金融機関もマーケットも未経験の10連休。想定外を想定せよ

 今年のゴールデンウィークは10連休ですが、預貯金や投資、経済など、マネー環境への影響にはどのようなものがあるのか整理してみましょう。

 まず、10連休の間は金融機関も休業します。ATMは稼働するようですが、銀行券の補充やメンテナンスがいつも通りに行われるとは限らないので、手持ち現金の確保には注意した方が良さそうです。10連休中のATMの稼働時間や手数料は平日とは異なります。

 支払い期日の確認や資金繰りにも注意が必要です。銀行や証券会社の営業日はカレンダー通りなので、これまで最長の連続休業は6日でした。12月29日が土曜日だった2018年から2019年にかけての年末年始などが該当します。

 毎年のイベントなので金融機関も事業者も年末年始の休業を見越して行動できたのですが、今年の10連休については、去年の今頃は想定していませんでした。10連休になると決定された時期も遅く、金融機関の中には、システム対応やATM・夜間金庫といった現金処理のための休日出勤者の確保などに追われているところがあります。

 証券業界も10連休には頭を悩ませているようです。銀行が休みだと入出金が制限されるため、証券会社だけが営業するわけにはいかず、必然的に休業せざるを得ません。各証券会社が注意喚起をしています。

 資金の受け渡しに日付を要するといった制度上の問題も重要ですが、株式相場の変動も懸念されます。一般的に、週明けは株価の変動が大きくなりやすいと言われています。理由については諸説あるのですが、多くは情報量の増加に起因するという考え方です。

金曜15時以降のバッドニュースは、連休明けに持ち越し

 具体的な例としては、企業の不祥事はマーケットへの影響を考慮して金曜日の15時以降に公表されることがあります。土日を挟んで少し冷静になるかもしれませんが、バッドニュースの影響は月曜日に反映されることになります。

 株価に影響を与えるような選挙は日曜日に行われますし、土日に事件・事故があるかもしれません。

 また、海外に目を向けると、米国の重要統計(雇用統計など)が金曜日に発表されると、米国の株価や為替レート、あるいは、日経平均先物取引を通じて、月曜日の日本株に影響を与えるという経路もあります。

 実際のデータで確認しましょう。

2000年1月4日から2018年12月28日までの日経平均株価(終値)の前日比を求めて、前日比の平均値や分散を計算したものが以下の表になります。

 

●日経平均株価(前日比)の平均値と標準偏差:全営業日と月曜日

(出所)日経平均株価を基に筆者作成。

 わずかの差ではありますが、月曜日の前日比の標準偏差が大きいので、月曜日は株価が動きやすいのかもしれません。もっとも、世間で言われているほどではないようです。

 次に、連休明け営業日とゴールデンウィーク明け営業日(5月5日以降最初の営業日)の前日比も同様に確認しましょう。こちらは両方とも、全営業日の標準偏差よりも大きな値を取っており、連休明け営業日の前日比は株価が変動しやすいことが分かります。

 ちなみに、連休明け営業日の前日比の平均値が高くなっていますが、これにはリーマンショック期の急変動が影響しています。

●日経平均株価(前日比)の平均値と標準偏差:連休明けとGW明け

(出所)日経平均株価を基に筆者作成。

 先ほど、情報量が増加するので株価が変動すると述べました。連休による情報量の増加もありますが、実際には様々な思惑も影響するようです。日本のマーケットが休みの場合、為替や日経平均先物などは海外市場が主導することになります。日本のプレイヤーが少ないため、海外勢による投機的な動きに弱くなります。

景気不安、トランプリスク・・・連休前にポジション調整も

 今年のゴールデンウィークは史上初の10連休です。しかも、景気のピークアウトが確認されそうですし、日本株の先行きに慎重な声が多くなっています。確定的なことは言えませんが、米中貿易摩擦や日本への圧力、トランプ大統領のキャラクターなどを踏まえると、ダウンサイドリスクが大きいように思います。

 株価は昨年10月の記事で取り上げたようにケインズが指摘した美人投票の側面があります。流れに乗ろうとする相場師も入れば、リスク回避的に、ゴールデンウィーク前に日本株の持ち高を調整する方もいるでしょう。

 10連休まで1カ月ほどありますが、信用取引やオプション取引といったハイリスクな取引をされている方は、これまで以上に相場急変に備えたリスク管理が必要になります。

 

10連休は需要の先食い?シワ寄せはどこにくる?

 まとまった休みが取れて、旅行業界などにとっては確実にプラスになる10連休ですが、これまで述べてきたようなマイナス面もあります。そもそも所得が伸び悩んでいるので、ゴールデンウィークに旅行に出かけたら、夏休みは節約するという方も多いでしょう。10連休の好調は、需要の先食いをしているだけという可能性もあります。

 パートやアルバイト、非正規社員では営業日の減少が収入の減少に直結しかねません。事業内容によってはフリーランスも売上げが減ることになります。企業や役所に勤務している事務職では、滞っていた仕事のしわ寄せがゴールデンウィーク明けに押し寄せることになり、働き方改革とは逆行しそうです。

 今年は、祝日のパターンが変わるため、景気・経済情勢の判断が難しくなります。ゴールデンウィークや夏休み消費への影響だけではなく、まだ先のことであまり騒がれていませんが、今上天皇陛下の退位に伴い、今年の12月23日(月)は天皇誕生日の祝日ではなく平日になります。クリスマス、年末消費に影響が出るかもしれません。若干の不透明感は出て来ましたが、10月には消費税増税が予定されていますし、その前に7月には参議院選挙があります。

 新元号での日本経済は波乱含みのスタートになりそうです。