みんなが当たり前のように使っている、銀行の預金。いつもの使うお金を入れておく「普通預金」と、ちょっとゆっくり貯めておくための「定期預金」がある。定期預金のほうが、金利が高いから、ゆっくり増やすために使えるわけだけど、今、日本は超超超低金利。

「高い」と言っても、すずめの涙ほどの違いしかない。金利を比べてみると普通預金が0.001%、定期預金が0.01%というレベル(2019年3月現在)。100万円預けて、利子は1年間で10円と100円の違い。「100万円」も預けてだ。

 でも、家に現金を置いておくわけにもいかないから、「預けるしかない」というのが、みんなの事情だろうし、どうせなら普通預金より、定期預金というところだろう。

 じゃあ、「どうせなら、定期預金で楽しむ」というのは、どうだろう? たとえば、今日紹介するのは「スポーツ」が好きだ!!!という人向け。

応援しているチームが優勝すると、金利アップやプレゼントが!

 実は、あるサッカーチーム、野球チームが優勝したら、「金利がアップする」「特典やプレゼントがもらえる」という仕掛けの「スポーツ応援型・定期預金」というものがある。ファンで応援しているチームが優勝したら、ものすごくうれしいはず。その上、預金の金利がアップしたり、プレゼントまでもらえたりしたら、気分はサイコーだ。

 具体的には、「チームが優勝したら、預金金利の年利が1%にアップ!」などのサービスがある。冒頭で紹介した定期金利から比べると、なんと100倍。100万円預けたら、1万円。これはちょっとうれしい金額になってきた気がする。

 もし、野球やサッカーに興味がなかったとしても、自分の地域に根ざしたチームが活躍するのは、悪い気はしないはず。スポーツが盛り上がって、地域が活性化するのは、住民や地域経済とってもプラスが大きい。なおさら、自分の預金金利に特典がつくとなれば、直接的なメリットが発生する。

 とはいえ世の中、メリットの反対側には、デメリットがあるもの。リターンが大きければ、相応にリスクも大きくなることを忘れてはいけない。

 では、このスポーツ応援型・定期預金の弱点は?と言われれば、チームが活躍できなかったケースを考えるべき。「活躍したら金利が上がるが、活躍しなかったら金利はイマイチ」なのである。

 先ほどのケースで言えば、優勝したら1%、活躍しなかったら0.01%というイメージ。単純に比べると、すごい違いだと思うが、イマイチといっても元々の定期預金の金利と同じであるケースが多い。つまり、この手のスポーツ応援型・定期預金は、通常の定期預金に「おトクが上乗せ」されているということ。

 元々、「なにがしかの定期預金にお金を入れようかな」と思っていた人であれば、デメリットはないと考えられそう。あえて言うなら、預け入れるときの単位が、10万円以上などと、通常よりも高めに設定されていることくらい。

銀行側は短期的なメリットではなく、長期のファンがほしい

 これらの特別な預金は顧客に不利な点があまりなく、あくまで通常の預金に「上乗せ」条件で作っているケースが多い。ということは、作っている銀行にとっては、この預金はあまりうまみがないはず。

 そこで、サッカーのヴィッセル神戸を応援する「ヴィッセル神戸応援定期預金」、野球の楽天イーグルスを応援する「楽天イーグルス応援定期預金」をダブルで作った楽天銀行の担当者に聞いてみた。
「正直、こちらの預金では当行に利益がほとんど出ません。チームが優勝すると、完全に赤字です。でも、グループとしてスポーツや地域を応援していこうという取り組みの中にこの定期預金もあります。その結果として、楽天銀行を知っていただき、ファンなっていただければうれしいです」

 そう、あくまで各銀行が地盤となっているチーム、企業グループとなっているチームをいっしょに応援するための預金なのだ。スポーツを通じたその経済圏の活性化は金融機関の収益の源泉につながるもの。結果として、生活者が金融機関のサービスを知り、ファンにもなってほしい、という長期的な視点での施策と言えそうだ。

 もちろん、いち生活者、スポーツファンドとしては、応援しているチームが活躍できなかったら、ショックだし、腹立たしい気持ちになるだろうし、金利もイマイチだったら、ますます気分は悪いだろう。でも、シーズン中に一生懸命、チームを応援し、最後にすばらしい結果を得て、しかも、金利もアップという夢にかけるのは、悪くないチャレンジではないかと思うのだが、どうだろう?

スポーツ応援型・定期預金の主な例

出所:各行データより、トウシル編集チーム作成。各預金の詳細は、各行のホームページなどでご確認ください。 ※1 クライマックスシリーズ進出し、日本シリーズに出場した場合も、「優勝」時の金利上乗せを適用 ※2 ベイスターズの成績には、クライマックスシリーズは含まず。また、日本シリーズでの優勝は対象外