先週の振り返り

 111円台前半で始まった3月のドル/円は、FRB(米連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)のハト派姿勢への転換によって長期金利が下がり、結局、円高で終わりそうです。

 特に、FRBの予想以上のハト派姿勢鮮明によって金利は急低下し、株は、3月20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)当日は下落したものの、翌日は金利低下を好感し株高となりましたが、その翌日は一転、逆イールド化(※)を嫌気し株安となりました。

 ドル/円は、欧米長期金利の急低下と米金利の逆イールドから景気後退懸念が高まり、110円割れとなりました。

(※)逆イールド…長期金利が短期金利よりも低くなる状態のこと。今回は米国10年物金利と3カ月物金利の逆転が注目された。逆イールドは景気後退を示唆すると言われている。

 

日銀短観の想定為替レートが意識される

 株安、金利低下が一時的であれば、110円割れが精一杯かもしれませんが、今後も株安、金利低下が続くのであれば109円割れも視野に入るかもしれません。今週は、期末を迎える週であるため、期末日の29日(金)に向けて企業決算に関わる実需玉がいろいろと出てくることが予想されます。特に期末日の公示タイムの前後は乱高下することが過去に何度かあったため、警戒する必要があります。公示タイム前後とは、東京時間の午前10時前後です(各銀行から公表される為替レートの公示は午前10時の数分前です。銀行によって公表時間も公示レートも異なります)。

 さて、この期末に絡む実需玉が、時々相場のかく乱要因となりますが、今年は特に日銀短観の想定為替レートが意識されるかもしれません。日銀短観の2018年度下期想定為替レートは、12月時点の調査では109.26円です。110円台の戻りが鈍いと、期末に近づくにつれて、この水準が意識されドル売りが強まるかもしれません。

 そして次回4月1日に公表予定の日銀短観(3月調査)の2019年度上期想定レートにも注目しておく必要があります。下表が示すように、各調査時点の想定為替レートは、昨年6月以降は調査時点までの3カ月平均レートよりも円高目で企業は想定しています。米中貿易摩擦やブレグジットなどの先行きの不透明感が反映されているようです。もし、4月1日公表の2019年度上期想定為替レートが、現在の110円台よりも円高で公表された場合、ドル売り圧力は4月に入っても続くことが予想されます。

2018年度下期想定為替レート    

※1月~3月の平均レート。ただし、3月は26日までの平均レートで算出

 また、この水準は、昨年末の終値である109円台半ばに近い水準であるため、1-3月期のドル/円は「行って来い」の相場となっています。四半期決算で収益を狙う短期志向のファンド勢もこの水準を意識するかもしれません。

FRBのハト派姿勢はトレンドの転換点になる?

 FRBの予想以上のハト派姿勢にマーケットは驚きました。今年の利上げ回数が前回の2回見通しからゼロ回となりましたが、マーケットでは利上げ1回との見方もあったためサプライズとなりました。また、保有資産の縮小については年内停止、つまり12月終了との見方が大勢であったのに、5月から縮小ペースを減速し9月に終了と、市場の予想よりも前倒しの発表にサプライズとなりました。

 FRBがよりハト派になった背景について、「世界経済が悪いからFRBがよりハト派色を打ち出した」という本来あるべき見方よりも、「FRBがよりハト派化するほど世界経済が悪いのではないか」と景気の下振れリスクを強く懸念する市場参加者が増えてきています。株や金利、為替市場の調整、あるいは逆イールドが一時的な状態だけであるなら良いのですが、この状態が続くのであれば市場の転換点になる可能性も出てきます。

 

今週発表の景気指標に注目

 今週は28日からの閣僚級の米中貿易協議も注目ですが、景気後退懸念が高まっていることから景気指標に敏感に反応しそうです。28日発表予定の米国10-12月期GDP確定値、29日の日本の鉱工業生産指数はより注目されそうです。

 日本の経済指標が悪いと、3月月例経済報告で景気判断が下方修正されたこともあり、過去の経験則から4月24~25日の日銀金融政策決定会合での追加金融緩和への期待が高まるかもしれません。その場合、円高ブレーキ要因になる可能性があり、場合によっては一時的に円安に動くことも予想されます。ドルを売りそびれた実需筋や投資家にとっては絶好の売り場になるかもしれません。