東証1部上場の基準が変わる
個別企業の株価が大きく変動するケースでは、やはり「業績に変化があった時」がもっともイメージされるものでしょう。このほか、自社株買いによって「需給が好転しそう」と判断された時もたいていの場合、株価が上昇することになります。
その他にもう一つ、忘れてはならないことを指摘しておきたいと思います。それは「ルール変更」です。法令や枠組みの変更によって(主に機関投資家の)運用の範囲から外れたり、逆に入ることによって、該当する個別企業の株価が大きく変動するというケースです。ルール変更は頻繁ではないものの、そうであるからこそインパクトが生じることにもなります。
現在、東証が進めている「東証1部上場基準見直し」ももちろん、このルール変更に該当するものです。東京証券取引所は、約2,100社ある東証1部の上場企業数を絞り込む意向で、時価総額の基準を引き上げ、英文開示なども義務付けるとのことです。
具体的には、1部上場を維持できる時価総額の基準を、現行の20億円から250億円に引き上げることを軸に検討しています。東証1部市場を優良企業が集まる上位市場と明確化し、日本の株式市場の国際競争力を高める狙いです。これによって東証1部の上場企業数は約720社程度減る可能性があると指摘されています(その多くは時価総額250億円に満たない企業)。
新基準を満たす小型株の動きに注目
東証1部上場のメリットは、知名度がアップし資金調達や人材確保がしやすくなるだけでなく、ETF(上場投資信託)やインデックスファンドなどの「パッシブ運用」の売買対象になり、株の流動性が高まることがあります。パッシブ運用とは、運用目標とされるベンチマーク(TOPIX[東証株価指数]や日経平均株価などの株価指数)に連動する運用成果を目指す運用手法のことです。
TOPIXは、東証1部市場に上場する普通株式全銘柄を対象とする株価指数で、昭和43(1968)年1月4日の時価総額を100として、その後の時価総額を指数化したもの、つまり東証1部の時価総額の増減を表しています。
パッシブ運用を行う機関投資家は時価総額の割合に応じて、東証1部上場銘柄を保有することが基本となります。東証1部上場企業数が減ることにより、東証1部にすでに上場している、かつ、これからも上場を維持する銘柄の割合は増すことになり、パッシブ運用を行う機関投資家から買い需要が生じると思われます。
株価へのインパクトは新上場基準を満たしている「小型株」により大きく生じるものと思われます(逆に新上場基準を満たさない株には売り需要が生じます)。2020年春と想定されている新市場誕生までには紆余曲折がありそうですが、先行して「東証1部上場を維持する公算の小型株」の動きに注目していきたいところです。
ここではその中から5銘柄を紹介します。
東証1部上場を維持する公算の小型10万円株
株価データは2019年3月18日終値ベース。
日本国土開発(1887・東証1部)
2019年3月5日新規上場。ダムやトンネルなど土木工事に強みを持つゼネコンです。1998年に会社更生法の適用を申請し、翌1999年に上場廃止。20年ぶりの再上場となりました(公開価格510円)。時価総額 約610億円。
・日本国土開発の日足チャート
北の達人コーポレーション(2930・東証1部)
オリゴ糖原料の健康食品「カイテキオリゴ」のネット通販で知られる企業です。健康食品・化粧品分野に経営資源を集中し、カイテキオリゴや目元クリームなど毎期5商品前後を投入しています。時価総額 約580億円。
・北の達人コーポレーションの日足チャート
リソー教育(4714・東証1部)
首都圏地盤に個別指導受験塾「TOMAS」を展開、難関校受験指導に特色を持っています。2003年に「伸芽会」を子会社化し幼児教育へ参入。家庭教師派遣「名門会」なども手掛けています。時価総額 約830億円。
・リソー教育の日足チャート
フタバ産業(7241・東証1部)
自動車用マフラー最大手企業です。トヨタ自動車が筆頭株主で売上高の7割強はトヨタグループ向けです。2020年3月期は日本や中国でトヨタ新型車向けが一段と増加する見込みです。時価総額 約480億円。
・フタバ産業の日足チャート
空港施設(8864・東証1部)
羽田、伊丹を中心に全国13空港で多目的総合ビル、航空機格納庫の賃貸や冷暖房施設などを運営しています。時価総額が新基準ギリギリの企業には自社株買いへの期待が高まっています。時価総額 約290億円。
・空港施設の日足チャート
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