「噂で買って事実で売る」、これが株の特性。令和相場初日(5月7日)から始まった米中摩擦蒸し返しを理由にしたリスクオフ相場は、「懸念」で売られたわけで、「事実」は買い戻しの原動力。第3弾の追加関税発動を受けた先週末10日の米国株市場は、リバーサル(反転)発生で下げも一服。これを受け、日経平均先物も夜間には2万1,510円まで回復していたのですが…。
米中貿易戦争で日経平均は7日続落
市場が描く「最悪のシナリオ」方向へ米中摩擦問題がエスカレート。これが誤算でした。追加関税をまだ課していない最後の輸入品3,000億ドル分に関し、トランプ米大統領が第4弾の発動準備を指示。ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表が「5月13日にトランプ政権として詳細を公表する」と予告したことで、第4弾まで織り込みを進めていなかった株式市場を狼狽(ろうばい)させました。
13日(月)の東京市場では「第3弾関税発動目掛けたイベントドリブンの買い戻しVS.第4弾の詳細公表を目がけたイベントドリブンの新規売り」の取っ組み合いに。
この「仁義なき米中通商摩擦」の舞台裏では、「仁義なき投機筋」の撃ち合いも繰り広げられ、13日の日経平均株価は153円安となり6日続落。13日のニューヨーク市場は、東京時間の時間外の米株指数先物の下げとは次元が違う下落に見舞われ、NYダウ平均株価は617ドル安に。これを受けた14日(火)の日経平均は、124円安で「7日続落」となりました。
「これ、どこまで下げるの?」状態ですが、一方で「そろそろリバウンドありそう・・・」と身構えている市場参加者も多そうです(希望的観測などは全く含めていません)。
正式に追加関税第4弾の詳細が発表されましたが、スケジュールを考えると、今回は事態急変に対応を迫られた先週までとは、違う点もあります。
長期化する貿易戦争。投機筋は身動きを取れない?
まず、5月14日の朝方、トランプ米大統領が中国との貿易協議について「われわれはそれが成功かどうか、約3~4週間以内に知らせることになるだろう」とホワイトハウスで発言。これを理由に、東京時間にかなり買い戻しが入り、下げ幅を縮めました。
USTRによると、第4弾の制裁関税案に関しては、6月17~24日でパブリックヒアリングを行い、反対意見を受け付けるようです。トランプ米大統領が言う「約3~4週間以内」は、このパブリックヒアリングが始まる時期。その後に、28日から大阪でG20(先進20カ国・地域)首脳会議が開催され、ここで中国の習近平(シー・ジン・ピン)国家主席とトップ会談をするとの報道もあります(トランプ大統領は大阪に来ないという説もあるようですが)。
これだけ考えても、4週間で道筋が見えるとも言えませんし、「6週間くらいは必要じゃないか?」とかツッコミも入りそうです。ここで決裂してしまうと、第4弾の発動時期が7月以降で設定されます。そもそもトランプの「4週間で~」も、今年4月、中国の劉鶴(リウ・ホー)副首相と会談した際、「今後4週間で方向性が分かるだろう」とすでに発言していました。いずれにしても今回の話はかなり長期戦覚悟と言えるわけです。
株式市場(マーケット)の目線で言えば、トランプ氏や政権幹部の発言、中国側の動向に翻弄(ほんろう)される期間が長いということ。ゴールがよく分からないだけに「貿易摩擦オンならリスクオフ/貿易摩擦オフならリスクオン」という不毛な時間が結構続くということです。
ここが5月入ってすぐの貿易摩擦トレードと違う点です。
バリバリの売り方にとっても、ターゲットが決められないから、ここから売るのもリスクがあるわけです。第3弾の発動は「5月10日」と予告されていましたので、5月10日ターゲットの短期ショートで攻めることができます。第4弾の詳細発表も「5月13日」と予告されていましたので、そこ目がけた超短期ショートでいいわけです。
しかし今回は、ターゲットとする日があいまい、かつ、かなり先。そこまで今のテンションで売り乗せが続くとも考えにくく、どこかで利益確定を入れる向きがあると、ポーンとリバウンドするリスクも売り方にはあります。
過去のデータではそろそろ下げ止まりも!?
他にこんなデータもあります。
5月14日まで「7日続落」しているわけですが、日経平均が過去10年で連続安した日数を調べると、最長でも「8日続落」(2009年7月1日~7月13日)でした。それ以外は、2012年と2016年に7日続落が2回ずつありますが、それに並ぶ連敗中(←今ココ)なわけです。
気休めにしかならないデータかもしれませんが、「これくらいの日数でいったん下げ止まる」という目安としては強いように思います。これくらい続けて下げると、投資家心理としては買い戻しを入れたくなるとか、逆張りで買いを入れたくなるといった傾向もあるのでは、と考えています。
図:過去10年の連続下落日数
また、こんな日本独自の景気ネタも出てきています。5月13日に内閣府が発表し、民放のニュースでも大きく取り上げていましたが、3月の景気動向指数(←米中貿易協議が進展していると報じられていたタイミング)から見た国内景気の基調判断が6年ぶりに「悪化」へ下方修正されました。内閣府が「ゴメンナサイ」したわけです
そんな状態で、来週20日(月)に1~3月期のGDP(国内総生産)が発表されます。
エコノミストの大半がマイナス成長を予想していますので、マイナスで出るがコンセンサスなわけです。直近話題になりつつありますが、着々と「消費増税再延期」の材料が整っているわけです。
これは、昨年央から消費税増税の影響直撃をストーリーに、売られてきた小売株など内需関連株にとって、壮大な買い戻しにつながる可能性もあるということ。これも売り方にはリスクです。
希望的観測は一切ありませんが、「そろそろリバウンドしてもおかしくない?」が現時点で言えることかもしれません。「どれくらい戻すか?」は全く分かりませんが、上記の図の連続下落表に「反発後の7営業日」の動きも掲載していますので、ご参照ください。
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