第1四半期決算がほぼ出そろう
2019年第1四半期(1-3月)の決算がほぼ出そろいました。その中からネット企業、ならびにハイテク企業のうち代表的な銘柄の決算をハイライトします。
まず総括ですが、ネット企業の中ではフェイスブック(FB)は良く、対照的にアルファベット(GOOG)の決算は悪かったのですが、これはどうやらYouTubeの広告が減速したことが理由のようです。
アマゾン(AMZN)は、今回もEPS(1株当たり利益)では予想を上回りましたが、例によって売上高は冴えませんでした。そして、来期の会社側の売上見通しはまたも減速。このところ、アマゾンは立て続けに売上の見通しが下がっています。
これに対してアップル(AAPL)は低迷していたiPhoneの中国における売上が若干持ち直しているようです。
半導体では、インテル(INTC)がデータセンター向けのビジネスが減速していると発表。ザイリンクス(XLNX)も同様にデータセンター向けビジネスの変調を訴えています。従って、データセンターにおける高水準の先行投資が一巡したと見て、ほぼ間違いないと思います。
フェイスブック
フェイスブックの第1四半期決算はEPSが予想1.61セントに対し1.89セント、売上高は予想149.7億ドルに対し150.8億ドル、売上高成長率は前年同期比+26.0%でした。
第1四半期中の広告平均単価は▲4%、インプレッション数は+32%、インスタグラム、ならびにインスタグラム・ストーリーズが好調でした。
DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー数)は+8%の15.6億人、MAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー数)は+8%の23.8億人でした。
毎日21億人がフェイスブック、インスタグラム、WhatsApp、メッセンジャーを利用しています。また27億人が少なくとも1カ月に1回、これらのサービスを利用しています。
第1四半期中、フェイスブックはFTC(公正取引委員会)からのデータ不適切使用問題に関する調査を受け、その結果30億ドルのみなし損失を計上しました。これは1株当たりにして1.04セントに相当します。なお最終的な損失は30億ドルから50億ドルの範囲内に収まると考えています。
今後の売上高の予想に関しては従来から表明している通り、だんだん成長率が下がると会社側では見ています。
また、広告ターゲッティングは下半期に逆風にさらされることを予想。具体的には広告単価が低いインスタグラム・ストーリーへ出稿がシフトすることを予想しています。欧州で導入された新しいプライバシー規制、GDPR(EU一般データ保護規則)の関係で、アド・ターゲティングからオプト・アウト(離脱)するユーザーが増えることも予想されます。
FTC絡みの法務費用を除いた費用ガイダンスは、これまでの前年比+40~50%を+37~45%に下方修正します。
また設備投資費用に関しては、これまでのガイダンス180億~200億ドルを170億~190億ドルへ下方修正。これはデータセンター向け半導体企業にとって悪いニュースだと思います。
アルファベット
アルファベットの第1四半期決算はEPSが予想10.44ドルに対し11.90ドル、売上高は予想373.6億ドルに対し、363.4億ドル、売上高成長率は前年同期比+17%。為替要因を除く売上高成長率は+19%でした。
なお今回のリポーテッドEPSは9.50セントでした。これは欧州委員会から科せられた罰金17億ドルを含んだ数字です。それを除いた数字は上に書いた11.90ドルです。
罰金を除外した営業利益は83.05億ドル、営業利益マージンは23%でした(前年同期は25%)。
今期の税率は18%、前年同期は11%でした。
部門別ではグーグル・プロパティーズ売上高が256.8億ドルでした(前年同期は219.98億ドル)。
ネットワーク・メンバー・プロパティー売上高が50.3億ドルでした(前年同期は46.44億ドル)。
アザー・ベッツ売上高は1.7億ドルでした(前年同期は1.5億ドル)。
トラフィック・アクイジション・コストは68.6億ドルでした(前年同期は62.88億ドル)。広告売上高に占めるTAC比率は22%でした(前年同期は24%)。
グーグル・プロパティーズにおけるペイド・クリックは▲9%でした(前年同期は+39%)。ユーチューブ(YouTube)クリックの成長が鈍化。これまでユーチューブ広告が同社のドル箱だったので、このスローダウンは懸念すべき材料だと思います。
コスト・パー・クリックは+5%でした(前年同期は▲19%)。
ネットワーク・メンバー・プロパティーズにおけるインプレッション数は+5%でした(前年同期は+6%)。
ネットワーク・メンバー・プロパティーズにおけるコスト・パー・インプレッションは▲14%でした(前年同期は+1%)。
アマゾン
アマゾンの第1四半期決算はEPSが予想4.66ドルに対し7.09ドル、売上高が予想597.3億ドルに対し597億ドル、売上高成長率は前年同期比+17.0%でした。
営業利益は+129%の44億ドルでした。予想は31億ドル、事前のガイダンスは23億~33億ドルでした。
北米売上高は+17%の358億ドル。営業利益は+99%の23億ドルでした。
AWS(アマゾン・ウェブ・サービス=クラウドコンピューティングサービス)売上高は+42%の47億ドル。営業利益は+59%の22億ドルでした。マージンは320ベーシスポイント改善の28.9%でした。
海外売上高は+16%の162億ドルでした。
第2四半期の営業利益は予想41.9億ドルに対し26億~36億ドル、売上高は予想624.2億ドルに対し、新ガイダンス595億~635億ドルが提示されました。
新しい売上高ガイダンスの中値で成長率を計算すると、前年同期比+16%ということになります。これは今回の+17%より低い伸びです。
ただ、売上高成長率の急激な減速には、やや歯止めがかかっている印象を受けます。
アップル
アップルの第2四半期(3月期)決算はEPSが予想2.36ドルに対し2.46ドル、売上高が予想574億ドルに対し580.2億ドル、売上高成長率は前年同期比▲5.1%でした。
iPhone売上高は▲17%の310.5億ドルでした(予想は310億ドル)。期末にかけてiPhone売上高の下落はやや改善しました。
サービス売上高は+16%の114.5億ドルでした(予想は114億ドル)。サービス・グロスマージンは63.8%でした。これは前年同期より1パーセンテージポイントが高いものです。
ウエアラブル、ホーム&アクセサリー売上高は+30%の51.3億ドルでした。
iPad売上高は+22%の48.7億ドル。iPadの売上高成長率は過去6年で最高でした。
米州売上高は+3%の256億ドル。欧州売上高は▲6%の130.5億ドル。中国売上高は▲22%の102.2億ドル。日本売上高は+1%の55億ドル。アジア太平洋売上高は▲9%の36.2億ドルでした。
第3四半期売上高は予想520.9億ドルに対し、新ガイダンス525億~545億ドルが提示されました。グロスマージンは予想37.9%に対し、新ガイダンス37~38%が提示されました。
2020年までに課金サブスクライバー数は5億人を超えると予想します(現在は3.9億人)。
中国におけるiPhoneの売れ行きは米中貿易交渉の動向にかなり左右されます。いま交渉は大詰めを迎えているので、それの結果次第でアップル株が乱高下することが予想されます。
インテル
インテルの第1四半期決算はEPSが予想87セントに対し89セント、売上高が予想160億ドルに対し161億ドル、売上高成長率は前年同期比±0%でした。
第2四半期のEPSは予想1.02ドルに対し89セント、売上高は予想168.8億ドルに対し156億ドルが提示されました。
2019年度のEPSは予想4.50ドルに対し新ガイダンス4.35ドル、売上高は予想710.7億ドルに対し、新ガイダンス690億ドルが提示されました。
インテルはカンファレンスコールの中でデータセンター向けのビジネスの減速に言及しました。これは同社にとって重要なビジネスなので投資家は嫌気しています。
ザイリンクス
ザイリンクスの第4四半期(3月期)決算はEPSが予想96セントに対し94セント、売上高が予想8.26億ドルに対し、8.28億ドルでした。
地域別売上高は北米が+13%、アジア太平洋が+56%、欧州が+12%、日本が+20%でした。
エンドマーケット別売上高はコミュニケーションが+74%、データセンターが▲7%、自動車・消費者+20%、工業・防衛が+1%でした。
コミュニケーション向けが急成長した背景は5G(第5世代移動通信システム)向けの出荷が好調だったことによります。韓国、中国での5Gインフラ建設が需要を牽引しました。
在庫は112日でした。ちなみに前年同期は117日でした。
第1四半期売上高は予想8.35億ドルに対し、新ガイダンス8.35億~8.65億ドルが提示されました。
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