社会融資総量は1-2月に安定増、金融政策は緩和方向に傾斜へ
中国人民銀行はこのほど2月の金融統計を発表した。それによると国内金融機関の人民元建て貸付残高増加額は8,860億元。前年同月比で5.2%増加したものの、手形融資が落ち着いたことなどから、市場予想の9,500億元から下振れした。手形融資が2月に正常レベルに戻った要因として、BOCIは裁定取引の規制強化や手形融資金利の緩やかな上昇を指摘している。ほかに、新規の個人向け短期貸付は2月に前年同月比で2,460億元減少。1月をさらに上回る落ち込みとなった。個人の借り入れ意欲の減退や金融機関によるリスク管理の強化が影響した可能性があるという。一方、企業向け中長期貸付も5,130億元と前年同月を1,460億元下回り、企業の投資意欲の萎縮を伺わせた。
実体経済の流動性を示す社会融資総量は2月に7,030億元と前年同月を4,850億元下回り、市場予想の1兆3,000億元から下振れした。ただ、1-2月の累計では前年同期を1兆1,000億元上回る水準だった。うち委託貸付、信託貸付は安定的に推移し、理財商品規制の履行ペースが鈍っている現状を示唆した。企業のデットファイナンスは正常な伸びを持続。地方政府の特別債は急増ペースを示した。BOCIは3月の人民元貸付増加額が1兆2,000億元に上向くと予想。社会融資総量も1兆5,000億元に達するとみている。
人民銀行の公開市場操作により、市中資金は旧正月(2月5日)休暇明け以降、月末に向けてやや引き締め気味に推移した。3月10日の記者会見で、同行の易剛行長は金利上昇の原因として「高リスクプレミアム」を指摘した経緯があり、BOCIは景気下押し圧力に対抗するため、同行がリスクプレミアム低減に動く可能性があるとしている。
2月には理財商品の発行件数が8,515と、前月比30%、前年同月比29%大きく減少した。季節要因に加え、利回りの魅力後退、株式市場の活況が影響したとみられる。
H株銀行銘柄は2月もやや激しい値動きの中で上昇基調を維持した。ただ、本土からの対香港株投資「港股通」の売買状況を見ると、銀行銘柄の多くが売り越しだった。
最近示された金融政策の方向性は以下の通り。◇人民銀行が2月21日発表した18年10-12月の金融政策実施報告書により、金融レバレッジ解消(過剰債務解消)策が当面、当局の重要任務から外れたことが分かった、◇李克強首相の3月5日の政府活動報告においては利下げ(政策金利引き下げ)の可能性も排除されず、預金準備率については「対象限定の引き下げ」、あるいは「全面引き下げ」の両面から可能性がある。
BOCIは銀行セクター全体に対する強気の投資判断を据え置いた。19年の予想PBR(株価純資産倍率)が平均0.67倍にとどまる点を指摘。年初からの値上がり率も全体をわずかに上回るペースだったとし、この先の調整リスクが比較的小さいとした。個別では相対的に低バリュエーションの中国光大銀行(06818)、重慶農村商業銀行(03618)の安全マージンが相対的に大きいとしている。
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