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 製造業を中心に急速な経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国となった中国ですが、生産年齢人口の減少や人件費の上昇などが懸念されています。こうした中で、中国政府は製造業の高度化を図るべく、2015年に「中国製造2025」を発表しました。米国は、「中国製造2025」は中国政府が自国のハイテク企業に補助金を投入する政策であり不公正として、撤回を要求しています。

 

【ポイント1】中国政府は付加価値の高い製造業への転換を企図

生産年齢人口の減少や人件費の上昇などが背景

 中国は製造業を中心に急速な経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国となりましたが、近年は生産年齢人口の減少や人件費の上昇などが懸念されています。生産年齢人口は2012年から減少に転じたほか、人件費の上昇を背景に企業が生産拠点を、中国国内で人件費が比較的高い沿海部から内陸部へ、あるいは中国からベトナムやミャンマーなどのほかのアジア新興国へ移す動きがみられます。

 こうした中、中国政府は新たな経済成長の原動力とするべく、これまでの安価で豊富な労働力を基にした労働集約型の製造業を、情報技術(IT)などを活用した付加価値の高い製造業に転換させることを戦略目標に掲げています。象徴的な例として、2015年に発表された「中国製造2025」が挙げられます。

 

【ポイント2】国を挙げて製造業の高度化を図る

R&D支出や特許出願数はすでに世界第2位

「中国製造2025」とは、次世代ITやロボットなどの10分野を重点産業に指定し、金融や財政・税制の仕組みを利用して集中的に支援することで、国を挙げて製造業の高度化を図る産業政策のことを指します。

 付加価値を高めるために欠かせないのが技術革新です。技術革新への注力度合いを測る指標として、研究開発(R&D)支出額や国際特許出願件数が挙げられます。中国においては近年、どちらも大幅に増加しており、直近では米国に次ぐ世界第2位に躍り出ています。

 

【今後の展開】製造業の高度化を今後も進める見込み

「中国製造2025」は『米中摩擦』の争点の1つです。米国は、「中国製造2025」は中国政府が自国のハイテク企業に補助金を投入する政策であり不公正として、撤回を要求しています。中国政府は撤回を拒否していますが、李克強首相が2019年3月の全国人民代表大会において、2018年まではコメントしてきた「中国製造2025」への言及を控えるなど、米国への配慮をうかがわせる行動もみられます。

 しかし、「中国製造2025」は中国経済の根幹ともいえる製造業の転換を目指す国家プロジェクトであることから、中国政府は今後も「中国製造2025」に基づいて、製造業の高度化を進めると考えられます。