4月15日~19日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は揉み合う展開。強弱材料がまちまちで決定打を欠いた。節目の65ドルが強固なレジスタンスとなっており、同水準では打たれるといった展開が続いている。ブレイクすると買いに弾みがつきやすいだけに注意が必要である。

 米国による制裁に伴い、イランやベネズエラからの供給減少が懸念されるなか、リビアの内戦が本格化することへの警戒が強まり、需給が引き締まるとの見方が広がった。首都トリポリ周辺では、軍事組織「リビア国民軍」(LNA)と暫定政権側の紛争が続いており、戦闘被害が拡大している。リビア国営石油(NOC)によると、原油生産量がゼロになる可能性があると警告、同国の産油量日量100万バレルほどが全面供給停止となる可能性がある。また、サウジアラビアの原油生産、輸出量が減少したとの報も支援材料。国際機関共同データイニシアティブ(JODI)によると、2月の同国の産油量は日量1013.6万バレル(前月比10.7万バレル減)、輸出量は同697.7万バレル(同27.7万バレル減)と減少した。減産を免除されているイラン、ベネズエラ、リビアの生産量が落ち込むなか、石油輸出国機構(OPEC)盟主であるサウジアラビアが積極的に減産を履行していることが窺え、供給減少への警戒が強まった。

 一方、協調減産の期限である6月末を最後に、7月からは増産に転じるのではとの思惑も広がっている。前の週にはプーチン大統領、ノバク・エネルギー相から減産打ち止めを示唆する発言が聞かれたが、この週は同国財務相から本音ともとれる発言があった。シルアノフ財務相は、米国とのシェア争いに勝つためにロシアおよびOPECは増産を決定する可能性があるとの見解を示した。さらに増産に転じた場合には、原油価格は40ドルを下回る水準まで下落する可能性があるとの見方も示している。減産延長との見方があったが、これらロシア要人からの発言を受け、市場では6月末の期限をもって減産が打ち止めとなり、さらに増産に転じるという見方も出始めている。昨年、減産から増産へと転じて以降、上昇基調は継続したとはいえ徐々に上値が重くなり、年末には暴落した経緯があるだけに、6月25-26日の総会での決定事項に注目が集まっている。

 これら主要産油国の供給状況でブルベア見方が分かれるなか、米国の原油需給動向に関心が集まるが、決め手を欠く内容にとどまった。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は予想に反して減少するも、先に発表された米石油協会(API)統計ほどは減少しなかったため、市場の反応は限られた。また、ガソリン在庫も減少したものの、市場予想ほどは減少しなかったため、買いに勢いはなかった。引き続き米国の原油生産水準は高く、在庫にも余剰感がある状況に変化はないが、輸入量が落ち込んでいる点には注意が必要である。自国での供給が潤沢ゆえ、さほど輸入の必要はないとはいえ、ここ数週間は輸入量が極めて低位で推移している。ベネズエラ産の輸入の落ち込みなども考えられるが、いずれにせよ絶対量が落ち込んでいる。この減少幅に比べると在庫の取り崩しペースは遅く、それだけ供給が豊富ということにはなるが、着実に在庫減少へ影響を及ぼし始めている。今後のリファイナリーの稼働上昇、輸出量の増加見通しなどを踏まえると、在庫の取り崩しペースが速まる可能性もある。低位輸入→在庫減がクローズアップされると買い気が強まり、65ドルをブレイクする可能性を残す。

 

今週の予想

  • WTI    やや強め 62.00-67.00ドル
  • BRENT    やや強め 70.00-75.00ドル