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 激化・長期化する『米中摩擦』の一因が、巨額に上る米国の対中貿易赤字です。内需が旺盛なことに加え、製造業の国外流出やトランプ政権の財政拡大を背景に、米国の貿易赤字には縮小の兆しがみられませんが、そのうち約半分を中国が占めています。米国は以前も過度な貿易赤字を問題視することがありましたが、トランプ大統領と一部の側近は特にその意識が強いとみられます。

 

【ポイント1】米国の貿易赤字は高水準

旺盛な内需やトランプ政権の財政政策などが背景

 米国の貿易赤字は1990年代に大幅に拡大しました。2000年以降は拡大こそ止まりましたが高水準で推移しており、足元ではそのうち約半分を中国が占めています。2018年の貿易赤字はGDP比▲4.3%となりましたが、対中国は同▲2.0%でした(対日本は同▲0.3%)。

 米国の貿易赤字がなかなか縮小しない背景には、内需が旺盛な状態が続いていることや、製造業がグローバルで最適な生産拠点を求めて国外に流出したことがあります。製造業がGDPに占める割合をみると、1980年には約20%となっていましたが、その後は低下基調にあります。また、短期的にはトランプ政権が減税などの財政政策を実施したことも貿易赤字が縮小しない一因とみられます。

 

【ポイント2】米国は以前も過度な貿易赤字を問題視

過去には自動車などで日本も標的に

『米中摩擦』はトランプ政権特有の強硬姿勢によるものという印象があるかもしれませんが、米国は以前から過度な貿易赤字を問題視することがありました。代表例として日米貿易摩擦があげられます。

 日本と米国は1950年代以降、鉄鋼や家電製品、半導体などをめぐって貿易交渉を実施してきました。そのなかでも有名なのは1980年代を中心とした日米自動車摩擦だとみられます。当時、安価で性能の良い日本車が米国に大量に流入し、米国車は苦戦を強いられました。米自動車会社や労働組合が米政府に対応を要請し、日本は輸出台数の自主規制に追い込まれ、各社は現地生産を拡大しました。

 トランプ大統領は1987年に新聞広告で貿易赤字の削減を主張するなど、大統領に就任する前から貿易問題に強い関心を持っていたとみられます。また、通商政策に携わっているロス商務長官とナバロ大統領補佐官は2016年9月に共同で発表したレポートの中で、貿易赤字を削減すれば、経済の成長率は高まると主張していました。米国は従前から過度な貿易赤字を問題視することがありましたが、トランプ政権は特にその意識が強いと考えられます。