4月雇用統計の予想

 5月3日に発表される米4月雇用統計は、非農業部門雇用者数が+22.0万人(前回+19.6万人)の予想。失業率は3.7%(前回3.8%)、平均労働賃金は前月比+0.2%(前回+0.1%)、前年比+3.3%(前回+3.2%)との予想になっています。

過去3カ月の推移と今回の予想値

前回のレビュー

 前回、3月の雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)が市場予想を上回る19.6万人の増加となって、2月の大きな落ち込み(3.3万人)からあっという間に回復しました。失業率は労働力の減少を反映して3.8%で変わらず。一方で平均労働賃金は予想を下回り、前月比+0.1%、前年同月比+3.2%でした。

 指標発表後のNY株式市場では、ダウ平均株価が約半年ぶりの高値を更新、S&P、ナスダックも続伸しました。一方ドル/円の反応は鈍く、111.50円から111.80円前後の狭い値動きに終始。3月雇用統計は「株にやさしく、ドルにツレない」結果となりました。

失業保険申請に見る労働市場の強さ

 米国の雇用市場の状況を知る指標のひとつに、毎週発表される新規失業保険申請件数があります。新規失業保険申請件数は減少が続いていて、4月第3週時点では1960年代以来の19.2万件になっています。

 失業保険の申請が減るということは、それだけ失業者が少なくなったという意味。申請件数だけで見ると、米国の雇用市場は、過去50年間で「最も強い」状況といえます。

 米国で人手不足が深刻になっていることは以前の雇用統計詳細レポートでもお伝えしました。問題なのは、雇用がこれほど強いのに賃金上昇がついてきていないことです。

 FRB(米連邦準備制度理事会)も頭を悩ませていて、アトランタ地区連銀の報告にも「労働市場のひっ迫化が賃金に影響を与えるような明確な兆候は見られない」と懸念が示されています。

4月雇用統計の注目点は?

 昨年まで定期的に利上げを実施してきたFRBですが、インフレの明らかな加速が見られないなかで、今年に入り利上げ休止が妥当だという判断を下しました。

 現在は様子見が続く状態ですが、マーケットの一部には、FRBの次の動きは利下げだという意見まで出ています。しかし、この考えはやや悲観すぎるように思えます。

 むしろ、新規失業保険申請件数の減少に見られる労働市場の強さが、賃金上昇を促しインフレ率に波及するのは時間の問題と考えるべきで、FRBが今年後半にも利上げを再開する確率の方が高いのではないでしょうか。

 その意味でも、今回の雇用統計では、非農業部門雇用者数の強さを確認する以上に労働賃金の上昇率に注目する必要がありそうです。

「労働賃金上昇」もリスク

 前回の雇用統計では、雇用が伸びて失業率は半世紀ぶり低水準、でも賃金上昇はそれほどでもない。米経済は強いけれどインフレは不在。利上げの影におびえることなく好景気を存分に満喫できるという環境に恵まれ、株式市場には追い風が吹いています。

 ただし、ドルにとっては「良くも悪くもない」状況。雇用者増加は米経済好調というドル高材料ですが、金利は上がらないことがドルの上値を抑えます。別の見方をすると、労働賃金上昇はドル買い材料になりますが、株式市場にとっては金利高のイメージで売り材料ということになります。今回の雇用統計で労働賃金が上昇していたとしても、それを嫌気して株価が急落することになれば、マーケットはリスクオフに傾き、ドル/円がドル安/円高に動くことも考えられます。