米中の対立深まる。日経平均の上値は重い

 先週の日経平均は1週間で133円下落し、2万1,117円となりました。トランプ政権が15日、中国の通信機器最大手ファーウェイ社への製品供給を事実上禁じる制裁措置に踏み切った波紋が広がり、世界中のハイテク産業の先行きに不安が広がりました。一部の部品について禁輸措置は90日間の猶予が与えられましたが、それでも、日本や欧州に、ファーウェイ社との取引停止(部品などの供給、ファーウェイ製品の購入)に踏み切る企業が増えました。米中ハイテク戦争がエスカレートする不安から、先週の日本株市場では、電子部品や半導体・スマホ関連株を始めとして景気敏感株が売られました。

日経平均週足:2018年1月4日~2019年5月24日

出所:楽天経済研究所が作成

 トランプ政権がファーウェイ社への禁輸措置を発表した直後、ファーウェイ社経営陣は、半導体など「米企業が売ってくれなくても問題ない」と強気のコメントを出していました。ところが、禁輸措置の影響が世界中の企業に広がると、同社に深刻なダメージが及ぶことがわかってきました。

 特に影響が大きくなりそうなのが、米グーグル社が基本OS「アンドロイド」の提供をやめる可能性があると伝わったことです。これでファーウェイ社スマホでは、「アンドロイド」「Gメール」などが使えなくなる可能性が出ました。これを受けて、日本および欧州で、ファーウェイ社スマホ販売を見合わせる動きが広がりました。

 もう一つ、影響が大きかったのが、ソフトバンクの子会社となった英半導体設計大手アーム・ホールディングスが、ファーウェイ社への供給停止を発表したことです。これで、ファーウェイ社は、スマホなどの新製品開発ができなくなる可能性もあります。

 ファーウェイへの禁輸制裁は、中国側にダメージが大きくなりそうです。ただし、それでも、日米欧も相応のダメージを受けます。ファーウェイ社は、世界から半導体・電子部品など約7兆円の調達をしています。それが禁止されると、ファーウェイ社に部品などを売っていた米国・欧州・日本などの企業にも、ダメージが大きくなる可能性があります。5G(第5世代移動体通信)の導入時期も遅くなる可能性が出てきました。

 米中の対立が抜き差しならない局面に入り、世界のハイテク産業が大きなダメージを受ける懸念が出てきました。

 こうした不安を反映し、米国・中国など世界の株式市場が軟調に推移しています。

日経平均・NYダウ・上海総合株価指数の動き比較:2017年末~2019年5月24日

注:2018年末の値を100として指数化、楽天証券経済研究所が作成

ショック安が起これば、長期的に日本株の買い場と判断

 日経平均は当面、上値の重い展開が続きそうです。ただし、日本株の投資判断について、結論は毎週レポートに書いていることと同じです。短期的には、米中ハイテク戦争の激化と世界景気悪化の不安から、日経平均がさらに売られる局面があれば、そこは長期的に日本株の良い買い場となると思います。配当利回り4-5%の大型優良株から投資していったら良いと思います。具体的には、以下「もっと読む!著者おすすめのバックナンバー」に掲載しているレポートを参照してください。

 

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