燃料コスト減と政策でファンダメンタルズ改善、華潤や華能を有望視

 BOCIは燃料コストの低減や政策動向を理由に、本土電力セクターに対するレーティングを強気に引き上げ、個別では華潤電力控股(00836)と華能国際電力(00902)の株価の先行きに対する見方を中立から強気に引き上げた。最近の株価調整で電力銘柄の予想PBR(株価純資産倍率)は軒並み0.7倍以下となり、BOCIは米中関係を取り巻く不透明感が高まる中、再び魅力的な水準に達したとの見方。華潤電力控股、華能国際電力、中国電力国際(02380)、中国広核電力(01816)の順で強気見通しを示している。

 国内全体の発電量は4月に前年同月比3.8%増と、3月の5.4%増から減速した(国家統計局調べ)。ただ、クリーンエネルギーの普及が進む中、火力発電量は4月に0.2%の微減。BOCIは対米摩擦激化による国内経済への影響を考慮し、19年の電力消費見通しを「前年比6.0%増」から「6.0%増」へ下方修正した。

 BOCIはまた、石炭火力発電に関する見通しを下方修正したが、これは動力炭調達コストの抑制につながる点で、必ずしも電力セクターにマイナスにはならないとの見方だ。在庫高止まりや需給の緩みを受け、動力炭価格が向こう数カ月、前年を割り込む水準で推移する見通しを示した。今夏には水力発電量の力強い回復が石炭火力発電の需要減につながる可能性があるものの、1-3月の炭鉱事故による影響が後退することで、石炭供給量は再び増加傾向に転じると予想。この点で火力発電銘柄に有利になるとしている。

 中国国内の石炭価格は暖房シーズンが3月に終わった後も、予想外に底堅く推移しており、現在では輸入石炭価格が国産(海上輸送)を大きく下回る水準にある。こうした現状は、沿海地域を事業地とする華潤電力控股、華能国際電力に有利。現在のトレンドが続いた場合、燃料コスト減という点で、両社に最も大きな恩恵が及ぶ見通しという。

 政策面では国家発展改革委員会(NDRC)が5月15日、4月1日の増値税(VAT)引き下げ時に遡り、水力と原発の卸電力価格を引き下げと発表した。VAT抜き電力価格は減税前と同水準となる。ただ、NDRCは石炭火力発電に言及しておらず、減税分がそのまま利益に上乗せされる見通しとなった。さらにNDRCがこの通達の中で、火力発電の値下げ以外の方法で、「商工業向け電気料金を10%引き下げる」という目標を達成するための方法を提示したことも朗報。もともと火力発電は利幅が薄いため、こうした要因による利益上乗せ効果が大きい。NDRCは、「再生可能エネルギー利用割合基準」(RPS:20年1月1日施行)も正式発表したが、BOCIによれば、新エネルギー事業者へのプラス影響は今のところ限定的。火力発電部門に対する影響は中立的としている。

 個別銘柄では、華潤電力控股と華能国際電力の現在株価に基づく19年予想配当利回りで5.8%、5.2%(配当性向40%、70%を想定)。BOCIは利益上振れ見通しや現在の低バリュエーション、景気不透明感に対する抵抗力の強さなどを前向きに評価している。