日経平均は悪材料が多い中、2週連続上昇

 先週の国内株市場ですが、週末6月14日(金)の日経平均株価は2万1,116円で取引を終えました。ちょうどこの日はメジャーSQ(特別清算指数)だったのですが、そのSQ値(2万1,060円)をも上回っています。さらに、週足ベースでは2週連続の上昇となり、6月相場入りしてからの2週間で515円ほど株価が反発したことになります。

 今週も引き続き、日本株は株価の戻りを試す動きが続くのでしょうか? まずはいつもの通り、下の図1で足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年6月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きをたどると、週初の10日(月)に大きな「窓」空けを伴う上昇となり、これによって節目の2万1,000円台を超えてきました。ただし、その後はあまり上値を伸ばせず、反対に週の半ばは上げ幅を縮小させる動きに転じ、週を通じておおむね下向きに傾いている25日移動平均線に沿っての推移が続いた格好です。前回のレポートで注目していた75日移動平均線までにはまだ距離があり、思ったほど株価の上昇に勢いが出なかったことになります。

 確かに、先週の株式市場を取り巻く環境を整理すると、米中関係に目立った改善が見られなかった他、10月の消費増税が濃厚になりつつあること、香港では「逃亡犯条例」改正をめぐって大規模デモなどの混乱が生じ、中東のホルムズ海峡ではタンカーが攻撃されて米国とイランの関係悪化が懸念されるなどの悪材料が多く、もっと株安が進んでもおかしくなかったと言えます。

 それでも、日経平均は2万1,000円台超えを維持して週末を迎えていることや、5日と25日移動平均線も「ゴールデン・クロス」を達成しているなど、チャートの形は崩れていません。

 先週の株式市場がここまで頑張れた支援要因としては、米国の利下げや中国の経済対策などへの期待が挙げられますが、米国の利下げに関しては、今週の18~19日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれます。また、来週末にはG20(20カ国・地域)サミットが予定されていることもあり、今週のタイミングで米中首脳会談の開催の有無などの判断があるかもしれません。

 そのため、今週の日経平均も先週に引き続き、75日移動平均線をトライする可能性がありそうですが、米国の利下げ期待はこれまでにも相場を支えてきた材料ですので、目新しさに欠ける面もあります。どこまで株価を押し上げるかは、今週のFOMCで今後のさらなる利下げ見通しが強まるなどの「プラスα」が必要かと思われます。

NYダウは2万6,000ドル台回復、「トリプルトップ」指摘も

 では、その米国株市場についても見ていきます。下の図2は米NYダウ平均株価の週足チャートです。

■(図2)米NYダウ(週足)の動き (2019年6月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 足元のNYダウは2万6,000ドル台乗せまで株価を戻していますが、過去にさかのぼってみると、2万7,000ドル前に力尽きる場面が3度ほどあり、「トリプルトップ」を指摘する声も聞かれます。

 一般的に、トリプルトップもしくはダブルトップが形成されて相場が下落していくには、「ネックライン」を下抜けることが条件のひとつとされています。上の図2で想定されるネックラインは3本ありますが、いずれも現在の株価水準からはかなり下に位置していることが分かります。

 株価がこれらのネックライン水準まで下落するということは、トリプルトップの形成を待たなくても、すでに下落相場入りしている状況になっていると言えるため、むしろ重要なのは反対側の上値の重たさとその余地の方になります。すでに2万6,000ドル台乗せを回復したNYダウがさらに一段高していくには、かなりのエネルギーや材料が必要になってきます。

 反対に、FOMCの結果がいったんの材料出尽くしと受け止められ、さらに、G20に向けて米中関係の改善などが見られなければ警戒ムードが強まり、値動きが荒くなることも想定されます。

風見鶏相場の日本株、今週想定されるシナリオは?

 いずれにしても、米国から吹く風によって方向が変わりやすい「風見鶏相場」になりそうというのが今週の基本的な相場地合いで、相場の上方向への意識と下方向への意識が入り混じる状況と言えます。そこで、再び話を日経平均のチャートに戻し、トレンドラインを描いて整理してみたいと思います。

■(図3)日経平均(日足)の動き その2(2019年6月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3は昨年10月2日の高値を起点にして、戻り高値をそれぞれ結んだ赤いトレンドラインと、12月26日の安値を起点にして、押し安値をそれぞれ結んだ青いトレンドラインがそれぞれ何本か描かれています。

 足元の日経平均は、青いトレンドライン(3)と、赤いトレンドライン(3)がクロスしているところに位置しています。今後の基本的な値動きとしては、上方向ならば青いトレンドライン、下方向ならば赤いトレンドラインが目安になります。

 メインシナリオはこのふたつの線に囲まれたゾーンが想定レンジになりますが、下方向に株価が進んだ場合、5月に入ってからの日経平均が赤いトレンドライン(3)によって上値を抑えられてきたこともあり、「弱気ゾーン」入りする可能性があります。となると、青いトレンドライン(4)が下値サポートとして機能するかが次の焦点になります。

 反対に、上方向に株価が進んだ場合は、青いトレンドライン(3)をサポートにした「強気ゾーン」入りとなります。この場合、直近高値(4月24日)の延長線となる赤いトレンドライン(4)が上値抵抗として意識されることになりそうです。

 最近は相場のムードがコロコロと変わりやすいだけに、その強弱に合わせて想定されるゾーンを意識して取引に臨むスタンスが無難なのかもしれません。