日経平均は前週末から602円高、ダブルトップ形成を回避

 新年度入り相場となった今週の国内株市場ですが、週末4月5日(金)の日経平均株価終値は2万1,807円でした。前週末終値(2万1,205円)からは602円高となっていますので、幸先の良いスタートを切った格好と言えます。

 このまま日経平均はさらに上を目指せるのかが気になるところですが、まずは下の図1で足元の状況から確認します。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年4月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きを振り返ってみますと、週初の4月1日(月)に大きな「窓」を空けてスタートしましたが、翌2日(火)の取引を含めて上値が抑えられる動きとなりました。「またもやもみ合いか?」と思わせるローソク足の並びになったものの、週末にかけて盛り返し、結果的に値を伸ばす展開となりました。

 直近高値である3月4日の2万1,860円には届きませんでしたが、「ダブルトップ」の形成を回避し、「保ち合い」も上放れつつあることから、足元の相場は上方向への意識の方が強い格好になっています。移動平均線に注目しても、5日線が25日線を上抜ける「ゴールデンクロス」になっています。

 もっとも、相変わらず「窓」空けによって株価水準が切り上がっていて、引き続き、米国株に左右される状況ではありますが、その窓空けの値幅(204円)を考慮に入れても、日経平均は400円近く値を伸ばしていることになります。この調子が続けば節目の2万2,000円台乗せも十分に射程圏内に捉えていると思われます。

 となってくると、今後の展開を想定していく上で、「日本株の上値余地」と、相場のけん引役である「米国株の基調の強さ」が焦点になってきます。

日本株にはまだ上値余地がある

 まずは、日本株の上値余地について見ていきます。あらためて上の図1を見ると、上値のめどとして意識されそうなのは200日移動平均線です。また、同じ移動平均線系のテクニカル指標であるエンベロープにも注目してみます(下の図2)。

■(図2)日経平均のエンベロープ(25日移動平均線を基準)(2019年4月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 図2にあるのは25日移動平均線を中心としたエンベロープですが、日経平均は通常の値動きで25日線から上下3%の範囲内で動くことが多くなっています。実際に、今年の2月から3月あたまにかけての状況を見ると、プラス3%の線に沿って株価が上昇していることが分かります。

 先週末時点の株価位置はまだプラス1.61%の辺りですので、上値余地がまだあると考えられます。同じく、先週末時点の200日移動平均線は2万1,911円と、2万2,000円台よりも下にあるため、まずはココを超えることができるかがポイントです。

米国株の基調は強い

 続いて米国株の基調の強さにも注目してみます。ここでは、米国株のトレンドを捉えるために、2つの線形回帰トレンドでチェックしていきます。

 まずは、足元のNYダウが史上最高値をつけた昨年10月3日を起点とした線形回帰トレンドです。

■(図3)米NYダウの線形回帰トレンド(2018年10月3日を起点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NYダウはこの日を境にして、年末にかけて下落トレンド入りしてしまったわけですが、線形回帰トレンドの傾きはすでに右肩上がりになっており、下落トレンドから上昇トレンドの方向性に切り替わっていることが分かります。また、株価とσ(シグマ)の位置関係を見ても、「やや強気ゾーン」から「強気ゾーン」に足を踏み入れている状況です。

■(図4)米NYダウの線形回帰トレンド(2018年12月25日を起点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、昨年末につけた安値の12月25日を起点とした、株価の戻りを線形回帰トレンドと重ねて合わせてみると、こちらは上昇トレンドの「やや弱気ゾーン」から抜けようと試みている状況となっています。異なる2つの起点でトレンドを捉えても米株市場の基調の強さが読み取れ、上値を追えそうな印象になっています。

 とりわけ、最近のNYダウについては、先ほどの史上最高値である昨年10月3日の2万6,951ドルを意識する声が増えています。先週末終値の2万6,424ドルと比べると、まだ500ドル以上離れていますが、この差を埋める動きが今週も出てくるかもポイントになりそうです。

 

株価下落に向かう「潮目の変化」には要注意

 そのため、基本的には今週も上方向への意識が強い展開が見込まれますが、注意しておきたい点もあります。

 先ほどの図2の左側を見ても分かる通り、日経平均の足元の株価水準を過去に遡ってみると、昨年の夏場に4カ月近くにわたってもみ合いが続いた価格帯でもあり、ここから2万3,000円台にかけては上値の抵抗が強くなっていく可能性があります。

 さらに、今年2月からの日経平均は窓空けによって相場の節目を超える場面が増えていることも気掛かりです。窓空けの多さについては以前から指摘していますが、取引時間中に値を伸ばすという展開が少ないため、結果的に日経平均は上昇しているものの、実際にこの流れに乗ってうまく利益を得るのは難しかったと思われます。「儲かった」実感があまりない相場のため、いざ、相場のムードが悪化すると、株価下落のピッチが思った以上に速くなる展開には警戒しておく必要があります。

 新年度相場が幸先の良いスタートになったことで、「潮目が変わった」という見方が増えています。恐らく、ここから株価の本格上昇へ向かう変化に対しての見解かと思われますが、本当に注意しなくてはならないのは、ここから下落に転じる方の潮目の変化の方なのかもしれません。