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『法人企業統計』は、企業活動の実態を把握する目的で実施されている統計調査で、財務省から3カ月に1度発表されます。2019年1-3月期の全産業(金融・保険業除く)の設備投資は前年同期比+6.1%と、10四半期連続のプラスでした。売上高は輸出やITセクターの減速が重石となるなか、同+3.0%と鈍化し、製造業の低迷が目立ちました。経常利益は非製造業がけん引し、同+10.3%と2期ぶりに増益に転じました。

 

【ポイント1】設備投資は前年同期比+6.1%

GDPの基礎統計となる「ソフトウエア除く全産業」は前期比+1.1%

 6月3日に発表された2019年1-3月期の『法人企業統計』によると、全産業(金融・保険業除く)の設備投資は、前年同期比+6.1%と10四半期連続のプラスとなりました。内訳をみると、製造業は同+8.5%と前期(10-12月期)の同+10.9%から伸び率が縮小しました。業務用機械が同▲17.9%と、大きく減少したことが影響しました。一方、非製造業は同+5.0%と、前期(同+2.7%)から伸び率が拡大しました。

 GDP改定値を算出する基礎となり、注目度の高い「ソフトウエア除く全産業」の設備投資の季節調整後の前期比は同+1.1%と、2期連続プラスとなりました。

 

【ポイント2】経常利益は増益へ転換

売上高は鈍化

 全産業(金融・保険業除く)の経常利益は、前年同期比+10.3%と、前期の同▲7.0%から2四半期ぶりに増益となりました。内訳をみると、製造業が同▲6.3%と前期の同▲10.6%から減益率が縮小し、非製造業は同+18.4%と前期の同▲4.9%から増益に転じました。

 売上高は同+3.0%と、前期の同+3.7%から鈍化したものの、10四半期連続で増収を維持しました。内訳をみると、製造業が同+1.1%と、業務用機械などの減少で前期の同+3.9%から伸び率が縮小しました。非製造業は、前期から横ばいの同+3.7%でした。

 

【今後の展開】米中協議の行方に注目

『法人企業統計』の設備投資(ソフトウエア除く全産業)は、GDP速報値や市場予想を上回りました。これは6月10日発表の1-3月期のGDP改定値に反映されるため、設備投資は上方修正される見通しですが、在庫投資が下方修正される可能性が高く、GDP改定値は速報値と大きくは変わらないとみられます。

 一方、製造業における売上高の減速や経常利益の減少は、米中貿易摩擦の影響が色濃く表れていると考えられます。米中の関税引き上げ合戦が行われるなか、引き続き今後の米中協議の行方が注目されます。