「ゴーイング・コンサーン」や「継続企業の前提」という言葉を聞いたことがありますか? そしてこれらに疑義が生じている会社があることは知っていますか?
「ゴーイング・コンサーン」とは何か?
個人投資家の皆さんは、上場会社の決算書が「ゴーイング・コンサーン」という前提により作成されていることをご存じでしょうか? そもそも、ゴーイング・コンサーンという言葉自体「良く知らない」という方が多いかもしれませんね。
上場会社の決算書は、会社が将来にわたり半永久的に継続するという前提に立って作成されています。この前提のことを「ゴーイング・コンサーン」や「継続企業の前提」と呼んでいます。ゴーイング・コンサーンの典型例は固定資産の減価償却です。
例えば建物であれば、30年とか50年といった長期にわたり減価償却で毎年少しずつ費用化していくことは、会社が事業活動を半永久的に継続することを前提としています。
しかし、会社が倒産してしまうと、減価償却に意味がなくなります。倒産した会社は、資産を換金して債権者に支払う必要がありますから、重要なのは「いくらで資産が売れるか」です。したがって、資産は取得価額ではなく換金価値により評価されることになります。
継続企業の前提に関する重要事象等・注記とは?
もし、大赤字を計上したり、債務超過になっているなど、会社が倒産するリスクが高まっている場合は、もはや継続企業の前提で決算書を作るのではなく、会社が倒産する前提とした決算書が必要になるかもしれません。
そのため、倒産リスクが高い会社は、「倒産リスクが高いものの、継続企業を前提とした決算書を作っています」ということを、投資家に伝える必要があります。それが「継続企業の前提に関する重要事象等」と「継続企業の前提に関する注記」です。端的に言えば、他の会社に比べて倒産リスクが高い場合、決算短信などに、この重要事象等の記載、もしくは注記が付されることになっているのです。
「重要事象等」と「注記」との違いは?
例えば、2019年3月期に本決算や四半期決算を発表した会社のうち、多額の損失を計上したRIZAPグループ(2928)の決算短信や、また、不祥事により業績が悪化したTATERU(1435)の2019年12月期も、第1四半期決算短信にて、初めて継続企業の前提に関する重要事象等の記載がされています。
さらに、ぱど(4833)、ピクセラ(6731)、ジャパンディスプレイ(6740)は、従来より継続企業の前提に関する重要事象等の記載がされていましたが、2019年3月期決算においては、重要事象等の「記載」から「注記」に記載が変更となりました。
そして、燦キャピタルマネージメント(2134)は、それまで付されていた注記が2018年3月期に一度外れたものの、2019年3月期に再び注記を付されることになりました。
重要事象等の記載と注記のレベルですが、注記の方がより倒産リスクが高くなります。上記のぱどなどの3社については、倒産リスクが以前より高まったという判断ができます。
重要事象等や注記が付された会社は今後どうなるの?
重要事象等や注記が付されたからといって、直ちに何か不都合が生じるというわけではありません。ただし、これまでの経験上、実際に倒産、経営破たんした会社の多くがすでに重要事象等や注記の記載がされていたというのが事実です。
一方、現時点で重要事象等や注記が付されていても、今後業績が回復すれば、重要事象等や注記の記載対象から外れることもあります。例えば東芝(6502)やシャープ(6753)は、以前は重要事象等の記載が付されていましたが、業績回復により現在は記載されていません。
つまり、重要事象や注記が付された会社は、他の会社より倒産リスクが高いことは確かであり、実際に倒産する会社もある一方で業績回復により重要事象等や注記の記載対象から外れることもある、というのが実態です。
なお、会社四季報の巻末には、継続企業の前提に関する重要事象等や注記の記載がある会社のリストが掲載されていますので、銘柄選びの参考にしてください。
次回はこのような状況を踏まえて、投資対象として重要事象等や注記が付された会社をどう扱っていくか、そしてそもそも投資対象とすべきかどうかにつき、筆者としての考えをお伝えしたいと思います。
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