すっかり個人投資家の間に溶け込んだNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)。配当金や売却益が非課税となる有利な制度ですが、より有効に活用する方法を考えてみましょう。

NISAでの投資先として、個人投資家の多くが選んでいる株は?

 年間120万円の投資枠の範囲内なら、5年間は配当金や売却益が非課税となるNISA。実際に活用されている方も多いと思います。

 ところで、個人投資家の方が投資先に選んでいる銘柄はどのようなものが多いと思いますか? 下記の楽天証券HPにランキングが掲載されています。 

 1位が「みずほフィナンシャルグループ(8411)」、2位が「日産自動車(7201)」です。それ以外の銘柄をみても、おおよそ共通するのが「割安かつ高配当」という特徴です。

順位

コード

銘柄名

1

8411

みずほフィナンシャルG

2

7201

日産自動車

3

3197

すかいらーく

4

8267

イオン

5

2914

日本たばこ産業

6

8591

オリックス

7

4755

楽天

8

7751

キヤノン

9

7203

トヨタ自動車

10

9433

KDDI

データ出所:楽天証券のNISA「国内株式 保有残高 ランキング」2019年3月1日~2019年3月31日(更新日2019年4月2日更新)ページより

 割安株かつ高配当株への投資をしている方は配当金を受け取ることができ、株価下落も限定的で、多少の株価下落なら配当金でカバーできる…という考えをもとに投資されているのではないでしょうか。

 では、このNISAの非課税枠を「高配当株への投資にあてる」という考え方は本当に正しいのでしょうか? 実際に数値を用いて検討してみたいと思います。

高配当株への投資によるNISAのメリットはどのくらい?

 例えば配当利回り5%、株価1,200円のA社株1,000株(非課税限度枠いっぱい)をNISA口座にて投資したとしましょう。5年間で得られる配当金は120万円×5%×5年=30万円です。

 もし通常口座であれば、配当金に対して20.315%の税金がかかりますから、30万円×20.315%=6万945円の税金が非課税となる効果を得られます。

 そして5年後株価が1,500円で売却した場合、1,200円で売却した場合、900円で売却した場合に、売却損益にかかる税金の効果を考えてみます。

◯1,500円で売却した場合

 売却益(1,500円-1,200円)×1,000株=30万円 
 30万円×20.315%=6万945円 の税金が非課税となる

◯1,200円で売却した場合

 売却益はゼロのため、非課税効果は得られない。

◯900円で売却した場合

 売却損(900-1,200)×1,000=30万円

 一般の口座であれば損益通算により30万円×20.315%=6万945円の税金削減効果が得られるが、NISA口座では切り捨てになってしまう。

売却損益を加味するとNISA口座が不利になることも

 このように、売却益があればNISA口座が有利ですが、売却損の場合はNISA口座だと切り捨てになってしまうため、通常の口座の方が有利となります。

 例えば上のA株で、900円で売却した場合は

◯配当金5年間合計30万円×20.315%=6万945円の非課税効果

◯売却損が切り捨てとなるため30万円×20.315%×6万945円の
 税削減効果が得られない

 トータルするとNISA口座でも通常口座でも変わりない」ということになるのです。さらに、高配当株というのは、将来的に業績が悪化するなどして、配当金が減額されてしまうリスクもあります。実際に配当金を引き下げる(減配)になれば、株価も値下がりしてしまうでしょう。

 配当金の減額リスクや、売却損の損益通算のことも考えると、逆に通常の口座で投資した方が有利となるケースも少なくないのではないか、というのが筆者の見立てです。

NISA口座では大きなメリットを狙おう

 では、筆者が考える「NISAで投資すべき株」とは、どのようなものなのでしょうか? それは「将来、株価が大きく上昇する可能性がある銘柄」です。具体的には、購入時点での時価総額がまだ小額ですが、今後の業績の大きな伸びが期待できる小型株です。

 例えば、将来有望なB社株(1株6,000円)を200株、NISA口座で買うとします。もし5年後に株価が5倍の3万円になったところで売却したとすれば、(3万-6,000)×200=480万円の利益です。

 これに対する税額は480万円×20.315%=97万5,120円になりますが、NISA口座ならこれが非課税となります。

 逆に、5年後の株価が半分の3,000円になったところで売却すると、60万円の損失です。通常の口座であれば損益通算により60万円×20.315%=12万1,890円の税軽減効果がありますが、NISA口座ではこれが得られません。

 以上より、NISA口座での投資は株価が上昇すればするほどメリットを享受することができ、逆に、株価下落による税金面でのデメリットは限定的(マックスでも120万円×20.315%=24万3,780円)です。

 NISA口座は年間120万円の枠なので、そのうちの一部を「高配当株」、一部を「小型成長株」に振り分けることもできます。

「高配当株で手堅く」という考え方もありますが、減配や株価下落のリスクも小さくありません。せっかく非課税の恩恵を受けるのなら、大きく恩恵を受けることができる可能性の高い銘柄に投資するのが面白いと筆者は考えます。