今週の予想

今週は米中通商交渉の行方を見定めるところ

 10連休明けの今週は、トランプ米大統領の中国への関税引き上げ表明を受けて世界各国の株式が下落し、米中通商交渉の行方が焦点となります。

 相場とは、先のことは誰にも分からず、予想を信じれば大失敗することが今回も証明されました。

 今回の10日間のような長期の連休では何が起こるか分からないため、リスクをとらない人は基本的には休むべきだと、私は以前から伝えてきました。

 世界の株式市場は、この米国の対中関税引き上げ表明を想定しておらず、むしろ今年になって合意間近という期待が米株価を上昇させてきました。

 5月9~10日に米中協議があり、内容によっては10日に関税が引き上げられる可能性もあるため、株価は目先悪材料を織り込む動きとなりそうです。

 もし、10日に関税引き上げが実施されれば期待で上昇してきた分が大きくはげ落ちることになり、日経平均株価も2万1,800円を切った場合には、2万1,500円台の可能性もあります。

 逆に米中協議が合意に向かえば大きな反発となります。

 今回の場合は、米国株式は足元の堅調さを保っていますが、下げれば買いチャンスと考えていいでしょう。ただし、今週末10日(金)はSQ(特別清算指数)を控えており、上へも下へも大きく動きやすい状況と言えます。

 10連休明けの7日は▲74円の2万2,184円で寄り付き、▲293円の2万1,965円まで下げた後、上海株式の反発で下げ渋り、前場は▲171円の2万2,087円でした。

 後場になると、中国側が一時的に通商交渉を中断する用意があると報じたことで、一段安で▲383円の2万1,875円まで下げ、終値は▲335円の2万1,923円でした。双方がケンカ別れという状況ではないので、長引いてもどこかで妥結すると思われます。それまでは悪材料を織り込む動きとなりそうです。

 (今週の指標)日経平均株価

 10連休にはさまれた先週の日本市場は休場で、その間、海外でマイナス要因はなかったことから、今週は「令和相場」として堅調なスタートが想定されます。

 材料としては、決算発表を手掛かりに業績相場に移行するとの見方もあり、週末にSQを控えていることも先物買い主導の展開となる可能性があります。ただし、米国株式の堅調さと円高への振れが止まることが前提です。目先は2018年12月3日の2万2,698円が上値ポイントとなります。

 

 (今週の指標)NYダウ平均株価

 今週は、インフレ指標に注目となります。先週のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がインフレ圧力の弱まりは一時的として、利下げ否定発言をしたことで、NYダウ平均株価は下落しました。

 一方で他の連銀総裁の一部は低インフレが続けば利下げ必要との考えを明らかにしており、利下げの可能性も否定できない状況です。そのため株価は金利動向に左右されやすくなります。結局、高値圏でのもみ合いとなりそうです。

(今週の指標)ドル/円

 今週は、ドル/円は底堅い展開を想定。日本の10連休中に為替がやや円高に振れていますが、大きな混乱もなく安定資産としての円買い、ドル売りが広がる展開は想定しにくいと思われます。

 先週、FOMC後にパウエル議長の発言で年内利下げ観測が後退しましたが、インフレ加速の兆しがなくても、米株高が続けば米長期金利が上昇に転じる場合には、リスク選考のドル買い、円売りとなる可能性もあります。1ドル=110.5~112.5円のレンジを想定しています。

(先々週~先週の結果)

 4月22~26日は、2万2,200円をはさんだ上値も重いが、下値も堅い上下動でした。

 米国株式はNYダウが年初来高値更新、S&P500指数とナスダック総合指数が史上最高値更新となったことで、日本市場をサポートし2万2,200円をはさんだもみ合いとなり、一時2万2,362円と年初来高値を更新。終値は2万2,258円となり、週単位では前週比+58円でした。安値は2万2,073円だったので堅調な動きだったと言えます。

4月22日(月):前週19日(金)は米国が休場だったこともあり、手掛かり材料に乏しく利益確定売り先行となるものの、一時+79円の2万2,280円と上昇。その後、先物売りで▲101円の2万2,099円まで下落。しかし、再びプラスとなり前週末の終値をはさんで方向感のない展開となり、+17円の2万2,217円と続伸で引けました。 

23日(火):前場は朝高後に下げとなるものの、後場は再びプラス圏に入って+41円の2万2,259円と3日続伸となりました。15日(月)に+298円の2万2,169円とマド空け上昇以降、高値圏での値動きが続き、下値の堅い動きとなっています。連休が終わり出来高が増加してくると上値が期待できるところです。

24日(水):前日の米国市場で主要企業の好決算を受けて主要3指標が大幅上昇。S&Pは2018年9月21日、ナスダックは2018年8月24日の終値での史上最高値更新となったことで、日経平均は+97円の2万2,356円で寄り付き、直後に+103円の2万2,362円と年初来高値を更新。しかし、先物の売りで下げに転じ、一時▲134円の2万2,125円まで下落。終値は▲59円の2万2,200円と4日ぶりの反落となりました。10連休を前にポジション調整の売りが出たといえます。

25日(木):前日の米国市場では株式は3指標そろって反落となったものの、為替が1ドル=111円台半ばから112円台半ばまでのドル高、円安となったことで、寄り付きは▲16円の2万2,183円と売り先行で開始。その後、すぐにプラスに転じ、後場には+134円の2万2,334円まで上昇。終値では+107円の2万2,307円と年初来高値を更新しました(前日は2万2,362円とザラ場で年初来高値更新)。この日の日銀金融政策決定会合で超低金利を「少なくとも2020年春ごろまで」続ける方針を明示したことで、先物に買い戻しが入ったとの見方がありました。 

26日(金):前日のNYダウの反落を受けて▲140円の2万2,167円で寄り付き、一時▲234円の2万2,073円まで下落しましたが、売り一巡後は下げ幅を縮小し、後場になると日銀のETF(上場投資信託)買い観測が支えとなって大引けにかけてさらに下げ幅を縮小して▲48円の2万2,258円の反落で引けました。

 26日(金)の米国市場では、1-3月期GDP(国内総生産)速報値が予想の+2.5%から+3.2%へ上放れしたことで、NYダウは+81ドルの2万6,543ドルと上昇。S&Pは+13ポイントの2,939ポイント、ナスダックは+27ポイントの8,146ポイントと再び史上最高値を更新して引けました。為替は1ドル=111.60円とやや円高でしたが、シカゴの日経先物は+85円の2万2,335円でした。 

10連休中の米国株式の動き

 日本がゴールデンウイーク中(4月29日~5月3日)の米国株式は、NYダウは週後半には下落したものの、週末は下げ幅をほぼ戻して引けました。週前半は3月の個人消費の大幅な伸びを記録し、インフレ指数も落ち着いていることから、堅調な相場となり3日続伸となりました。

 しかし、5月1日に▲162ドル、2日に▲122ドルと続落し、2万6,300ドル台まで下落しました。その背景はパウエルFRB議長が会見でインフレ圧力の弱まりは一時的とし、利下げ観測を否定したこともあって失望売りが先行し、原油安も嫌気されたためでした。しかし、3日(金)の4月雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく上回り、失業率も49年ぶりの低水準となったことを好感し、+197ドルの2万6,504ドルと大幅反発しました。同時にナスダックも過去最高値を更新。結果的に、米国株式は3指標とももみ合ったものの週始めと週末の株価はほとんど変わりませんでした。

 日本が休日の6日(月)の米国市場は、週末の5日(日)にトランプ大統領が中国からの2,000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げると表明したことで、NYダウは一時▲471ドルの2万6,033ドルまで急落しました。

 しかし、その後は中国の交渉団が米国に向かっているとの報道で下げ幅を縮小し、▲66ドルの2万6,438ドルで引けました。為替は先週よりも1円近い円高となって1ドル=110.66円で引けました。シカゴの日経先物はNYダウが急速に戻して小幅安で終わったことで、▲45円の2万2,205円でした。