いよいよ突入する10連休

 先週の金曜日(4月19日)と今週の月曜日(22日)はイースター休暇のため、欧州主要市場が休場でした。

 そして日本では、27日(土)から10連休を控えていることから、為替市場は動意に乏しく閑散したマーケットとなっています。このまま動きが少なく10連休に入るかもしれませんが、10連休中は相場が上下に振れやすくなるのではないかと警戒心が高まっています。

 特に、多くの投資家はこの10連休中に、今年1月3日(木)に起こったフラッシュ・クラッシュ(瞬間的に値が飛ぶ暴落)が再び起こるのではないかと警戒しています。このフラッシュ・クラッシュは、日本が休日だった1月3日午前7時過ぎ(東京時間)、多くのFX(外国為替証拠金取引)会社が評価替えを行う時間帯が狙われました。

 そういう意味で10連休中、土・日曜日以外のこの時間帯は常に警戒する必要がありそうです。

 週初月曜日(4月29日と5月6日)が気になるところですが、それよりも一層注意する必要があるのは5月1日(水)です。

 5月1日は、香港、シンガポール、欧州主要国がメーデーで祝日のため、さらにマーケットが薄くなることが予想されます。ただ、すでに経験していることから、学習効果によって多くの機関投資家や個人投資家は、ポジションを減らしたり、証拠金を厚くするなどの対策を講じているところでしょう。日本の金融当局も目を光らすようです。

相場が大きく動く要因は、薄商い

 相場が上下に振れやすくなる背景は、10連休中の東京時間帯の商いが薄くなるためです。10連休中は、アジア市場は開いていますが(5月1日は香港、シンガポールは休場)、日本が休場のため、マーケットの参加者が少なくなり、為替レートのプライスが悪くなる()ことが予想されます。

「プライスが悪くなる」とは…売りと買いのレートの差(スプレッド)が広くなること。例えば、通常のプライスでは1ドル=111.923~111.928円とすると、スプレッドは0.005銭だが、商いが薄いマーケットでは111.90~111.95円のようにスプレッド(5銭)が広がる傾向がある。

 また、取引高が少ないため、プライスが通常よりも飛びやすくなることが予想されます。

 為替市場では、10連休中の東京市場は休場ですが、欧米市場では通常通り取引が行われています。そのため、日本のFX会社は、東京時間帯も含め、通常通りの対応ですが、10連休中の東京時間帯は「プライスの悪さ」や「値が飛ぶリスク」は覚悟しておく必要がありそうです。

10連休中のイベントリスクとは?

 この10連休中で、もう一つ気をつけなければいけないのは、重要イベントや米国、中国、欧州の重要経済指標が相次いで発表されることです。このイベントや経済指標の結果によっては思いがけない相場展開になるかもしれません。

 4月の後半から、ドル/円は112円をはさんでほとんど動きのない相場となっています。その分、相場エネルギーがたまってきています。きっかけは何か分かりませんが、何かに触発されて相場エネルギーが放出されると、相場が一気に動く可能性はあるでしょう。

 10連休中のイベント日程は、10連休前も含め、次項の図1にまとめました。10連休中の薄い東京市場の時間帯よりも警戒度合いは高いと思われます。

 1月3日の経験則から、円高リスクへの警戒が高まっているため、円売りポジションを縮めたり、ドル売りヘッジを通常よりも多くヘッジしているという見方があります。もし、そうだとすると、円安要因やドル高要因が出てきた場合には、この方向に動きやすくなるということかもしれません。

10連休前の最重要イベントも警戒ポイント

 10連休直前にも注目すべき重要イベントがあります。

 米国1-3月期GDP(国内総生産)と日米首脳会談です。1月から2月にかけて悲観的だった米国や中国の景気は、3月に入ると米中とも反発してきました。

 これを受けて4月26日(金)発表予定の米国の1-3月期GDPの予想も2%台前半から2%台後半になるのではないかとの見方が出てきています。もし、予想以上の数字が発表され、それを受けて、5月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派寄りの金融姿勢が修正された場合、ドル/円はドル高、円安に動くことが予想されます。円高リスクへの警戒が多かっただけに、反対方向への値動きには弾みがつくかもしれません。

 一方で、円高リスクとして4月26~27日の米中首脳会談が注目されます。

 トランプ米大統領が、日米通商問題について、自動車の数量制限や為替問題に触れるのではないかという警戒心は払拭されていません。米中通商協議は合意に達しておらず、米欧通商協議も始まったばかりです。成果を求めるトランプ政権は、日本に対しても強硬姿勢で臨んでくるかもしれません。

図1:10連休中の重要イベント日程

「休むも相場」

 繰り返しになりますが、10連休中は、商いが薄くなるため、いざというときに思い通りの対応ができなくなる恐れがあります。このことを「流動性リスク」といいます。プライスが悪くなる「プライスリスク」よりも怖いリスクです。

 流動性が低くなるとは、売りたいときに、売りたいプライスで、売りたい金額を売れなくなることです。買いたいときも同じです。そのため、ポジションを縮めるなどして、流動性低下リスクに備える必要があります。あるいは、流動性が低い時にはあえて取引をしないという選択肢もあります。相場の方向性が出てきてから取引を始めるというのも一つの方法です。

 1985年のプラザ合意の時、そして1992年のポンド危機の時に、流動性リスクのため、ゾッとするような経験をしたことがあります。

 筆者が為替ディーラーだった若い時の時代、ディーリングルームでチーフディーラに言われた言葉が思い出されます。「『休むも相場』だ。しばらくディーリングを休んでも相場は明日も動いている。チャンスはいくらでもある」と。