)を将来的に大幅に縮小する方針を決定するか否かも注目されます。イエレンFRB議長の決定が世界の金融市場に大きな影響を与える可能性があります。

 米国の金融引き締めに打ち止め感が出れば、米国株には追い風となりますが、円高が進むリスクがあります。引き締めを続ける姿勢が示されれば、米国株が売られるリスクがあります。ただし、その場合は、米金利が上昇し、円安が進む期待があります。

 また、9月1日に発表された8月の米国の雇用統計は、米金融政策に影響を与えることで、注目されていました。ただし、出てきた結果は、大きく相場を動かす材料とはなりませんでした。

8月の米雇用統計は市場予想よりやや弱いが、雇用情勢が強いとの判断は変わらず

 9月1日、日本時間で21時30分に発表された8月の米雇用統計は、市場予想よりやや弱い内容【注】でした。

【注】8月の雇用統計は、事前の市場予想を下回る内容

◆非農業部門の雇用者増加数(前月比):15万6,000人(市場予想は18万人)

◆完全失業率:4.4%(市場予想は4.3%)

◆平均時給の前年比増加率:+2.5%(市場予想は+2.6%)

 雇用統計発表直前に、為替は1ドル110.10円でしたが、発表直後にドルが売られ(円が買われ)、一時109.56円まで円高が進みました。ところが、その後、すぐにドルが買い戻され、1ドル110円に戻りました。1日のニューヨーク終値は、1ドル110.27円でした。

 8月の雇用統計は、事前予想よりやや弱いとはいえ、米国が実質完全雇用にあり、雇用情勢が強いという判断は変わりません。

 為替ディーラーが「予想よりやや弱い数字」に反応して、一瞬だけドル売り(円買い)が進みましたが、すぐに「完全雇用に近い」米国の雇用情勢が見直され、ドルが買い戻されました。結局、雇用統計では、ドル円の水準は変わりませんでした。

 雇用統計で一番注目されているのは、非農業部門の雇用者増加数(前月比)です。

 

米雇用統計:非農業部門の雇用者増加数(前月比):2014年1月―2017年8月

出所:米労働省

 20万人以上の増加となれば、米景気は強いと見なされます。8月は、15万6,000人の増加で、事前予想(18万人増)を下回り、かつ、20万人も下回っています。ただし、米国は、実質完全雇用にあり、この状態では、雇用が前月比10-20万人増えれば、十分に強いといえるとの見方もあります。

 8月の完全失業率は、4.4%と、前月(4.3%)から、0.1%ポイント上昇しました。ただし、この水準は、実質完全雇用に近く、米雇用情勢が強いとの見方に変わりはありません。

 

米完全失業率:2014年1月―2017年8月

出所:米労働省

 今回の雇用統計で、注目が高かったのが、平均時給の伸び率です。出てきた数字は、前月比0.1%増(前年比2.5%増)でした。事前予想は、前月比0.2%増(前年比2.6%増)を下回りますが、決して、弱い数字ではありません。

8月の米ISM製造業景況指数強い、米景気好調の見方は変わらず

 9月1日には、8月の米雇用統計に加え、8月の米ISM製造業景況指数も発表になりました。以下の通り、強い内容でした。8月の非製造業景況指数は、まだ出ていません(今週6日に発表予定)が、米景気は好調が続いていると言えます。

米ISM製造業・非製造業景況指数: 2014年1月―2017年8月

出所:米ISM供給公社

 日米景気とも、景気・企業業績は好調だが、株は上値が重いという状況が、しばらく続きそうです。