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 現在の米中協議は、袋小路に陥っているように見えます。5月9、10日のワシントンにおける米中協議の不調と、米中双方の追加関税の更なる引き上げ表明の後、米国側は3,000億米ドルの中国からの輸入に対する追加関税の引き上げ準備を行っている他、中国IT企業に対する実質的な取引禁止措置もあり、中国は態度を硬化させています。両者の早期合意は難しいと言えそうですが、今後はどういった展開が想定できるでしょうか。

 

【ポイント1】6月のG20では協議継続とし、7~9月中に合意へ

 現在、米国は3,000億米ドルの中国からの輸入に対する追加関税の引き上げ(第4弾)を準備中です。6月17日の公聴会、6月24日までの意見公募を経て、7月中旬から下旬にはこの準備が整う見込みです。

 トランプ大統領は6月28、29日の主要20カ国・地域(G20)大阪サミットで米中首脳会談を行う意向を示しているものの、それまでの時間が短すぎるため、新しい交渉材料の提示や国内意見の再集約を行う事はできず、合意に至るのは難しそうです。ただし、同首脳会談で協議継続の確認が行われることを前提に、トランプ大統領は第4弾の追加関税の引き上げ実施時期を遅らせ、7~9月中に何らかの合意に至る展開が想定されます。

 

【ポイント2】双方の制裁措置が経済、金融市場に更なる影響を及ぼす時期に

 この想定の背景として、トランプ大統領は2020年の大統領選挙での再選を意識している一方、習近平国家主席は労働市場の安定を通じた社会安定の維持を意識しており、両首脳は景気の下振れに対して警戒していると考えられることがあります。3,000億米ドルへの追加関税やIT企業との本格的な取引停止は、双方にとってダメージが大きいと見られます。それによって両首脳が合意へ向かうインセンティブが高まりやすいと考えられるため、両国は何らかの合意に至るのではないかと想定できます。

 

【今後の展開】交渉決裂はリスクシナリオ、協議が継続されるかに注目

 リスクシナリオは、トランプ大統領が譲歩の姿勢を見せず、中国政府も強硬姿勢を貫くことで、両国の協議が決裂してしまうことです。トランプ大統領は次期大統領選に向け、景気や株価の動向に敏感になっていると思われますが、追加関税による米国への悪影響が軽微にとどまってしまうような場合は、中国に対する譲歩の余地が縮小するリスクがあります。また、米国は5月15日に、中国の通信機器最大手企業への部品供給を事実上禁止する方針を発表した他、ビデオ監視装置企業にも同様の措置を取ると表明したことから、中国政府が態度を硬化させているリスクもあります。米中関係を判断する上で、協議のための相互訪問が続くか、米中首脳会談がG20大阪サミットで開催されるか、といった政治イベントが注目されます。