注目の1~3月期GDPは予想外のプラス成長

 5月20日に発表された日本の1~3月期GDP(国内総生産)の速報値は、「ゼロからマイナス成長」という予想に反し、実質年率で+2.1%と2期連続のプラス成長となりました。

 発表直後のドル/円は、15銭ほど円安に動きましたが、その後は反落し、円安に勢いはありません。予想外に良い結果だったGDPですが、楽観できない内容だったこと、そして米中貿易摩擦による先行き不透明感が、株やドル/円の勢いを削いでいるようです。

2019年1~3月期日本GDP(前期比、%)

  2018年
10~12月期
2019年
1~3月期
推移
GDP 0.4 0.5 2期連続プラス
(年率換算) (1.6) (2.1) 2期連続プラス
内需 0.7 0.1 2期連続プラス
外需 ▲0.3 0.4 4期ぶりのプラス
個人消費 0.2 ▲0.1 2期ぶりマイナス
設備投資 2.5 ▲0.3 2期ぶりマイナス
住宅投資 1.4 1.1 3期連続プラス
公共投資 ▲1.4 1.1 5期連続プラス
輸出 1.2 ▲2.4 2期ぶりマイナス
輸入 3.0 ▲4.6 2期ぶりマイナス

本当に知っている?GDPの正しい読み方

 GDPを見るときは、まずどのように内需と外需が経済成長に寄与しているかをチェックします。

 そして、内需の中心である個人消費の成長度合いを見ます。個人消費はGDPの6割を占める日本の成長の根幹です。これが伸びていないと、日本の成長力のパワーが持続しません。

 個人消費が伸びるためには、賃金が上がって所得が増え、その結果、消費額が増えるか、人口が増えることによって全体の消費額が増えるか、あるいは画期的な商品が販売され、消費額が増えるかにかかっています。賃金が伸び悩み、人口が減少傾向である現況では、消費パワーには限界があります。

 一方、外需は海外の需要でどれだけ稼いだかを意味します。

 輸出が輸入より増えれば、純輸出(=輸出-輸入)が増えてGDPに大きく寄与します。

 今回のGDPでは、外需の寄与度が0.4%と4期ぶりのプラスとなりました。しかし、輸出が大きく伸びたことによってGDPに寄与したのではなく、輸出の伸びも輸入の伸びもマイナスだったのに、輸入のマイナス幅の方が大きかったために、GDPの成長を押し上げた格好になりました。

実はリーマン直後以来だった輸入減少幅

 つまり、輸入が増えることは、国内の生産がその分減少すると考え、国内の総生産であるGDPにとってはマイナス要因になり、輸入先である海外の生産にとってはプラス要因となります。

 逆に、輸入が減少することは、国内の生産がその分増えると考え、GDPにとってはプラス要因となります。今回のケースがこれに当てはまります。

 しかし、この数値を手放しでは喜べません。

 消費と設備投資がマイナスの伸びの中での輸入の減少は、国内の需要が落ちているためと考えることができます。輸入の減少幅は、リーマン・ショック直後の2009年1~3月期以来の大きな落ち込みです。輸入が減少した背景は、企業の生産活動に必要な原油や天然ガスなどの輸入が減った影響が大きいとみられています。

 今回のGDPについて厳しい見方をすると、内需に勢いがなく、その結果として輸入が減少。外需は4四半期ぶりにプラスに転じたものの、米中貿易摩擦の影響や中国経済の減速によって輸出が減少している状況では、先行きに期待は持てません。米中貿易摩擦が続く限り、設備投資や、GDPのプラス要因となる在庫積み増し(今期寄与度+0.1%)に、企業は慎重にならざるを得ないため、内需低迷を長引かせることになります。

今後の日本経済指標の重要日程

 5月13日、内閣府は景気動向指数に基づいた景気の基調判断を、6年2カ月ぶりに景気後退の可能性を示す「悪化」に引き下げました。さらに24日には、政府が公式の景気判断を示す「月例経済報告」が公表されます。景気について「回復」の文言が下方修正されるかどうか注目されていますが、今回のGDPのプラス成長の数字を受けて、「回復」の文言は残りそうです。

 そして6月10日には、今回のGDP速報値の改定値が発表されます。改定値では、6月1日に財務省が発表する法人企業統計の設備投資が反映されます。速報値でマイナスだった設備投資が、法人企業統計を受けてさらに下方修正される可能性もあるため、法人企業統計にも注目する必要があります。

 また、8月9日には4~6月期GDPが発表され、改定値は9月9日に発表されます。

 今回の2期連続のプラス成長を受けて、政府・与党も経団連も景気について強気の見方を維持していますが、3期連続のプラス成長になるのか、それとも腰折れするのかどうかに注目です。改定値も含めて4~6月期のGDPが、消費税増税の最終判断材料となります。

 一方で、5月20日に日本経済新聞が集計した民間エコノミスト13社の4~6月期GDP予測では、平均値▲0.004%とほぼゼロ成長の予測です。中国経済の先行き不透明感や米中貿易摩擦の激化が影響しているようです。

 やはり、日本経済反発のためには米中通商交渉の合意が必要です。米中首脳会談が期待される6月の大阪G20(主要20カ国)首脳会議の重要性はますます高まってきていると言えます。

今後の日本経済指標の重要日程

日程 内容
5月24日 月例経済報告
6月1日 法人企業統計(財務省)発表
6月10日 1~3月期GDP改定値発表
6月28~29日 大阪G20首脳会議開催
8月9日 4~6月期GDP速報値発表
9月9日 4~6月期GDP改定値発表