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 中央銀行の金融政策は、通常、利上げや利下げですが、景気の冷え込みが強く、利下げでは不十分な場合、他の手段を追加します。リーマンショック後には、米連邦準備制度理事会(FRB)は、利下げに加えて国債等の購入によってバランスシートを拡大し、市中に資金供給を行いました。その後、景気が回復し、FRBは利上げと共に『バランスシート縮小』を行っていますが、今年に入り、想定より早期に終了することを示唆しました。

 

【ポイント1】FRBは2017年10月から『バランスシート縮小』を開始

QEにより急拡大した保有資産の縮小

 米連邦準備制度理事会(FRB)はリーマンショックを契機とした景気後退を受け、政策金利をほぼゼロ%に引き下げるとともに、3度に渡る量的緩和(QE)を実施しました。その結果、リーマンショック前には1兆米ドルにも満たなかったFRBのバランスシートは、QE終了時には約4.5兆米ドルまで膨れあがりました。米国の名目GDPが約20兆米ドルですので、QEの規模がいかに大規模だったかが分かります。

 その後、米景気の回復が堅調さを増したため、FRBは2015年12月からの利上げに加え、2017年10月から『バランスシート縮小』を開始し、QEの巻き戻しを行いました。これらは、総称して「金融政策の正常化」と言われます。なお、具体的な『バランスシート縮小』の金額は、当初は月間100億米ドルで、現在は月間500億米ドル程度となっています。

 

【ポイント2】金融市場の動揺を受けてハト派に転換

『バランスシート縮小』の早期終了を示唆

 FRBによる「金融政策の正常化」が進むにつれ、副作用として金融市場の変動性が高まりました。特に昨年後半には、米国株が調整局面入りしたことを受け、市場にはFRBが金融政策の手綱を緩めるのではないかとの期待がありました。ところが、昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げ見通しを後退させた一方で、『バランスシート縮小』は従来通りのペースを維持するとしたことから、金融市場が動揺し、株価が更に急落しました。

 FRBは金融市場の安定化を図るため金融政策に対するスタンスを転換し、今年1月のFOMCで、当分の間政策金利を据え置くと同時に、『バランスシート縮小』についても想定より早期に終了することを示唆しました。

 

【今後の展開】『バランスシート縮小』は年後半に終了、その後は緩やかに拡大

『バランスシート縮小』終了の具体的な時期などはまだ発表されていませんが、3月ないし6月のFOMCまでには決定し、公表されるものとみられます。弊社では年内に『バランスシート縮小』が終了し、バランスシートは2019年末に3.7兆米ドル近辺まで縮小した後、緩やかな拡大に転ずると見込んでいます。