信用取引でかかる「コスト」とは?

 今年のゴールデンウィークは10連休。この間、日本の株式市場は休場です。信用取引をしている方は、思わぬコスト負担に注意が必要です。先日、『ゴールデンウィーク10連休を控えて事前にどのように対応すべきか』筆者の考えを本連載でお伝えしました。

 実は、信用取引をしている方にとって、それ以外にも気をつけるべきポイントがあります。それは「思わぬコスト負担」です。

◆信用取引でかかる主なコストには、次のようなものがあります。

  • 金利:信用取引の買い方が負担する金利
  • 貸株料:信用取引の売り方が負担する株の借り賃
  • 逆日歩(品貸料):空売りするための株が不足する場合、売り方が負担する調達コスト※制度信用取引の場合のみ

 楽天証券の場合、制度信用取引を前提とすると、金利は年2.8%、貸株料は年1.1%です。逆日歩は市場の状況に応じて証券金融会社が利率を決定し、これは毎営業日見直されます。

※楽天証券の信用取引 手数料/金利/貸株料についてはこちら

金利・貸株料・逆日歩の計算方法はこうなっている!

 金利や貸株料は、信用買いや空売りをしてから、それを返済するまでの期間、日割りで計算されます。したがって、今週火曜日に信用買いをして翌週月曜日に返済をした場合、年利2.8%の1週間分の金利がコストとして発生することになります。祝日がないとすれば、株式市場が閉まっている土・日を挟みますが、この土・日も含めて金利が計算されます。

 逆日歩は、日々金額が見直されます。例えば金曜日に空売りをして翌週金曜日に返済をし、その間に逆日歩が10銭、20銭、30銭(土日またぐ)、50銭、1円と変動した場合、1株当たりで10銭+20銭+30銭+30銭+30銭+50銭+1円=2円70銭の逆日歩を払うことになります。もしこの株の株価が1,000円だとしたら、1週間で0.27%の負担です。

 金利や貸株料、逆日歩の計算は約定日ベースではなく、受渡日ベースで行います。受渡日は、約定日の3営業日後です。したがって、例えば月曜日に信用買いして水曜日に返済した場合、受渡日ベースでは木曜日に買い、翌週月曜日に返済となり、月~水の3日間ではなく木~月の5日間で計算されることになります。

 逆日歩の返済日当日は計算に含みませんので、月曜日に空売りして水曜日に返済した場合、木~日の4日間が計算対象です。

GW直前に「信用取引」をして、直前のうちに決済すると?

 さて、ここで気を付けておく必要があるのが、ゴールデンウィークなど長期の連休がある場合です。もし、連休前の4月26日に信用買いや空売りをして、連休明けの5月7日に返済したとしたら、金利や貸株料は4月26日~5月7日の12日分かかると勘違いしている方も少なくないのではないでしょうか。

 あくまでも金利や貸株料の計算は、受渡日ベースで行います。4月26日に信用取引をして、5月7日に買い戻した場合、受渡日ベースでは保有期間は5月9日から5月10日の2日間だけです。勘のよい方はお気付きになったのではないでしょうか。実は10連休をまたぎ多額のコストが発生するのは、ゴールデンウィーク前に決済を終わらせたものであることを。

 もし、4月22日に新規で信用取引を行い、翌23日に返済したならば、受渡日ベースでは4月25日~26日の2日間ですから、2日分の金利や貸株料がかかります。

 でも、1日ずれて、4月23日に新規に信用取引を行い、翌24日に返済した場合は受渡日ベースで4月26日~5月7日の12日間となり、12日分の金利・貸株料がかかってしまうのです。

最も気を付けなければならないのは「逆日歩」

 とはいえ、金利や貸株料はそれほど高い料率ではないので、12日分のコストといってもそれほど大騒ぎするものではありません。0.1%もかかりません。

 一方で「逆日歩」は、その時々の状況により金額が大きく異なってくるので、大いに注意が必要となります。

 もし、4月22日に新規で空売りを行い、翌23日に返済したならば、受渡日ベースでは4月25日の1日分の逆日歩が発生します。しかし、4月23日に新規に空売りを行い、翌24日に返済した場合は、受渡日ベースで4月26日~5月6日まで11日分の逆日歩がかかってしまうのです。

 通常は逆日歩がつかない銘柄の方が多く、ついたとしても1日当たり5銭程度です。でも、空売りの残高が多く株不足に陥っているような銘柄の場合、逆日歩の額が1日当たり2円や3円と高額になることもあります。

 もし、300円の銘柄を4月23日に空売りし、24日に決済した場合をみてみましょう。23日の逆日歩が1株当たり2円だとすれば、1株当たり2円×11日=22円の逆日歩を支払わなければいけません。株価に対して実に7%もの金額です。1日で決済するから逆日歩もそれほど心配ないだろうと考えていたら、とんでもないことになります。

 銘柄ごとの逆日歩の状況に関しては、例えば、日本取引所グループ「信用取引残高など」-「品貸料」に記載されています。

 直近に大きな逆日歩の額がついている銘柄や、空売りの残高が信用買いの残高より大きいような銘柄は、特に注意すべきです。

 信用取引には、かなり細かいルールが数多くあります。「知らなかった」では済まされませんので、証券会社のホームページなど信用取引についての記載をしっかり読んでおき、ゴールデンウィークの10連休を無事に乗り切りましょう。

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