売買ランキングから見る、5月下旬の注目点

2019年5月下旬 米国株式売買ランキング

順位 ティッカー 銘柄名 関連するテーマ
1 AMZN アマゾン・ドット・コム eコマース、クラウド、AI
2 TSLA テスラ 電気自動車、自動運転車、太陽光発電
3 SPXS Direxion デイリー S&P 500 ベア3倍 ETF 米国株式市場全体(レバレッジ)
4 MSFT マイクロソフト クラウド、PC
5 AAPL アップル スマートフォン、エンターテインメント
6 TWLO トゥイリオ クラウド、ソフトウェア
7 BABA アリババ・グループ・ホールディング eコマース、クラウド
8 SPXL Direxion デイリー S&P 500 ブル3倍 ETF 米国株式市場全体(レバレッジ)
9 NVDA エヌビディア eスポーツ、クラウド、AI
10 CSCO シスコシステムズ 通信、IoT
注釈:楽天証券金額ベース。5月20日~31日、国内約定日ベース

 5月下旬の売買ランキングの注目点としては、やはりランキング2位に浮上したテスラ(TSLA)でしょうか。後ほど詳しく見ていきたいと思いますが、直近株価が大きく下落する中で、売買ともに活発になったようです。その他はやはり、引き続きアマゾン・ドット・コム(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)など、人気のeコマース・クラウド関連銘柄が上位にランクインしています。

ランキング上位の銘柄について、直近の動向を解説

 売買ランキングのTOP5に入った銘柄(ETFを除く)について、直近の動向を見ていきたいと思います。

アマゾン・ドット・コム(AMZN) 

出所:トムソン・ロイター(現地5月31日まで過去1年間)

 売買ランキング1位のアマゾンについては、マーケット全体が下落する中で2,000ドルに再到達することなく、値動きの重い展開が続いています。ただ、米中貿易問題が懸念される中で、アマゾン自体は中国の売上高がほとんどなく(中国のeコマース市場では、市場シェア1%未満の状況が続いていた)、クラウドサービスなどが引き続き好調なことから、個人的にはマーケット全体にツレ安している状況は買いの好機かもしれないとも考えます。

 ただ、マーケットでは独占禁止法関連の懸念も生じてきているようですので、その辺りの動向についても注意を払う必要がありそうです。

テスラ(TSLA)

出所:トムソン・ロイター(現地5月31日まで過去1年間)

 5月下旬の売買動向で、売買ランキング2位に急浮上したテスラです。上記チャートをご覧の通り、ここ2年ほど続いていた280~380ドルのレンジを下抜けし、一気に200ドルを割り込む急落となりました。

 テスラは元々ウォールストリートのアナリストの間でも評価が分かれる銘柄で、4,000ドルに到達すると強気な見方を示す意見もある一方で、「株価がここから半分になる」、「弱気シナリオの目標株価は10ドルだ」などと、非常に慎重な見方も多く、空売り残高が同社の浮動株の2割以上になることも珍しくありません。

 そうした中で、今回CEOのイーロン・マスク氏が従業員に宛てたメールで「27億ドルの資金を調達したものの、1-3月期の赤字状況が続けば、約10カ月で全て使い切ってしまう」などと発言したことを受け、会社の資金繰りについて懸念する声が高まりました。また、そうした中で新型電気自動車「モデル3」の需要が芳しくないとのコメントがアナリストの間で相次ぎ、目標株価の引き下げが続出したことを受け株価は急落しました。

 しかしその一方で、アナリストの多くは注目していないようですが、テスラの「信者」と呼ばれるようなファンの多くは、中国で建設中の大規模工場「ギガファクトリー3」の凄まじい建設ペースや、マスク氏が「4-6月期の出荷台数は過去最高ペースになるかもしれない」と従業員宛てのメールで発言していることに注目し、強気スタンスを維持しているようです。

 常に「倒産間近」であると言われ続けながらも、根強い人気があるテスラですが、ここから切り返せるのか、今後の動きに注目していきたいと思います。

マイクロソフト(MSFT)

出所:トムソン・ロイター(現地5月31日まで過去1年間)

 3位はETF銘柄でしたので、次は4位のマイクロソフトを見ていきたいと思います。こちらもマーケット全体が下落する中で値動きの重い展開が続いているものの、ほぼ史上最高値近辺で横ばいの推移となり、その堅調さが逆に際立っています。

 直近のニュースではクラウドゲームなどでソニー(6758)と戦略的提携を結んだというものもありましたが、それよりも引き続きクラウドに軸足を移した同社の好調な業績が評価されているようです。今後プラットフォームとしてのクラウドサービスでは、アマゾンのAWS、マイクロソフトのAzure、グーグルのGCPの3強時代が来るとも言われていますが、そうしたことも堅調な株価動向の裏側にあるのかもしれません。

アップル(AAPL)

出所:トムソン・ロイター(現地5月31日まで過去1年間)

 5位に入ったアップルですが、こちらは米中貿易問題の直撃を受けたという印象で、株価は直近大きく下落しています。一部アナリストは中国におけるiPhoneの売上予想を半分に切り下げるなど、アナリストの間でもやや慎重な見方が広まっているようです。
サービス関連の売上が好調となるなど、iPhone以外の分野が急速に成長しているアップルですが、中国問題が一段落するまでは、しばらく軟調な展開になる可能性があります。

今後の動向について

 5月下旬、というよりも大型連休明け、令和になってからの相場は終始、米中貿易問題が支配した感があります。追加関税にファーウェイ問題、そしてこれを書いている6月3日現在ではメキシコとの関税問題まで浮上してきましたので、しばらくは全体的に値動きの重い展開が続くのではないかと感じています。

 ただ、前述の通り、アマゾン・ドット・コムなど、中国向けの売上比率が非常に低いにもかかわらず、全体のマーケットにツレ安しているような銘柄も多くあるかと思いますので、独占禁止法の問題はあるものの、そうした企業が反発してくればマーケットの雰囲気もまた、変わってくるのではないかとも思います。

 また、今回特に注目したテスラですが、こちらについては7月の初めに4-6月の自動車販売台数を発表する見込みですので、ここでイーロン・マスクCEOの言うように、過去最高の販売台数を発表することが出来れば、以前の280~380ドルのレンジに戻ることもあり得るのではないかとも感じています。

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