【今日のまとめ】

  • CAR-T療法は難治性リンパ腫の治療を目指す
  • 患者から採取した遺伝子を改変後、もう一度患者に戻す
  • 一時人気離散していたバイオ株に再び脚光
  • CAR-T療法を開発している企業は5社ある
  • 最も先行しているのはノバルティスとカイト・ファーマ
  • 遅れているジュノとブルーバードも有望な新薬候補あり

CAR-T療法について

CAR-T療法とは、癌細胞が隠れているタンパク質を探し当て、狙い撃ちできるキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を用いた遺伝子改変T細胞療法を指します。

この手法により、これまで治療不可能と思われてきた難治性リンパ腫を寛解(かんかい)する可能性が出てきました。

遺伝子改変

ヒトの遺伝子は、それぞれユニークです。したがって免疫システムの働き方も、ひとそれぞれです。

そこで、個々の患者に合せた、テーラー・メードの治療法が考案されています。

まず癌患者から血液を採取します。

次に、そのT細胞に遺伝子改変(reprogramming)を加え、CARを「実装」します。

そうやって作った遺伝子改変T細胞を、もう一度、患者の体内に戻してやるわけです。

こうすることで、癌細胞が持つ、頑固な腫瘍免疫回避機構の突破を試みるわけです。

これがキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法、略してCAR-T療法です。

CAR-T細胞は、普通の抗体が届かない中枢神経領域にも到達することが出来ます。

学会での報告を契機に関連株が再び脚光を浴びている

去年の12月にサンディエゴで開催された第58回米国血液学界(ASH)年次総会で、CAR-T療法が、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)治療に有望であることが報告されました。

これをきっかけとして、一時下火になっていたバイオテクノロジー株への投資家の関心が再び高まっています。

各社の取組み

バイオテクノロジー各社のCAR-T療法への取組みを一覧表にすると、次のようになります。

企業名(コード) FDAミーティング 製品名 奏効率(%)
ノバルティス(NVS) 2017年7月 CTL019 45%
カイト・ファーマ(KITE) 2017年11月 KTE-C19 39%
ジュノ・セラピューティックス(JUNO) 未定 JCAR017 66%
ブルーバード・バイオ(BLUE) 未定 bb2121 100%
セルジーン(CELG)=BLUEのパートナー 同上 同上 同上

米国食品医薬品局(FDA)と最初にミーティングが設定されている企業はノバルティス(ティッカーシンボル:NVS)です。この会合は今月実施されます。

同社のCTL019は子供や若者が罹るB細胞急性リンパ芽球性白血病の治療薬を目指しています。

その次にFDAとのミーティングを11月頃に持つと予定されているのは、カイト・ファーマ(ティッカーシンボル:KITE)です。

同社のKTE-C19は、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の治療薬を目指しています。患者ひとり当たりの治療費用は30~70万ドルが見込まれています。

ジュノ・セラピューティクス(ティッカーシンボル:JUNO)のJCAR017は悪性非ホジキン・リンパ腫(Aggressive non-Hodgkin lymphoma)の治療薬を目指しています。

開発の進捗状況としては上述のノバルティスやカイト・ファーマより少し遅れているものの、奏効率が高く、期待されています。

最後にブルーバード・バイオ(ティッカーシンボル:BLUE)セルジーン(ティッカーシンボル:CELG)と組んでbb2121を開発中です。

全米屈指の総合病院、メイヨー・クリニックで行われている臨床試験では奏効率100%、寛解率27%という目を見張る薬効が報告されています。